※ 2026年8月時点の法令・通知等に基づいて整理しています。
就労移行支援では、利用者の一般就労に向けて、企業での職場実習やハローワークでの求職活動など、事業所の外で支援を行うことがあります。こうした取組を評価する加算が「移行準備支援体制加算」です。
この加算は41単位/日ですが、算定要件には「利用定員の50%を超える」「利用定員の50%以下」という一見すると正反対の基準が出てくるため、非常に分かりにくい制度です。
そこで本記事では、移行準備支援体制加算について、特に実務で迷いやすい「2つの50%基準」「前年度実績の人数の数え方」「職員同行の考え方」「施設外支援との違い」を中心に整理します。
移行準備支援体制加算は、①前年度に施設外支援を行った利用者の実人数が利用定員の50%を超えている事業所が届出を行い、②職場実習等・求職活動等を実施した日に、③その日の算定対象者が利用定員の50%以下の範囲で、1人につき41単位を算定する加算です。
1.移行準備支援体制加算とは
移行準備支援体制加算は、就労移行支援事業所が一般就労への移行に向けて、企業等での職場実習や求職活動などの「施設外支援」を積極的に行っていることを評価する加算です。
加算単位数は、1人につき41単位/日です。
ただし、単に利用者が事業所の外で活動しただけで自動的に算定できるわけではありません。事業所としての前年度実績、当日の算定人数、支援内容、職員の関与など、複数の要件を確認する必要があります。
2.算定要件の全体像
まず、全体像を整理すると次のとおりです。
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確認する項目 |
要件 |
ポイント |
|---|---|---|
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前年度の実績 |
前年度に施設外支援を実施した利用者数が利用定員の50%を超えること |
「50%以上」ではなく「50%超」。実人数で判定 |
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届出 |
移行準備支援体制について所定の届出を行うこと |
前年度の施設外支援実績を確認できる資料を整備 |
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当日の人数 |
その日に加算の算定対象となる利用者が利用定員の50%以下であること |
年度全体ではなく、日ごとの上限 |
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支援内容 |
職場実習等または求職活動等を実施すること |
対象となる活動については、留意事項通知で具体化されています。 |
|
職員の関与 |
職員が同行して支援すること等 |
利用者だけで行う活動は加算とは切り分けて考える |
3.最重要ポイント:「50%超」と「50%以下」は意味が違う
この加算で最も混乱しやすいのが、2種類の「50%」です。
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基準 |
いつ見るか |
定員20人の場合 |
意味 |
|---|---|---|---|
|
50%超 |
前年度実績 |
11人以上 |
翌年度に加算を届け出るための事業所側の実績要件 |
|
50%以下 |
加算を算定する各日 |
最大10人 |
その日に41単位を算定できる人数の上限 |
つまり、覚え方は非常にシンプルです。
「前年は50%超、当日は50%以下」
当日の50%以下は「1日単位」の人数制限
当日の50%以下という基準は、年度を通じた利用者数の上限ではありません。各日ごとに判定します。
厚生労働省Q&A「平成24年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A(平成24年6月27日)問82-3」では、定員20人の事業所について、ある日に職員が同行して9人が企業実習を行った場合は9人全員が加算対象となり、別の日に11人が対象となった場合は10人までが加算対象になる、という例が示されています。
したがって、したがって、例えば4日に10人、5日に別の10人が加算の対象となっても、各日の算定対象者が利用定員の50%以下であれば問題ありません。見るのは「その日の算定対象人数」です。
11人が施設外支援をしたら、11人目は施設外支援自体ができないのか
いいえ。この50%以下という基準は、移行準備支援体制加算の「算定対象人数」の上限です。施設外支援そのものを利用定員の50%以下に制限する規定ではありません。
定員20人の事業所で11人が施設外支援を行うこと自体は可能ですが、当該日に移行準備支援体制加算を算定できるのは最大10人まで、という整理になります。
4.前年度の「50%超」は実人数で数える
次に重要なのが、前年度実績の人数の数え方です。
前年度に施設外支援を実施した利用者数は、延べ人数や延べ利用日数ではなく、施設外支援を実施した「実人数」で判定します。過去の国への照会でも、この考え方が確認されています。
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前年度の施設外支援実績 |
人数のカウント |
|---|---|
|
Aさんが企業実習を1日実施 |
1人 |
|
Aさんが企業実習を20日実施 |
1人 |
|
Aさんが実習20日+求職活動3日 |
1人 |
|
Aさん・Bさん・Cさんがそれぞれ施設外支援を実施 |
3人 |
|
同じ10人が年間を通じて何度も施設外支援を実施 |
10人 |
したがって、定員20人の事業所で、同じ10人について何十日施設外支援を実施しても「10人」です。50%ちょうどだと、前年度実績要件は満たしません。異なる利用者11人以上について施設外支援を実施して、初めて「50%超」となります。
定員別の目安
|
利用定員 |
50% |
前年度に必要となる実人数 |
|---|---|---|
|
6人 |
3人 |
4人以上 |
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10人 |
5人 |
6人以上 |
|
15人 |
7.5人 |
8人以上 |
|
20人 |
10人 |
11人以上 |
|
30人 |
15人 |
16人以上 |
5.どのような支援が加算の対象になるのか
対象となる活動は、大きく「職場実習等」と「求職活動等」の2つに分かれます。
(1)職場実習等
- 企業・官公庁等における職場実習
- 職場実習に係る事前面接、実習期間中の状況確認
- 実習先を開拓するための職場訪問、職場見学
- その他、一般就労への移行に向けて必要な支援
なお、現在の報酬告示では、職場実習等について、同一の企業・官公庁等における1回の施設外支援が1月を超えない期間であることが定められています。
(2)求職活動等
- ハローワークでの求職活動
- 地域障害者職業センターによる職業評価等
- 障害者就業・生活支援センターへの登録等
- その他、一般就労への移行に向けて必要な支援
6.職員の同行は必要か
ここは「施設外支援」と「移行準備支援体制加算」を混同しないことが重要です。
報酬告示では、職場実習等については「当該期間中に職員が同行して支援を行った場合」、求職活動等についてもハローワーク等に「職員が同行して支援を行った場合」とされています。
したがって、利用者が1人で企業実習やハローワークに行ったという事実だけをもって、移行準備支援体制加算を算定することはできません。
一方、実施上の留意事項では、実習先開拓のための職場訪問・職場見学などについて、職員のみで活動した場合も対象となる取扱いが示されています。実務では、誰の就労支援として行った活動なのか、個別支援計画や支援記録とのつながりが分かるようにしておくことが重要です。
「利用者が施設外にいる=41単位」ではありません。加算の算定では、職員がどのように関与したのかを支援記録で確認できる状態にしておきましょう。
7.「施設外支援」と「移行準備支援体制加算」は別の話
施設外支援の日に基本報酬を算定できるかどうかと、移行準備支援体制加算41単位を上乗せできるかどうかは、別々に判断します。
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項目 |
施設外支援 |
移行準備支援体制加算 |
|---|---|---|
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位置付け |
事業所以外で行う就労支援について、基本報酬を算定するための取扱い |
一定の施設外支援実績等がある事業所を追加評価する加算 |
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単位 |
就労移行支援の基本報酬 |
41単位/人・日を上乗せ |
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主な要件 |
運営規程・個別支援計画への位置付け、定期的な見直し、日報、緊急時対応等 |
前年度50%超、届出、当日50%以下、対象活動、職員同行等 |
|
利用者単独の実習 |
施設外支援の要件を満たせば基本報酬の対象になり得る |
それだけでは加算算定の要件を満たさない |
施設外支援については、原則として1年間(4月1日から翌年3月31日まで)に180日を限度として基本報酬を算定できる取扱いとされており、次のような要件があります。
- 施設外支援の内容を運営規程に位置付けていること
- 施設外支援を事前に個別支援計画に位置付け、原則として1週間ごとに必要な見直しを行うこと
- 利用者や実習受入企業等から状況を聞き取り、日報を作成すること
- 施設外支援中の緊急時に対応できる体制を確保すること
つまり、「施設外支援として基本報酬を算定できる」ことを確認したうえで、さらに移行準備支援体制加算の要件を重ねて確認する、という二段階の整理が分かりやすいでしょう。
8.定員20人の事業所で具体例
前年度
前年度中に、AさんからKさんまで異なる11人について、要件を満たす施設外支援を実施したとします。
- 利用定員:20人
- 施設外支援を実施した実人数:11人
- 11人 ÷ 20人 = 55%
→ 前年度実績は「利用定員の50%超」となるため、翌年度の体制届の要件を満たします。
翌年度のある日
職員が同行して、8人の利用者が対象となる職場実習・求職活動等を行った場合
→ 8人全員について41単位を算定可能。
別の日に、11人が対象となる活動を行った場合
→ 加算を算定できるのは10人まで。
11人目について施設外支援そのものが禁止されるわけではありません。あくまで移行準備支援体制加算の当日の算定人数に上限がある、という意味です。
9.算定するなら、どの記録を残しておくべきか
運営指導や請求確認の場面では、「実際にどの利用者に、いつ、どこで、どのような支援を行い、職員がどのように関与したか」を説明できることが重要です。少なくとも次の資料は整理しておきましょう。
- 前年度に施設外支援を実施した利用者の一覧(実人数を確認できるもの)
- 体制届・施設外支援実施状況に関する届出書の控え
- 個別支援計画(施設外支援の位置付け)
- 施設外支援の日報・サービス提供記録
- 企業実習の実施期間、実習先、支援内容が分かる資料
- ハローワーク等で行った求職活動の記録
- 同行した職員または職員のみで実施した活動の内容が分かる記録
特に「前年度50%超」と「当日50%以下」は、確認する期間も人数の意味も異なります。
10.よくある疑問
Q1.定員20人で、前年度に10人が施設外支援をしていれば要件を満たしますか?
満たしません。「50%以上」ではなく「50%を超える」ことが必要です。定員20人の場合は11人以上の実人数が必要です。
Q2.同じ利用者が年間100日実習した場合、前年度実績は100人として数えますか?
数えません。前年度実績は実人数で考えるため、その利用者については1人です。
Q3.定員20人の事業所で、今年度に加算を取れる利用者は10人までですか?
年度全体で10人まで、という意味ではありません。各日ごとに最大10人までです。別の日に別の利用者が算定対象になっても問題ありません。
Q4.利用者だけで企業実習に行った日も41単位を算定できますか?
施設外支援として基本報酬を算定できる場合はありますが、移行準備支援体制加算は職員の同行等が要件となるため、利用者が単独で実習したという事実だけでは算定できません。
Q5.実習先を探すため、職員だけで企業訪問した場合は対象になりますか?
実施上の留意事項では、実習先開拓のための職場訪問・職場見学など、職員のみで行う活動も対象として示されています。誰の支援として行ったのか、個別支援計画や記録との対応を明確にしておくことが重要です。
11.まとめ
移行準備支援体制加算は、職場実習や求職活動を積極的に行う就労移行支援事業所にとって重要な加算ですが、算定要件の読み違いが起こりやすい加算でもあります。
- 加算は41単位/人・日
- 前年度に施設外支援を実施した実人数が利用定員の50%を「超える」こと
- 前年度実績は延べ人数ではなく実人数で判定
- 加算を算定する当日は、算定対象者が利用定員の50%以下
- 当日の50%以下は1日単位で判定する
- 職場実習等・求職活動等が対象
- 利用者だけの施設外支援と、職員の関与が必要な移行準備支援体制加算は分けて考える
- 施設外支援の基本報酬要件と、加算要件の両方を確認する
特に、「前年は50%超、当日は50%以下」という2つの基準を分けて理解すると、制度全体がかなり整理しやすくなります。
就労移行支援の加算算定や運営基準については、指定権者ごとの届出方法や運用も確認しながら進める必要があります。算定可否に迷う場合は、報酬告示・留意事項・Q&Aを照合したうえで判断しましょう。








