就労継続支援A型の事業所を開業するには、就労継続支援A型の人員配置基準を守らなければ指定をとることができず、そのため開業することもできません。また、開業後にも人員配置基準を守りながら運営しなければならず、仮に人員配置基準を割るような状況となってしまった場合には、サービス提供職員欠如減算(人員欠如減算)などの報酬減額となってしまいます。
就労継続支援A型の人員配置には2パターンの人員配置基準があります。
- 従業者配置 7.5:1以上
- 従業者配置 10:1以上
従業者配置7.5:1以上の場合は、利用者7.5人に対して、従業者(職業指導員、生活支援員)1人以上の配置が必要です。従業者配置10:1以上の場合は、利用者10人に対して、従業者(職業指導員、生活支援員)1人以上の配置が必要です。
「従業者配置7.5:1」と「従業者配置10:1」の違いは、利用者に対する従業者の配置だけでなく、事業所が受けとる報酬(訓練等給付)単価にも違いがあります。
<従業者配置7.5:1の場合の報酬単位(就労継続支援A型サービス費(Ⅰ)>
スコア評価点 利用定員 |
170点 以上 |
150点以上 170点未満 |
130点以上 150点未満 |
105点以上 130点未満 |
80点以上 105点未満 |
60点以上 80点未満 |
60点未満 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
20人 以下 |
724単位 | 692単位 | 676単位 | 655単位 | 527単位 | 413単位 | 319単位 |
21人以上 40人以下 |
643単位 | 615単位 | 601単位 | 583単位 | 468単位 | 367単位 | 282単位 |
41人以上 60人以下 |
605単位 | 578単位 | 565単位 | 547単位 | 439単位 | 344単位 | 265単位 |
61人以上 80人以下 |
593単位 | 568単位 | 555単位 | 536単位 | 432単位 | 338単位 | 260単位 |
81人 以上 |
574単位 | 547単位 | 534単位 | 518単位 | 416単位 | 327単位 | 252単位 |
<従業者配置10:1の場合の報酬単位(就労継続支援A型サービス費(Ⅱ)>
スコア評価点 利用定員 |
170点 以上 |
150点以上 170点未満 |
130点以上 150点未満 |
105点以上 130点未満 |
80点以上 105点未満 |
60点以上 80点未満 |
60点未満 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
20人 以下 |
660単位 | 630単位 | 616単位 | 597単位 | 480単位 | 376単位 | 290単位 |
21人以上 40人以下 |
588単位 | 563単位 | 549単位 | 532単位 | 426単位 | 335単位 | 258単位 |
41人以上 60人以下 |
546単位 | 522単位 | 510単位 | 494単位 | 397単位 | 312単位 | 240単位 |
61人以上 80人以下 |
535単位 | 511単位 | 499単位 | 484単位 | 388単位 | 305単位 | 235単位 |
81人 以上 |
516単位 | 493単位 | 482単位 | 467単位 | 375単位 | 295単位 | 226単位 |
※就労継続支援A型の報酬単価は令和3年の報酬改定によってスコア制になり、スコアの評価点によって報酬区分が分けられることとなりました。
就労継続支援A型の人員配置基準
就労継続支援A型で基本的に必要となる職種にはいくつかの種類があります。
- 管理者
- サービス管理責任者
- 職業指導員
- 生活支援員
※上記以外にも賃金向上達成指導員配置加算を算定する場合には賃金向上達成指導員の配置が必要ですし、食事提供体制加算を算定する場合には調理員の配置が必要になるなど、基本的に必要となる職種の従業者以外の職員の配置が必要となる場合があります。
管理者
常勤1人
事務所の従業者及び業務の管理、その他の管理的業務を一元的に行います。管理業務に支障がない場合は他の職務の兼務が可能です。
サービス管理責任者
個別支援計画の作成、従事者に対する技術指導等のサービス内容の管理、他事業や関係機関との連絡調整等を行います。
- 利用者数60以下:1人以上
- 利用者数61以上:1人に、利用者数が60人を超えて40又はその端数を増すごとに1人を加えて得た数以上
※サービス管理責任者は、1人以上は常勤であること。
職業指導員及び生活支援員
職業指導員は、障がいをお持ちの方でも力が発揮できるように実際に一緒に仕事をしながら技術指導などを行います。生活支援員は、身の回りの支援から創作・生産活動まで、生活に密着しながら障がいをお持ちの方の自立をサポートします。
- 常勤換算で、平均利用者数を「7.5」または「10」で除した数以上
(従業者配置7.5:1の場合は「利用者数÷7.5」、従業者配置10:1の場合は「利用者数÷10」 ) - 職業指導員 1人以上
- 生活支援員 1人以上
※職業指導員と生活支援員のうち1人以上は常勤であること。
就労継続支援A型の人員配置基準の考え方
就労継続支援A型の人員配置には、上記のように「従業者配置7.5:1」と「従業者配置10:1」の2パターンがあります。これは「利用者数」に対しての「従業者数」が7.5:1の配置割合になるか10:1の配置割合になるかどうかの違いです。
ここでいう「利用者数」は、原則として「前年度の平均利用者数」のことをいいます。ただ、新規で指定をとった場合は「前年度(毎年4月1日~翌年3月末日)」の実績がまだありませんので、「前年度(毎年4月1日~翌年3月末日)」の実績ができるまでは、以下のような方法で「利用者数」を計算することになります。
指定時から6ヶ月未満の実績しかない
利用定員の90%
指定時から6ヶ月以上1年未満の実績ができた
直近6ヶ月間の「延利用者数」÷直近6ヶ月間の「開所日数」
指定時から1年以上の実績ができた
直近1年間の「延利用者数」÷直近1年間の「開所日数」
指定時から1年以上経過し、前年度(前年4月1日~今年3月31日)の実績ができた
前年度(前年4月1日~今年3月31日)の「延利用者数」÷前年度(前年4月1日~今年3月31日)の「開所日数」
就労継続支援A型の人員配置では、上記の「平均利用者数」から従業者の「必要配置数」を計算し、その「必要配置数」をもとに職業指導員や生活支援員の人員配置を考えることになります。
例えば、令和4年2月1日に就労継続支援A型の指定を取得したとした場合(利用定員20人とする)、各月の「平均利用者数」は以下の計算で算出します。
指定時から6ヶ月未満の実績しかない
利用定員の90%
令和4年2月 | 定員20人×0.9=18人 |
---|---|
令和4年3月 | 定員20人×0.9=18人 |
令和4年4月 | 定員20人×0.9=18人 |
令和4年5月 | 定員20人×0.9=18人 |
令和4年6月 | 定員20人×0.9=18人 |
令和4年7月 | 定員20人×0.9=18人 |
指定時から6ヶ月以上1年未満の実績ができた
直近6ヶ月間の「延利用者数」÷直近6ヶ月間の「開所日数」
令和4年8月 | 令和4年2月~令和4年7月の「延利用者数」 ÷令和4年2月~令和4年7月の「開所日数」 |
---|---|
令和4年9月 | 令和4年3月~令和4年8月の「延利用者数」 ÷令和4年3月~令和4年8月の「開所日数」 |
令和4年10月 | 令和4年4月~令和4年9月の「延利用者数」 ÷令和4年4月~令和4年9月の「開所日数」 |
令和4年11月 | 令和4年5月~令和4年10月の「延利用者数」 ÷令和4年5月~令和4年10月の「開所日数」 |
令和4年12月 | 令和4年6月~令和4年11月の「延利用者数」 ÷令和4年6月~令和4年11月の「開所日数」 |
令和5年1月 | 令和4年7月~令和4年12月の「延利用者数」 ÷令和4年7月~令和4年12月の「開所日数」 |
指定時から1年以上の実績ができた
直近1年間の「延利用者数」÷直近1年間の「開所日数」
令和5年2月 | 令和4年2月~令和5年1月の「延利用者数」 ÷令和4年2月~令和5年1月の「開所日数」 |
---|---|
令和5年3月 | 令和4年3月~令和5年2月の「延利用者数」 ÷令和4年3月~令和5年2月の「開所日数」 |
指定時から1年以上経過し、前年度(前年4月1日~今年3月31日)の実績ができた
前年度(前年4月1日~今年3月31日)の「延利用者数」÷前年度(前年4月1日~今年3月31日)の「開所日数」
令和5年4月 | 令和4年4月~令和5年3月の「延利用者数」 ÷令和4年4月~令和5年3月の「開所日数」 |
---|---|
令和6年4月 | 令和5年4月~令和6年3月の「延利用者数」 ÷令和5年4月~令和6年3月の「開所日数」 |
そして、上記のように令和4年2月1日を指定日とした場合(従業員配置7.5:1)、
- 令和4年2月1日の「利用者数」は、20人×0.9=18人
- 利用者数18人÷7.5=2.4(必要配置数)
- 職業指導員と生活支援員の合計で2.4人以上の配置が必要
- 職業指導員と生活支援員のうち1人以上は常勤
という人員配置が必要になります。
就労継続支援A型の人員配置は、指定時からの実績期間によって計算の対象となる期間が異なります。そのため、「前年度(毎年4月1日~翌年3月末)」の実績ができるまでは、毎月ごとに「平均利用者数」を計算し、その「平均利用者数」をもとにして従業者の人員配置基準となる数値(必要配置数)を算出しなければなりません。
就労継続支援A型の勤務形態一覧表(シフト表)の作成
「平均利用者数」から人員配置基準で求められる従業者の「必要配置数」を計算できたら、次に勤務形態一覧表(シフト表)を作成していきます。
勤務形態一覧表は人員配置基準をクリアしているかどうかを判断するものです。実地指導でも必ず確認される書類になりますので、必ず毎月の勤務形態一覧表(予定分と実績分)を作成して人員配置基準をクリアしているかどうかを確認し保管するようにしましょう。
上記のモデルケース(令和4年2月1日指定)で、開業時の勤務形態一覧表を作成するとすれば以下のような配置になります(シンプルに考えられるように1週間分の勤務形態一覧表としています)。
職種 | 氏名 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 週の 時間 |
常勤 換算 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | ||||
管理者 サビ管 |
A | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 | 40.00 | 1.0 | ||
職業指導員 | B | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 | 40.00 | 1.0 | ||
職業指導員 | C | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 20.00 | 0.5 | ||
生活支援員 | Ⅾ | 8 | 8 | 8 | 24.00 | 0.6 | ||||
生活支援員 | E | 8 | 8 | 16.00 | 0.4 |
- 利用定員20人
- 利用者数20人×0.9=18人(平均利用者数)
- 18人÷7.5(従業者配置7.5:1)=2.4(必要配置数)
- 営業日:月曜日~金曜日
- 職業指導員Bが常勤(所定労働時間 週40時間)
この場合、就労継続支援A型の従業者(職業指導員と生活支援員)の「必要配置数」は「2.4」となります。
上記の勤務形態一覧表では、管理者サビ管を除いた職員の配置は、職業指導員1.0+職業指導員0.5+生活支援員0.6+生活支援員0.4=2.5となり、必要配置数の「2.4」をクリアしていることになります。
就労継続支援A型の人員配置基準は、開業時(指定時)だけではなく、開業後(指定後)も守らなければなりません。開業時に人員配置基準をクリアしていなければ指定は取れませんし、開業後に人員配置基準をクリアできない状況となればサービス提供職員欠如減算となってしまう可能性があります。
そのため、就労継続支援A型の人員配置基準は、「前年度」の実績ができるまでは、直近の6ヶ月や1年間の実績をもとに計算しますので、毎月の記録が重要になります。
就労継続支援A型の人員配置基準を正しく理解し、サービス提供職員欠如減算とならないように、毎月の利用者数や開所日数を正しく記録し保管するようにしましょう。
当事務所では、就労継続支援A型の開業支援サービスや運営支援サービスを提供しております。
就労継続支援A型は令和3年の報酬改正によってスコア制となり、以前にも増して複雑化しています。そのため、就労継続支援A型の開業にあたっては、人員配置のことはもちろん、生産活動をどのようにするかなどの運営面も含めた事業計画を立て、計画的に開業準備を進めていくようにしましょう。