算定要件と届出の違いをわかりやすく解説
障害福祉サービスの「重度障害者支援加算」は、強度行動障害などにより特に手厚い支援を必要とする利用者を受け入れ、一定の支援体制と個別支援を確保した事業所を評価する加算です。
短期入所と共同生活援助(グループホーム)の双方に同じ名称の加算がありますが、対象者、職員配置、支援計画、単位数、事前届出の扱いは同じではありません。まず、それぞれの算定要件を整理したうえで、最後に両者の違いを比較します。
①短期入所の(Ⅰ)・(Ⅱ)と各上乗せの算定要件
②共同生活援助の(Ⅰ)・(Ⅱ)、初期加算、中核的人材加算の算定要件
③短期入所と共同生活援助で異なる事前届出の範囲
短期入所の重度障害者支援加算の算定要件
短期入所の重度障害者支援加算は、対象利用者を受け入れたことを評価する「基本部分」と、研修修了者による計画的な支援体制を評価する「上乗せ部分」に分かれています。(Ⅰ)と(Ⅱ)では対象者の範囲が異なります。
| 加算区分 | 段階 | 単位数 | 主な対象者 | 主な算定要件 | 事前届出 |
|---|---|---|---|---|---|
| (Ⅰ) | 基本部分 | 50単位/日 | 指定重度障害者等包括支援の対象者に 相当する支援の度合にある利用者 |
対象者に短期入所を提供 | 不要 |
| 研修体制の上乗せ | +100単位/日 | 区分6 かつ 行動関連項目10点以上等 |
実践研修修了者が計画を作成し、 基礎研修修了者等が計画に基づき支援 |
必要 | |
| 中核的人材の上乗せ | +50単位/日 | 区分6 かつ 行動関連項目18点以上等 |
中核的人材が関与した 支援計画に基づき支援 |
必要 | |
| (Ⅱ) | 基本部分 | 30単位/日 | 区分4以上 かつ 行動関連項目10点以上等 |
対象者に短期入所を提供 | 不要 |
| 研修体制の上乗せ | +70単位/日 | 区分4以上 かつ 行動関連項目10点以上等 |
実践研修修了者が計画を作成し、 基礎研修修了者等が計画に基づき支援 |
必要 | |
| 中核的人材の上乗せ | +50単位/日 | 区分4以上 かつ 行動関連項目18点以上等 |
中核的人材が関与した 支援計画に基づき支援 |
必要 |
(1)重度障害者支援加算(Ⅰ)の基本部分:50単位
(Ⅰ)の基本50単位は、指定重度障害者等包括支援の対象者に相当する支援の度合にある利用者に短期入所を提供した日に算定します。対象者の該当性は、受給者証の記載だけで判断できない場合もあるため、市町村の判定内容や支給決定情報を確認しておくことが重要です。
この50単位は「対象者を受け入れて(短期入所サービスを提供した)こと」に対する基本評価であり、研修修了者の配置や支援計画シート等に基づく支援を算定要件とする+100単位とは分けて考えます。
(2)重度障害者支援加算(Ⅱ)の基本部分:30単位
(Ⅱ)の基本30単位は、原則として障害支援区分4以上で、行動関連項目の合計点数が10点以上の利用者に短期入所を提供した日に算定します。(Ⅰ)の対象者には(Ⅱ)を重ねて算定できません。
(3)研修修了者による支援の上乗せ:(Ⅰ)+100単位、(Ⅱ)+70単位
次の体制を整え、対象利用者に計画的な支援を行った日には、(Ⅰ)は+100単位、(Ⅱ)は+70単位を上乗せできます。
- 実践研修修了者等が、利用者の特性、行動の背景、支援方法などを整理した支援計画シート等を作成すること
- 基礎研修修了者等が、その支援計画シート等に基づいて個別の支援を行うこと
- 支援を行った日と支援内容が記録で確認できること
- 算定開始前に、研修修了者の配置体制について指定権者へ届出を行っていること
短期入所の+100単位・+70単位は、指定基準上必要な従業者に加えて、別に職員を上乗せ配置することまで求めるものではありません。研修修了者が計画を作成し、その計画に基づく支援を実施できる体制がポイントです。
(4)中核的人材による上乗せ:さらに+50単位
行動関連項目の合計点数が18点以上の利用者について、中核的人材養成研修修了者、またはその者から適切な助言・指導を受けた実践研修修了者が作成した支援計画シート等に基づき支援した日には、さらに50単位を上乗せできます。
この+50単位は単独で算定するものではありません。(Ⅰ)の+100単位または(Ⅱ)の+70単位を算定できる体制と支援実績が前提です。
(5)障害児を受け入れる場合の点数基準
障害児の場合は、障害支援区分に代えて障害児支援区分と強度行動障害判定基準表を用います。代表的な目安は次のとおりです。
- +100単位:(Ⅰ)に相当する障害児支援区分3 かつ 障害児基準20点以上
- +70単位:(Ⅱ)に相当する障害児支援区分2以上 かつ 障害児基準20点以上
- 中核的人材+50単位:上記の区分要件を満たし、障害児基準30点以上
(6)短期入所で確認しておきたい実務要件
- 利用者が(Ⅰ)または(Ⅱ)の対象者であることを、市町村の判定情報等で確認する
- 上乗せを請求する場合は、実践研修修了者等が支援計画シート等を作成する
- 基礎研修修了者等が計画に基づく支援を実施する
- 利用日、担当職員、支援内容、利用者の反応を記録する
- 研修修了者の退職・異動・休職等で届出体制を欠いていないか確認する
基本の(Ⅰ)50単位・(Ⅱ)30単位は事前の体制届が不要です。一方、+100単位・+70単位・中核的人材による+50単位は、算定開始前の届出が必要です。
共同生活援助(グループホーム)の重度障害者支援加算の算定要件
共同生活援助の重度障害者支援加算は、対象利用者の受入れだけでなく、基準を超える生活支援員の配置、研修修了者の割合、支援計画シート等による計画的支援を一体として評価する加算です。そのため、基本の360単位・180単位の段階から事前の体制届が必要です。
対象となるのは、介護サービス包括型の共同生活援助と日中サービス支援型共同生活援助です。外部サービス利用型共同生活援助では算定できません。
| 加算区分 | 段階 | 単位数 | 主な対象者 | 主な算定要件 | 事前届出 |
|---|---|---|---|---|---|
| (Ⅰ) | 基本部分 | 360単位/日 | 指定重度障害者等包括支援の対象者 | 加配、研修修了者配置、計画的支援、届出 | 必要 |
| 初期評価 | +500単位/日 | 算定開始日から180日以内 | |||
| 中核的人材による個別支援 | +150単位/日 | 行動関連項目18点以上 | 中核的人材が計画作成・見直しに関与 | ||
| 中核的人材対象者の初期評価 | +200単位/日 | 中核的人材による算定開始日から180日以内 | |||
| (Ⅱ) | 基本部分 | 180単位/日 | 区分4以上 かつ 行動関連項目10点以上 |
加配、研修修了者配置、計画的支援、届出 | |
| 初期評価 | +400単位/日 | 算定開始日から180日以内 | |||
| 中核的人材による個別支援 | +150単位/日 | 行動関連項目18点以上 | 中核的人材が計画作成・見直しに関与 | ||
| 中核的人材対象者の初期評価 | +200単位/日 | 中核的人材による算定開始日から180日以内 |
(1)重度障害者支援加算(Ⅰ):360単位
(Ⅰ)は、指定重度障害者等包括支援の対象となる利用者に、共同生活援助または日中サービス支援型共同生活援助を提供した場合に算定します。対象利用者が入居しているだけでは足りず、次の人員・研修・支援体制をすべて満たす必要があります。
(2)重度障害者支援加算(Ⅱ):180単位
(Ⅱ)は、障害支援区分4以上で、行動関連項目の合計点数が10点以上の利用者に支援を行った場合に算定します。(Ⅰ)の対象者については(Ⅱ)を重ねて算定できません。
(3)(Ⅰ)(Ⅱ)に共通する事業所の体制要件
- 基準上必要な生活支援員の員数に加えて、対象利用者の支援に必要と認められる数の生活支援員を加配していること
- サービス管理責任者または生活支援員のうち1人以上が、実践研修修了者等であること
- 生活支援員のうち20%以上が、基礎研修修了者等であること
- 行動障害を有する利用者について、実践研修修了者等が支援計画シート等を作成していること
- 基礎研修修了者等が計画に基づく支援を行い、その経過を記録して実践研修修了者へフィードバックすること
基礎研修修了者等の20%要件は、常勤換算ではなく、事業所で生活支援員として従事する従業者の実人数で計算します。生活支援員が12人なら12人×20%=2.4人となるため、3人以上の研修修了者が必要です。
(4)支援計画シート等の作成・見直し
実践研修修了者等は、原則として週1回以上、対象利用者の様子を観察し、概ね3か月に1回の頻度で支援計画シート等を見直します。基礎研修修了者等は、その計画に基づき個別支援を行い、支援記録等を通じて経過をフィードバックします。
「個別支援計画」と「支援計画シート」は別の役割を持つ書類ですが、内容が矛盾しないように連動させておく必要があります。
(5)算定開始から180日以内の初期評価:(Ⅰ)+500単位、(Ⅱ)+400単位
対象利用者が新しい生活環境に適応する初期段階では、アセスメント、環境調整、支援方法の検討などに特に手厚い対応が必要です。その負担を評価するのが、(Ⅰ)の+500単位と(Ⅱ)の+400単位です。
- 対象期間は、当該利用者について重度障害者支援加算の算定を開始した日から180日以内
- 利用者が実際にサービスを利用し、基本の重度障害者支援加算を算定できる日に限って請求
- 同一利用者について、同一事業所では原則として1回のみ
(6)中核的人材による追加評価:+150単位・初期+200単位
行動関連項目の合計点数が18点以上の利用者について、中核的人材養成研修修了者、またはその者から助言・指導を受けた実践研修修了者が支援計画シート等の作成・見直しに関与し、計画に基づく支援を行った場合は+150単位を算定できます。
さらに、この中核的人材による追加評価の算定開始日から180日以内は、+200単位を上乗せできます。+150単位を算定するには、基本の重度障害者支援加算とは別に「中核的人材配置体制」の届出が必要です。
初期180日以内で全要件を満たす場合、(Ⅰ)は360+500+150+200=1,210単位/日、(Ⅱ)は180+400+150+200=930単位/日です。実際には、利用者ごとの算定開始日と支援実施日を確認して請求します。
短期入所と共同生活援助の違い
ここまでの算定要件を踏まえると、両者の最大の違いは「基本部分が対象者の受入評価なのか、事業所の支援体制まで含む評価なのか」という点です。
| 確認項目 | 短期入所 | 共同生活援助 |
|---|---|---|
| 基本部分 | (Ⅰ)50単位・(Ⅱ)30単位 | (Ⅰ)360単位・(Ⅱ)180単位 |
| 基本部分の性格 | 対象利用者を受け入れたことを評価 | 加配・研修・計画的支援を含む体制を評価 |
| 基本部分の事前届出 | 不要 | 必要 |
| 研修体制による評価 | (Ⅰ)+100単位・(Ⅱ)+70単位 | (Ⅰ)360単位・(Ⅱ)180単位の要件に 組み込まれている |
| 中核的人材の評価 | +50単位 | +150単位、初期180日はさらに+200単に |
| 主な届出様式 | 重度障害者支援加算に関する届出書 (短期入所) |
重度障害者支援加算に関する届出書 (共同生活援助) |
(1)短期入所は基本50単位・30単位だけなら届出不要
短期入所の基本部分は、対象者にサービスを提供した事実を評価するため、体制届を提出していなくても、対象者要件とサービス提供記録が確認できれば算定できます。ただし、+100単位・+70単位・+50単位の上乗せを行う段階では届出が必要です。
(2)共同生活援助は基本360単位・180単位から届出が必要
共同生活援助の基本部分は、生活支援員の加配、実践研修修了者等の配置、生活支援員の20%以上の研修修了、支援計画シート等による支援を一体として評価します。このため、基本部分を算定する入口から事前の体制届が必要です。
(3)「共同生活援助は全ランクで届出必要」の正確な意味
共同生活援助では、どの単位を請求する場合でも、まず重度障害者支援加算(Ⅰ)または(Ⅱ)の基本体制について届出済みであることが前提です。
ただし、+500単位・+400単位の初期評価について、単位ごとに別の体制届を出すわけではありません。基本の届出を行った事業所が、利用者ごとの180日要件を満たした日に請求します。一方、中核的人材による+150単位を算定する場合は、中核的人材配置体制について追加の届出が必要です。
届出実務で確認する書類
提出書類の名称や添付資料は指定権者によって異なりますが、一般的には次の書類を準備します。
短期入所の+100単位・+70単位・+50単位を算定する場合
- 介護給付費等の算定に係る体制等に関する届出書
- 介護給付費等の算定に係る体制等状況一覧表
- 重度障害者支援加算に関する届出書(短期入所。国の標準様式では別紙8-2)
- 基礎研修・実践研修・中核的人材養成研修等の修了証の写し
共同生活援助で算定する場合
- 介護給付費等の算定に係る体制等に関する届出書
- 介護給付費等の算定に係る体制等状況一覧表
- 重度障害者支援加算に関する届出書(共同生活援助。国の標準様式では別紙8-3)
- サービス管理責任者・生活支援員の研修受講状況が分かる資料
- 各研修の修了証の写し
報酬が増える届出は、原則として毎月15日以前に適正な書類が受理された場合は翌月から、16日以降に受理された場合は翌々月から算定します。指定権者独自の事前連絡や提出方法があるため、最新の案内を確認してください。
届出だけでなく、利用者ごとの記録が重要
体制届を提出しただけでは加算を請求できません。運営指導や監査では、届出内容と実際の支援が一致しているかを、利用者ごとの記録から確認されます。
- 対象者の判定根拠:障害支援区分、行動関連項目の点数、市町村の判定情報
- 支援計画シート等:行動の背景、環境調整、具体的な支援方法、注意点
- 日々の支援記録:支援した職員、支援内容、利用者の反応、結果
- モニタリング・見直し記録:観察結果、助言内容、支援方法を変更した理由
- 職員体制の確認資料:勤務表、研修修了証、研修修了者の在籍状況
- 算定開始日の管理:初期180日加算の起算日と終了日
短期入所の基本50単位・30単位は体制届不要ですが、対象者要件、サービス提供の事実、請求根拠となる記録は必要です。届出の要否と、算定要件・記録の要否は分けて考えましょう。
よくある誤解
誤解1:短期入所の重度障害者支援加算は全部届出が必要
誤りです。基本の(Ⅰ)50単位・(Ⅱ)30単位は届出不要で、研修体制や中核的人材を評価する上乗せ部分から届出が必要です。
誤解2:共同生活援助の初期+500単位・+400単位ごとに届出が必要
基本の重度障害者支援加算について届出済みであれば、初期評価だけの届出を提出する仕組みではありません。利用者ごとの算定開始日から180日以内かどうかを管理します。
誤解3:研修修了者が在籍していれば支援計画や記録がなくても算定できる
研修修了者の在籍だけでは足りません。支援計画シート等の作成、計画に基づく実際の支援、支援記録、必要な見直しまでが一連の算定要件です。
まとめ
- 短期入所:(Ⅰ)50単位・(Ⅱ)30単位は、対象者にサービスを提供した場合の基本評価
- 短期入所:(Ⅰ)+100単位・(Ⅱ)+70単位は、実践研修修了者等が作成した計画に基づく支援を評価
- 短期入所:行動関連項目18点以上等への中核的人材支援は、さらに+50単位
- 共同生活援助:(Ⅰ)360単位・(Ⅱ)180単位は、加配・研修修了者配置・計画的支援を含む体制評価
- 共同生活援助:算定開始から180日以内は(Ⅰ)+500単位・(Ⅱ)+400単位
- 共同生活援助:中核的人材による+150単位と、初期180日の+200単位がある
- 届出:短期入所の基本50単位・30単位は不要、共同生活援助は基本360単位・180単位から必要
加算の請求では、「利用者の該当性」「職員の研修・配置」「支援計画シート等」「日々の支援記録」「体制届の効力発生日」を一体として確認することが大切です。
向井総合法務事務所では、障害福祉サービス事業所の加算届、運営体制の確認、支援計画・記録様式の整備などを支援しています。指定権者ごとの取扱いを確認したうえで、事業所の状況に応じた対応をご案内します。








