専門的支援体制加算・実施加算をわかりやすく解説

「専門的支援体制加算」と「専門的支援実施加算」は、令和6年度の報酬改定により、従来の「専門的支援加算」と「特別支援加算」が統合される形で新に創設されました。

「専門的支援体制加算」および「専門的支援実施加算」は、理学療法士等による支援が必要な障がい児への専門的な支援の強化を図るために、基準の人員に加え、理学療法士等の専門職員を配置している場合(専門的支援体制加算)および、専門職員による個別・集中的な支援を計画的に実施した場合(専門的支援実施加算)に、それぞれ算定することができます。

※ 「専門的支援体制加算」と「専門的支援実施加算」の両加算を併せて算定することも可能です。

専門的支援体制加算・実施加算の対象サービス

  • 児童発達支援
  • 放課後等デイサービス

専門的支援体制加算・実施加算の位置づけ

※厚生労働省資料(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容 )より引用

専門的支援体制加算の算定要件

専門的支援体制加算は、「理学療法士等」による支援が必要な障がい児への支援や、障がい児の家族等に対して障がい児との関わり方に関する助言等の専門的な支援の強化を図るために、基準の人員(※)に加え、理学療法士等を1以上配置(常勤換算)した場合に算定できます。

(※)児童指導員等加配加算を算定している場合においては、当該加算の算定に必要となる従業員の員数も基準人員に含めて考えます。

理学療法士等

専門的支援体制加算の「理学療法士等」には、以下のような資格や職種が含まれます。

  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 言語聴覚士
  • 保育士(保育士として5年以上児童福祉事業に従事したものに限る)
  • 児童指導員(児童指導員として5年以上児童福祉事業に従事したものに限る)
  • 心理担当職員
  • 視覚障害児支援担当職員

留意事項

  • 保育士および児童指導員の経験年数については、保育士 or 児童指導員としての資格取得または任用からの児童福祉事業に従事した経験が必要。
  • 当該経験には、特別支援学校、特別支援学級、通級による指導での教育に従事した経験は含まれない。
  • 児童発達支援と放課後等デイサービスの多機能型では、例えば、児童発達支援の「保育士」と放課後等デイサービスの「保育士」とを兼務している者は、これらの勤務時間の合計が所定の時間に達していれば、常勤換算要件を満たすこととなる。

その他

  • 専門的支援体制加算は、通所支援計画(個別支援計画)を作成していない場合は、対象障がい児については、算定できません。

専門的支援体制加算の報酬単位

専門的支援体制加算の報酬単価は、「一般型」と「重心型」で報酬単位に違いがあります。

※ 旧報酬体系では、児童発達支援と放課後等デイサービスで報酬単位も異なっていましたが、令和6年度の報酬改定により児童発達支援と放課後等デイサービスの報酬単位は統一されました。

(児童発達支援センターについては割愛)

「一般型」事業所の専門的支援体制加算の報酬単位

利用定員 理学療法士等
10人以下 123単位
11人以上
20人以下
82単位
21人以上 49単位

「重心型」事業所の専門的支援体制加算の報酬単価

利用定員 理学療法士等
5人 247単位
6人 206単位
7人 176単位
8人 154単位
9人 137単位
10人 123単位
11人以上 82単位

専門的支援実施加算の算定要件

専門的支援実施加算は、理学療法士等による支援が必要な障がい児に対する専門的な支援の強化を図るために、理学療法士などによる個別・集中的な支援を計画的に実施した場合に算定することができます。

  • 理学療法士等を1以上配置し、専門的支援実施計画(当該理学療法士等が障がい児ごとの個別支援計画を踏まえて、その有する専門性に基づく評価および当該通所支援計画に則った支援であって5領域のうち特定または複数の領域に重点を置いた支援を行うための計画)を作成し、当該専門的支援実施計画に基づき、適切に支援を行うこと。

 <理学療法士等>

  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • 言語聴覚士
  • 保育士(保育士として5年以上児童福祉事業に従事したものに限る)
  • 児童指導員(児童指導員として5年以上児童福祉事業に従事したものに限る)
  • 心理担当職員
  • 視覚障害児支援担当職員
  • 保育士および児童指導員の経験年数については、保育士 or 児童指導員としての資格取得または任用からの児童福祉事業に従事した経験が必要となる。
  • 理学療法士等の配置は、単なる配置で差し支えない。基準人員として配置すべき従業者や児童指導員等加配加算、専門的支援体制加算で加算している人員によることも可能である。
  • 専門的支援実施計画の実施状況の把握を行うとともに、加算対象児の生活全般の質を向上させるための課題を把握し、必要に応じて計画の見直しを行うこと。
  • 加算対象児ごとに「当該支援を行った日時」および「支援内容の要件」を記録すること。
  • 専門的支援については、個別での実施を基本としつつ、個々のニーズを踏まえた支援を確保したうえで、小集団(5名程度まで)による実施 or 基準人員として配置するべき従業者を配置して小集団の組み合わせによる実施も可能。この場合、小集団ごとに人員基準を満たす必要はない。
  • 専門的支援の提供時間は、同日における当該障がい児に対する支援の時間のすべてとする必要はないが、少なくとも30分以上を確保すること。
  • 専門的支援実施計画の作成および見直しにあたっては、対象児および保護者に対し説明するとともに、同意を得ること。
  • 専門的支援実施加算の1月の算定限度回数は、当該事業所における対象児の月利用日数に応じて、以下のとおりとする。
事業所 月利用日数 限度回数
児童発達支援 12日未満 4回
12日事業 6回
放課後等デイサービス 6日未満 2回
6日以上12日未満 4回
12日以上 6回

専門的支援実施加算の報酬単位

専門的支援実施加算の報酬単位は、150単位/回です。児童発達支援も放課後等デイサービスも同じ単位数です。

専門的支援体制加算・実施加算のQ&A

Q. 「専門的支援体制加算」について、専門職員の配置について、常勤により配置する場合に、当該職員が病気で欠勤する場合や有休休暇を取得する場合であっても、配置の要件を満たすか。

A. 満たす。なお、欠勤等が1月以上続く場合には、配置要件を満たさなくなるものとする。

 (令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.1 問14)

 

Q. 「専門的支援体制加算」で、保育士および児童指導員に求められる経験年数における「児童福祉事業」は、児童指導員等加配加算における「児童福祉事業」と同じか?教育の経験は含まれるか?

A. 専門的支援体制加算における「児童福祉事業」に従事した経験年数については、特別支援学校、特別支援学級および通級による教育の経験は含まれない。幼稚園は含まれる。

(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.1 問15)

 

Q. 「専門的支援実施計画」について、具体的にどのような項目を記載することが求められるのか?また、個別支援計画と一体的に作成することは可能か?

A. 専門的支援実施加算の算定にあたっては、個別支援計画を踏まえ、支援を提供する専門職が「専門的支援実施計画」を障がい児ごとに作成することが必要となるが、計画には、以下の項目を記載することを想定している。

  • 当該専門職によるアセスメントの結果
  • 5領域との関係の中で、特に支援を要する領域
  • 専門的な支援を行うことで、目指すべき達成目標
  • 目標を達成するために行う具体的な支援の内容
  • 支援の方法 など

 上記の項目に限らず、「ニーズに応じた専門的支援に必要であると考えられる項目」について記載するとともに、「計画的に質の高い専門的支援を提供するうえで有効な計画とすること」が求められています。

 例えば、

  • 障害特性を踏まえた配慮事項について記載する
  • 個別支援計画の支援との関連性を記載する
  • 支援の改善が図れるような構造とする   など。

(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.1 問16)

 

Q. 専門的支援は、1対1の個別支援により実施することが必要か?また、理学療法士等が対象児の支援時間を通じて直接支援を行うことが必要か?

A. 専門的支援については、個別での実施を基本としつつ、個々のニーズを踏まえた支援を確保したうえで、小集団(5名程度まで)による実施や、理学療法士等の専門職とは別の職員を配置したうえで、小集団の組み合わせ(2の小集団まで)による実施も可能とする。専門的支援の提供時間は、同日における当該障がい児に対する支援時間のすべてとする必要はないが、少なくとも30分以上を確保すること。

(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.1 問17)

 

Q. 専門的支援実施加算等(※)の加算の算定にあたって、配慮すべき従業者に常勤換算による配慮が求められていない場合において、外部から派遣された者により、これらの加算の算定に要する所定の支援を行った場合であっても、これらの加算を算定できるか?

A. 専門的支援実施加算等(※)の加算の算定にあたって配置すべき従業者とは、事業所と雇用契約を締結して事業所に配置されているもの等を指し、例えば、他の法人等から専門職員による訪問を受けるなど、外部から派遣された者により当該加算の算定に要する所定の支援を行った場合には、当該加算を算定できない。

(※)専門的支援実施加算、人口内耳装用児支援加算(Ⅱ)/児童発達支援、人口内耳装用児支援加算/放課後等デイサービス、視覚・聴覚・言語機能障害児支援、個別サポート加算(Ⅰ)/放課後等デイサービス、強度行動障害児支援加算、共生型サービス医療的ケア児支援加算

(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.3 問9)

 

Q. 児童発達支援管理責任者が欠如している状態において、専門的支援実施加算の算定は可能か?

A. 算定は不可。

(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.4 問1)

 

Q. 専門的支援実施加算等(※)で示されている1月あたりの算定回数の上限は、事業所間で通算されず、事業所ごとに上限回数をカウントしてよいか?

(※)専門的支援実施加算、家族支援加算、子育てサポート加算、欠席時対応加算、集中的支援加算、入浴支援加算、関係機関連携加算、事業所間連携加算、保育・教育等移行支援加算、自立サポート加算、多職種連携加算

A. 事業所ごとに上限回数をカウントしてよい。ただし、

  • 多機能型事業所において、同一の児に複数のサービスによる支援を行う場合、「家族支援加算」は、各サービスを合計して上限回数をカウントすること。
  • 多機能型事業所において、同一の児童に係る「関係機関連携加算」の算定は各サービスを合計して上限回数をカウントすること。

(令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.5 問4)

 


「専門的支援体制加算」と「専門的支援実施加算」は、令和6年度の報酬改定により、従来の「専門的支援加算」と「特別支援加算」が統合される形で新に創設された加算です。よく似た加算ですが、算定要件が異なりますので注意しましょう。

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