グループホームの事業は利用者が地域において共同して自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、当該利用者の身体及び精神の状況並びにその置かれている環境に応じて共同生活住居において入浴、排せつ並びに食事の介助、相談そのたの日常生活上の支援を適切かつ効果的に行うものでなければなりません。
障がい者がグループホームを利用するためには
障がい者がグループホームを利用するには、まず居住地の区市町村(実施機関:支給決定をした区市町村のこと)の窓口に申請し、障害支援区分について認定を受けます(障がいの状況によっては、障害支援区分の認定が不要な場合もあります)。
その際、利用予定障がい者は、「特定相談支援事業者(計画相談事業者)」が作成した「サービス等利用計画案」を区市町村に提出します。セルフプランでの利用の場合は、自分で作成したセルフプランを提出します。
区市町村は、これらの計画案や勘案すべき事項を踏まえ、グループホーム(共同生活援助)の支給決定をします。
※ここで決定される「支給決定」といのは、「〇〇グループホームを利用すること」という特定のグループホームの利用を決定するものではありません。支給決定を受けてどこのグループホームを利用するかは、あくまで障がい者本人が決めるものです。選んだグループホームの運営事業者と契約を交わすことで、はじめて当該グループホームの利用を開始することができます。
利用者が入居する際に事業所としてやるべきこと
① 利用者の状況確認
支給決定を受けると、受給者証が発行されます。事業者は利用者の受給者証で支給決定の有無や有効期限などを確認します。また、実施主体や計画相談事業者など連携しつつ、他の障がい福祉サービスの利用状況や保健医療サービスの利用状況なども併せて確認することが重要です。
さらに、より利用者の状況に合った支援ができるように、利用者の心身の状況、生活歴、病歴、親族・後見人なども把握するように努めましょう。
なお、アセスメントは入居の際に一度行って終わるものではありません。支援をしていくなかで分かってきた特徴、傾向、表出されづらい思いなどの情報を絶えず更新し、支援者で共有してよりよい支援を目指していく必要があります。
② 個別支援計画の作成
サービス管理責任者は、利用者及びその家族の意向、適性、障害の特性その他の事情を踏まえ、利用者が充実した日常生活を営むことができるよう、個別支援計画を作成しなければなりません。
その際には、利用者の希望・ニーズを引き出して到達目標を設定し、利用者ができることや強みに着目しながら、どのように支援をすれば目指している生活を実現できるかを考えて計画に反映させる必要があります。支援者側の経験や一方的な価値観をもとに支援方法を決めてしまったり、決まりきった方法で支援が行われることがないように心がけましょう。
作成した個別支援計画は、利用者や家族に書面で交付し、その内容を説明し、了承を得なければなりません。当然のことながら、日々の支援は、個別支援計画に沿って行い、定期的に結果を振り返る必要があります。そのため、個別支援計画は少なくとも6ヶ月に1回以上モニタリングを実施し、内容を見直すことが義務付けられています。見直しの際は、単なる「焼き直し」にならないよう、これまでの支援結果や見えてきた課題等を踏まえて作成することが大切です。
グループホームでの支援内容は主に、健康管理、食事管理、金銭管理などが考えられます。可能な限り支援者側の都合による管理的な支援とならないように注意する必要があります。
利用者の自立を促すという観点から、支援を最小限にとどめることが利用者の希望する生活につながるケースもあるかと思いますが、一人一人できることが異なるからこそ、その人にあった個別支援計画を作成しなければなりません。計画には当該利用者の支援のあり方・考え方を具体的に記載して、すべての支援者が共通の意識をもって支援を行っていくことが重要です。
なお、個別支援計画については、施錠できる場所で、かつ利用者から求めがあった場合など必要な際には遅滞なく提示・確認できる場所に保管しましょう。
③ 入居説明、重要事項説明書、契約書
グループホーム事業者は、適切なサービスを提供するため、入居前にあらかじめ、利用申込者に対し当該グループホーム事業所の運営規程の概要、従業者の勤務体制、事故発生時の対応、苦情処理の体制などの重要事項について、文書(契約書)にて説明を行い、利用申込者の同意を得なければなりません。説明にあたっては、パンフレットや説明書等により利用者の障害特性に配慮するようにしてください。
とくに、利用者から受け取る利用者負担額や預かり金の管理については、利用者にご理解・ご納得いただけるよう丁寧に説明する必要があります。
④ 提供拒否の禁止
事業者は、正当な理由なく利用希望者の入居を拒むことはできません。正当な理由とは、以下のような場合をいいます。
- 当該事業所の職員体制からは利用申込みに応じきれない場合
- 当該事業所の運営規程において対象とする主たる障害の種別を定めている場合で、対象外の者から利用申込みがあった場合
- 入院治療が必要な場合
入居者の生活
グループホームは、利用者が地域において共同して自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう支援することが事業の目的です。つまり、利用者の希望に沿って「できる」ことを増やし、自立を促進するような支援が求められており、決して、グループホーム運営事業者が管理的であってはなりません。
他の利用者と共同生活を送ることになるため、最低限の決まりや制約(食事の提供時間や就寝時間など)は必要であると考えられますが、一方的に決めつけることなく、可能な限り一人一人の特性に沿った方法で生活を支えられるように工夫していくことが大切です。
また、グループホームは家庭的な雰囲気の下、地域の中で暮らすことを事業の理念としています。そのため、支援者は、利用者の自立を支援する者であると同時に、利用者とともに生活をする「家族」としての役割も担っているとも言えます。
グループホームでの生活は、「利用者だけ」でも「支援者だけ」でもなく、利用者と支援者が一緒になって作り上げていく必要があります。
ただし、グループホームはあくまでもグループホーム利用者の住まいです。世話人等の職員はグループホームでの勤務中、自宅にいるかのように過ごすことのないように注意してください。世話人・生活支援員は、一定の緊張感をもって、あくまでグループホームという職場で支援を行う者であるという意識を忘れないように心がけましょう。
① 共同生活と支援
「できる」ことを増やし、自立を促進するという観点から、利用者個人に関する事項(私物管理、居室の清潔保持や整理整頓、各種手続き、就労先等の外部との調整等)は、可能な限り利用者が自ら行うことが望ましいです。
それらが十分に行えない利用者に対しては、ただ単に支援者が代行するのではなく、なぜ十分に行えないのかを検証し、自分の力で行えるよう支援する必要がないかをよく検討することが重要です。
また、共用部分(居間、食堂、玄関、廊下、台所、洗面所、浴室等)については、利用者同士または利用者と支援者が話し合って当番を決めるなど、共同して自立した生活を営むことができるような工夫が必要です。
当然のことながら、利用者によって生活習慣や能力、目指す生活等が異なるので、どのように支援を行うのが適切であるかについては、個別支援計画の策定・見直しや職員会議の実施などで適宜検討する必要があります。
時には、だれとも関わろうとしなかったり、支援を拒否したりする利用者もいるでしょう。しかし、表面的な行動をそのまま受け取って支援をやめるのではなく、利用者と話せる関係性を作っていき、望んでいる生活はどういうものか、それを維持するのに本当に何も支援は必要ないのかなどを掘り下げていくことが重要になります。小規模かつ家庭的な地域生活の場であるグループホームだからこそできる「良い支援」を追求していくことが大切です。
② 日中の活動について
グループホームの利用者は、原則として生活介護や就労継続支援等の日中活動事業所を利用している、あるいは一般就労をしている方を想定しています。
日中どこにも行かず、ただ単に住んでいるというだけでは、利用者本人の生活が無味乾燥なものになり、孤独に陥ることも考えられます。基本的に日中活動以外の活動を支援するグループホーム事業者として、利用者の日中活動に係る状況把握等は大切なことであり、日中まったく活動をしていない利用者については、実施主体や計画相談支援事業者等関係機関と連携・相談し、新たな日中活動先の情報取集や地域のサークルへの参加促進等、利用者のQOL(クオリティーオブライフ)を高めるように努めるようにしましょう。
また、休日の日中については、必要に応じて、グループホーム事業者が利用者個々にあった余韻の過ごし方の提案、地域のイベントに関する情報提供や旅行の企画など、利用者それぞれがその人らしく充実した余韻を過ごすことができるよう支援することが望まれます。
③ 緊急時・世話人不在時
緊急事態が起こったときのために、緊急連絡先は事前に利用者に周知のうえ、グループホーム内に掲示しておく必要があります。しかし、利用者によっては緊急の連絡を行うことが容易でない場合もあるため、入居後なるべく早い時期と、その後定期的に、誰に、どのようにして連絡を取るかについて確認・訓練を行っておくことが重要です。
また、世話人等が不在になる際は、当該状況について法人内で情報の共有を図ったりバックアップ施設に状況を知らせたりするなどの対策をとるようにしましょう。
④ 男女別の支援について
同じ住居の利用者を同性で統一しなければならないという基準はありませんが、異性の利用者が同じ住居に住むことによりトラブルが起きる可能性があります。グループホーム事業者は、個別支援計画や必要な職員配置等対応について十分検討し、トラブルが起きないような配慮が必要です。また、入浴や排せつの介助が必要な利用者に対する支援については、同性介助であることが望まれます。
入居者の負担
① 備 品に係る負担
- 居室に必要な備品は、収納設備を除き、原則として利用者が用意するものです。(カーテンやカーペットは、利用者居室であっても防炎とする必要があります。)
- 洗濯機、冷蔵庫、テレビ、食器棚、ガス台等日常生活を送るうえで必要な共用設備については、原則として事業者の負担で用意します。
② 利用者から徴収できる費用
事業者は下記の費用について利用者から実費相当分を徴収することができます。
事前に定額を徴収する場合は、期間などを定めて清算を行い、残額を利用者へ返還します。
- 食材料費
- 家賃
- 光熱水費
- 日用品費
- その他日常生活費
これらの支払いを求める場合は、
- あらかじめ運営規程にその費用の種類と額を定めて、見やすい場所に掲示。
- 利用者(場合によってはその家族)に対し、費用についての説明を十分に行い、同意を得る。
- 費用の支払いを受けた事業者は、利用者に対して領収書を交付する必要があります。
利用者からの費用徴収については、多くのトラブルが発生しています。
- 不明瞭な清算
- 支援者による横領
- 支援者個人へのポイントカードへのポイント付与 など
記帳の徹底や複数管理体制の構築、鍵付きキャビネットへの保管など、細心の注意を払って確認・対応するようにしましょう。また、体験利用に関わる利用者については、利用日数に合わせて按分する等の方法により、適切な額の支払を受けるようにしましょう。
食材料費
食事提供に係る人件費は食材料費に含めてはいけません。また、食材料費については実費徴収でなければならず、先に食材料費を徴収する場合は、定期的に清算が必要です。「実費」については、その月の食材料費総額や食数をもとに計算するべきでしょう。
家賃
家賃の設定については、対外的に合理的な説明ができ、かつ障がい者が生活するうえで支障のない実費相当額とします。
原則として、賃貸物件の場合はその賃借料、自己所有物件の場合は賃貸物件で通常建物オーナーが負担するべき費用などをもとに設定することが適切です。
また、通所施設費整備費の補助金を使って建物建築などを行った場合には、その分家賃を低く抑えることが求められます。
利用者から受け取る家賃総額が賃借料よりも高い場合や、設定されている家賃額の根拠が不明の場合は、その家賃額の算定根拠を求められる場合があります。あくまで利用者が負担することが適当な実費の範囲で家賃を設定する必要があります。
なお、運営規程や契約書等には、補足給付費や家賃助成、施設借上費、生活保護費(住宅扶助)など公的な助成金などを充当する前の金額を明記します。
光熱水費
光熱水費については、建物全体分を定員で按分するなど、適切な設定にしましょう。先に光熱水費を徴収するような場合は、定期的な清算が必要です。
なお、アパート形式のグループホームで居室ごとに契約を交わせる場合は、グループホーム事業者を介さず、利用者が直接業者に光熱水費を支払う形式をとっても差し支えありません。
日用品費
ここでいう日用品とは、トイレットペーパー、電球、洗浄等利用者全員が使用するいわゆる消耗品のことをいいます。どの物品を日用品費として徴収するかについては、利用者との合意が必要です。先に日用品費を徴収する場合は、定期的に清算が必要です。
その他日常生活費
その他日常生活費の具体的な範囲は、事業者側で用意する個人用の日用品(歯ブラシ、化粧品など)、教育娯楽などとして日常生活に必要なもの(イベントにおける材料費など)、送迎に係る費用(ガソリン代などの実費相当額)が想定されていて、いずれも利用者の個別の希望によるものの実費相当分に限られます。
そのため、以下のものは対象となりません。
- グループホームが提供すべきサービスと重複関係にあるもの
- 費用の内訳がわからないなど、曖昧な名目のもの(施設利用料など)
- 利用者に対して一律に提供するもの(画一的に徴収するもの)
- 嗜好品、贅沢品の購入費用
上記以外の項目で利用者から金銭の支払いを求められるのは、グループホームが提供すべきサービスとは重複しない範囲で、「使途が直接利用者の便益を向上させるもの」かつ「当該利用者に支払いを求めることが適当であるもの」に限られます。また、その際には、使途及び額並びに利用者に金銭の支払いを求める理由について、書面を用いて十分に説明するとともに、同意を得なければなりません。
なお、近頃、賃貸物件を使っている通所型グループホームなどの利用者から、「退去時の現状回復費用(実費により清算)」について、清算時にほとんど戻ってこなかったという苦情が増えているようです。原状回復とは、通常の使用による経年劣化とは言えない変化があったものを元に戻すことであり、その費用負担については「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(平成23年8月国土交通省住宅局)及び「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」(平成16年9月東京都)を参考にして、適切な額を徴収するようにしましょう。
行政手続きの代行費用
行政手続代行費用を利用者から徴収することはできません。そもそも行政機関に対する手続などについては、事業者が利用者の同意のもと、利用者に代わって行うこととなっている(グループホームが提供するべきサービスとなっている)ためです。(基準第211条の2第2項)。交通費、印刷費用の実費であれば、利用者に求めることも差し支えありません。
金銭管理について
利用者の中には、自身で金銭の管理をすることが難しい方がいます。その場合、当該利用者の金銭管理について、家族による管理、地域の権利擁護事業や後見人制度の活用等が考えられます。
また、場合によってはグループホーム事業者が利用者の金銭を管理することもあります。その場合は、グループホーム事業者として金銭の入出金の手続き等を明確にするため、現金、各種預貯金の通帳、キャッシュカード、印鑑及びこれらに係る書類等(以下「預り金等」という)管理規程を定める必要があります。
預り金等管理規程に基づき金銭管理を行う際に、下記のとおり対応し、不適切な金銭管理が行われることがないよう十分に留意する必要があります。
- 預り金等を施錠できる金庫に保管するとともに保管方法を工夫すること。(通帳・印鑑・キャッシュカードは別々の金庫で保管し、管理者を別に置く等)
- 管理内容について、管理委託契約書等により、利用者と事業者との間で管理内容を明確にしておくこと。
- 預り金等の責任者・副責任者を選任するとともに、適切に預り金等の管理が行われているか複数の職員でチェックできる体制を整えること。
- 預り金等の管理は、個人別の台帳を作成し、定期的に管理者が確認すること。(本人確認のサインをもらうことが望ましい)
- 預り金の収支は定期的に利用者(または家族)に報告すること
- 管理者は、セルフチェックや法人監査、その他方法により、定期的に預り金規程に基づき適切な処理がされているかを確認すること。
服薬管理について
利用者が医療機関から処方された薬を処方どおり飲むことができる場合、利用者自身で薬を管理することが原則です。グループホーム事業者は利用者が処方どおりに服薬できたか確認を行います(飲み忘れ、錠数の確認など)。
ただし、利用者によっては、グループホーム事業者による薬の管理が必要な場合もあります。その際には、本人・家族・医師等と話し合い、管理方法等の同意を得る必要があります。
なお、薬を預かる際には、他の入居者が誤って服用することがないよう鍵のかかるキャビネット等で適切に管理をしましょう。また、複数の薬を預かるときには、服用の誤りが生じないように保管の方法を工夫しましょう。複数の職員が服薬管理に関わる場合には、薬を区別できるようにし、服用の誤り・漏れが発生しないようマニュアルを作成するなどして共通の認識を持つように徹底しましょう。
健康管理
利用者の中には、自身の体調につき、訴えることが難しい方もいるため、グループホーム事業者は、利用者の顔色、食欲、体温などを確認し、日頃の様子と変化を把握しましょう。
健康状態の把握のために、あらかじめ入院時に通院・入院、これまでにあった大きな健康状態・精神状態の変化、服薬の状況などを確認し、これを踏まえ健康の変化についても記録していく必要があります。
食事の側面からは、利用者の栄養バランス・生活習慣病・アレルギーに配慮すると同時に食中毒や感染症対策を徹底していく必要があります。利用者によっては、食事の制限が必要な方もいますが、医療機関の指示を丁寧に説明し、理解を得ていくことが大切です。
また、利用者が一人暮らしを目標とし、自ら食事の用意を行っている場合、食事の提供がないグループホームもあります。その場合でも、利用者に任せきりにはせず、健康に生活できるような食事が作れているかなど確認することが必要です。
利用者の通院にあたり、病院の行き来が難しい、医師への説明や医師からの説明が難しい場合には、親族に相談したうえで、グループホーム事業者が同行します。
緊急時の対応
利用者の病状の急変が生じた場合など、速やかに協力医療機関や主治医に連絡を行ってください。そのためにも、下記のとおり体制等を整えましょう。
- 緊急時の指揮命令系統や勤務時間など(昼・夜など)ごとの連絡先を決めておきます。
- 事前に救急対応マニュアル(施設・医療機関・家族等どこに連絡するか、応急対応の方法、医療機関職員への説明方法など)を作成してください。
- 救急対応マニュアルは、職員に周知し、定期的に訓練の機会を設けて、活用を徹底しましょう。マニュアルは随時見直しを図ります。
- 主治医と事前に相談(連絡先や状態変化時の想定など)を行うと同時に利用者及び家族の情報整理(病歴、服薬中の薬など)を行いましょう。
- 緊急度、重症度、時間帯を考慮し、適切な搬送手段(救急車、介護タクシー、施設が有する車両など)の確認を行いましょう。
- 応急手当に関する救命講習は日頃から最寄の消防署等と相談のうえ、職員が受講できる体制を整えましょう。
- 応急手当の備品を用意し、設置場所や使い方など職員に周知し、手当の方法をマニュアル化しておくようにしましょう。
退去
退去する際の流れや注意事項については、事前に入居者に説明をしておく必要があります。重要事項説明書などに記載し、利用者と事業者が相互に理解をしておく必要があります。事業者側の判断で、強制的に退去あるいは入居状態を継続させることのないように注意してください。
また、退去の可能性が出てきた場合には、当該利用者の実施主体や計画相談支援事業者等関係機関に早めに情報提供するとともに、退去後のことなどについて相談をしながら進めてください。退去に際しては、利用者の希望も踏まえたうえで、退去後の生活環境や援助の継続性に配慮し、関係機関と密接に連携しながら進めることが重要です。
体験利用制度
障がい者が入所施設や病院の外での生活に徐々になれていることにより円滑な地域移行が可能となるよう、グループホームへの入居を目的として、入所や入院中の段階からグループホームを利用できる「体験利用」という制度があります。本制度は、入所や入院中の障がい者だけでなく、家族と同居している障がい者でも利用することが可能です。
ただし、本制度を利用する場合は、通常のグループホーム利用時と同様に自治体による支給決定(1回あたり連続30日以内、年50日以内の制限あり。)を受ける必要があります。体験利用の支給決定を受けた利用者が入居した際は、他の利用者と同様、個別支援計画に基づき支援をする必要があります。
グループホームの運営について注意する点
グループホームの事業は、利用者が地域において共同して自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、当該利用者の身体及び精神の状況並びにその置かれている環境に応じて共同生活住居において入浴、排せつ並びに食事の介助、相談その他の日常生活上の支援を適切かつ効果的に行うものでなければなりません。
運営規程(基準第211条の3)
グループホームの事業者は、事業所の適正な運営及び利用者に対する適切なサービスの提供を確保するために、グループホームの事業所ごとに事業の運営についての重要事項に関する運営規程を定めておかなければなりません。
①事業の目的及び運営の方針
②従業者の職種、員数、及び職務の内容
③名称、所在地及び定員
(ユニットごとにも記載が必要。また定員には体験利用者も含まれる)
④グループホームの内容、利用者から受領する費用の種類及びその額
(内容とは、利用者に対する相談援助、入浴、排せつ、食事等の介助、健康管理、金銭管理に係る支援、緊急時の対応、就労先や障害福祉サービス事業者等との連絡調整等の日常生活を営むうえでの必要な支援をいいます。)
また、体験利用を行う場合や通過型の指定(東京都の場合)を受けたユニットはその旨を明記すること。
⑤受託居宅介護事業所に係る事業(外部サービス利用型事業所に限る)
⑥入居にあたっての留意事項
⑦緊急時における対応方法
⑧非常災害対策
⑨事業の主たる対象とする障害種別
(身体障害・知的障害・精神障害・難病等患者など)
⑩虐待防止のための措置に関する事項
(虐待の防止に関する従業者への研修実施、虐待防止委員会の設置、委員会での検討結果を従業者に周知徹底、虐待防止責任者の設置など)
⑪その他運営に関する重要事項
(地域生活支援拠点等である場合はその旨を規定し、拠点等の必要な機能のうち、満たす機能を明記すること)
サービス提供の記録(基準第53条の2)
グループホーム事業者は、利用者に対してサービスを提供した日、具体的な内容、利用者の状況等、その他必要な事項について日々記録をしたうえで、管理者やサービス管理責任者だけでなく、定期的に利用者本人の確認を受けるようにしましょう。
グループホームの支援体制
① バックアップ施設(基準第212条の2)
グループホームにおけるサービス提供体制の確保、夜間などにおける緊急時の対応などのため、他の障害福祉サービス事業者など(通所施設など)関係機関との連携及び支援の体制を確保しなければなりません。
このような支援を行う施設を「バックアップ施設」といい、緊急時等の支援体制が確立できると見込まれる施設との連携及び支援体制を整えることが必要です。
※遠距離の事業所、共同生活援助事業所、相談支援事業所及び居宅介護事業所などはバックアップ施設になじみません。
② 協力医療機関(基準第212条の4)
グループホーム利用者の病状の急変等に備えるため、事業者はあらかじめ協力医療機関を定めておかなければなりません。また、歯科医師機関も定めるように努めなければなりません。これらは、できるだけグループホームから近距離にあることが望ましいです。
③ 研修への参加(基準第212条)
世話人や生活支援員において、従事にあたり基準上資格を有している必要はありませんが、利用者の安全及び安心、支援の質の向上を図るためにも、研修参加の機会を計画的に確保しましょう。
特に障がい者支援がはじめての従事者においては、障がいに関する理解、権利擁護に関する理解、具体的な支援の方法(金銭管理、服薬管理、食事・介助など)などについて、従事する前に事業者による内部研修又は外部研修を行うようにしましょう。
④ 他の事業所との連携(基準第212条の2)
事業者は地域及び家庭との結びつきを重視した運営を行い、利用者が充実した日常生活が営めるよう、区市町村や利用者の就労先、障がい福祉サービス事業者などとの密接な連携、連絡調整などに努めましょう。
⑤ 地域との連携(基準第74条)
事業者は、事業者が地域に開かれたものとして運営されるよう、地域住民やボランティア団体等の連携及び協力を行う等の地域との交流に努めなければなりません。
⑥ 親族による勤務について
利用者の親族がグループホームの職員として勤務することは、他の利用者や第三者からみて公平性に欠けるととらえられる可能性があります。とくに直接処遇(世話人、生活支援員)職員については、利用者に対する接し方や対応に違いが生じないよう、勤務体制を含め配慮が必要です。
衛星管理等(基準第90条)
飲用する水や利用者の使用する設備(トイレ、浴室、洗面設備等)、衛生的な管理を行いましょう。例えば、タオルの使いまわしすることのないようにペーパータオルや利用者ごとのタオルをわけるなどの工夫をしましょう。
従業者が感染源とならないように感染症対策として、使い捨てのビニール手袋、マスクを用意し、消毒作業手順などについて、保健所の助言・指導を求め、密接な連携を確保しましょう。また、健康管理などに必要となる機械器具など(アルコール消毒液、マスク、手袋、体温計など)の管理を適正に行う必要があります。
グループホーム事業者は利用者の手洗い・うがいなどの励行に努め、グループホーム内の清潔・整理整頓を利用者と一緒に行っていく必要があります。
<感染症の発生及びまん延の防止等に関する取組みの義務化>
令和3年度報酬改定に伴い、感染症の発生及びまん延の防止等に関する取組みが義務化されました。経過措置3年間を置き、令和6年度から本格義務化となります。
- 感染症の発生及びまん延の防止等の委員会の設置・開催と検討内容の周知
- 感染症の発生及びまん延の防止等に関する指針の整備
- 従業者への研修の実施
- 訓練(シミュレーション)の実施
掲示物(基準第92条)
住居内の見やすい場所に利用申込者などのサービスの選択に資すると認められる以下の事項を掲示する必要があります。
- 運営規程の概要
- 従業者の勤務体制
- 協力医療機関、協力歯科医療機関
- その他の利用者等のサービスの選択に資すると認められる重要事項(緊急時の連絡先、苦情相談窓口、虐待等通報窓口、避難経路など)
運営規程や重要事項などは掲示することで家庭的な雰囲気が崩れてしまうこともあるかと思われますので、ファイルなどに綴じて見やすい場所に設置することも可能です。ただし、緊急時の連絡先や苦情相談窓口など、利用者にとって重要かつ掲示がないと認識自体されにくい連絡先については、見やすい場所に掲示する必要があります。
虐待防止について(基準第40条の2)
利用者に対する虐待及び不適切な支援は、利用者の身体及び人格を傷つける行為であるとともに、障がい者(児)施設や居宅介護などの障がい福祉サービス事業所およびこれらを運営する法人に対する社会的信用を大きく損なわせるものです。
事業者は、利用者に対する虐待を早期に発見して迅速かつ適切な対応をしなければなりません。虐待についての取組みでは、以下のことを徹底するようにしましょう。
① 利用者の人権擁護・虐待防止のための体制
- 運営規程への定めと職員への周知
- 虐待防止マニュアル等の作成、通報先等掲示物の周知徹底
- 虐待防止の責任者を設置する等の体制整備
② 人権意識、知識や技術向上のための研修の実施
- 全職種を対象とした虐待防止や人権意識を高めるための研修
- 障害特性を理解し適切に支援ができるような知識と技術を獲得するための研修
- 事例検討
③ 虐待防止のための取組み
- 管理者による日常的な支援場面の把握、風通しの良い職場作り
- 全職種の職員に対する虐待防止マニュアルの周知徹底
- 全職員の職員に対する定期的な虐待防止チェックリストの実施とその活用
④ 通報義務
障がい者虐待(疑い含む)については、障害者虐待防止法に基づき区市町村へ通報する義務がありますので、必ず区市町村に通報したうえで行政と連携して対応するようにしましょう。
※令和3年度報酬改定に伴い、虐待防止・権利擁護に関する以下の取組み義務化されました(経過措置1年間を置き、令和4年度から本格義務化になります。)
- 虐待防止委員会の設置・開催と検討内容の従業者周知
- 虐待防止等のための責任者の設置
- 従業者への研修の実施
秘密保持(基準第36条)
グループホーム事業者は、業務上知り得た利用者や家族の情報を漏らさないような対応が必要です。従業者や管理者であった者が業務上正当な理由なく情報をもらずことがないよう必要な措置を講じなければなりません。
また、他の事業者に対して、利用者や家族に関する情報を提供する場合には、あらかじめ文書により利用者や家族の同意を得る必要があります。
利益供与の禁止(基準第38条)
グループホーム事業者は、利用者や家族、従業者、他の障がい福祉サービス事業者などから、入居に係る代償として金品その他財産上の利益を供与・収受してはなりません。
苦情解決(基準第39条)
グループホーム事業者は、苦情を受け付ける窓口の設置、苦情解決の体制及び手順など、必要な措置を講じる必要があります。措置の概要を事業所に掲示するなどし、苦情を受け付けた場合は苦情の内容を記録しなければなりません。
苦情がサービスの質の向上を図るうでの重要な情報源であるという認識に立ち、サービスの向上に向けた取組みを行うことが必要です。
利用者などからの苦情に関し、指定権者や自治体の行う調査に協力するとともに、指導や助言を受けた場合は、これに従い必要な改善を行うようにしましょう。
事故防止対策(基準第40条)
グループホーム事業者は、事故などの発生を防止するために、以下のような対策を徹底するようにしましょう。
- 利用者に対する支援状況の確認
- ヒヤリハット事例の分析
- 事故防止マニュアルの作成・検討
- 職員研修の実施
以下のような事故などが発生した場合は、速やかに必ず行政へ報告することが重要です。事業者側の責任や過失に関係なく報告する必要があります。
- 死亡事故(誤嚥等によるものなど)
- 入院を要した事故(持病による入院等は除く)
- 医療機関での治療を要する負傷や疾病を伴う事故
- 薬の誤与薬(その後の経過に関わらず事故が発生した時点で要報告)
- 感染症の発生
- 事件性のあるもの(職員による暴力事件等)
- 保護者や関係者とのトラブル発生が予想されるもの
- 運営上の事故の発生(不正会計処理、送迎中の交通事故、個人情報の流出等)
- その他特に報告の必要があると事業者が判断したもの
報告の様式はとくに決まっていませんが、必要な情報を盛り込み、速やかにメールなどで報告します。緊急の際は電話連絡をします。事故などに応じて、保護者、市区町村、警察、消防、保健所などへの連絡も必要になります。
また、事故が起こってしまった場合には、事故の状況や事故に際して採った処置について記録しなければなりません。なお、利用者に対して賠償すべき事故が発生した場合は損害賠償を速やかに行わなければなりません。
業務継続計画の策定など(基準第33の2条)
グループホームは感染症や災害が発生した場合でも、利用者が継続してサービスの提供が受けられるよう、サービス提供を継続的に実施し、及び非常時の体制で業務再開を図るための「業務継続計画(BCP)」を策定しなければなりません。
※令和3年度の報酬改定に伴い、「業務継続計画」の策定その他の取組みが義務化されました(経過措置3年間を置き、令和6年度から本格義務化されます)。
具体的には、(ア)感染症に係る業務継続計画、及び(イ)災害に係る業務継続計画を策定し、当該計画に従って、職員の研修及び訓練(シミュレーション)を年1回以上実施することが望ましいとされています。
業務継続計画の内容としては、(a)平時からの備え・対応(ライフライン途絶時の対応・必要品の備蓄)、(b)緊急体制を発動させる基準や初動対応、(c)関係機関や地域との連携・情報共有などがあげられます。
身体拘束等の禁止(基準第35条の2)
障害者虐待防止法では「正当な理由なく障害者の身体を拘束すること」は身体的虐待にあたるとされています。
基準では、サービス提供にあたって、利用者または他の利用者の生命または身体の保護のため、緊急またはやむを得ない場合を除き、身体拘束等をしてはいけないとされています。
やむを得ず身体拘束等を行う場合は、その態様及び時間、利用者の心身の状況、やむを得ない理由、その他必要な事項を記録しておく必要があります。
緊急やむを得ない場合とは、支援の工夫のみでは十分に対応できないような、一時的な事態に限定されます。緊急やむを得ず身体拘束を行う場合には、3つの要件(切迫性、非代替性、一時性)がありますが、すべてに該当する場合であっても、身体拘束の判断は組織的かつ慎重に決定を行います。
また、手続きとしては、①個別支援計画会議等により組織として慎重に決定すること、②個別支援計画にも身体拘束の態様・時間・緊急やむを得ない理由の記載をすること、③上記手続きの中で、ご家族や利用者本人に十分説明をし、了解を得ることが必要です。
※令和3年度報酬改定に伴い、身体拘束の適正化に関する以下の取組みが義務化されました(経過措置1年間を置き、令和4年度から本格義務化となります)。
- 身体拘束を行う場合、その態様、時間、状況ならびに理由等の記録
- 対策を検討する委員会の定期的な開催と、検討結果の従業者への周知
- 身体拘束の適正化に関する指針の整備
- 従業者への研修の実施
会計区分(基準第41条)
経理は事業所ごとに区分するとともに、グループホーム会計とその他の事業の会計を区分しなくてはなりません。
記録の整備(基準第75条)
事業者は従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録を整備しておかなければなりません。また、以下については、その提供した日から5年間は保存しなければなりません。
- 個別支援計画
- サービス提供記録
※管理者、サービス管理責任者、利用者による定期的な確認が必要です。
※報酬算定に必要な事項の記録がない場合、報酬返還となることがあります。
※利用者に係る個別・具体的な内容については、ケース記録や業務日誌等に記載し、内部資料として従業者間で情報共有を図るようにしましょう。その際、重要な個人情報を含む内容になる可能性があるため、施錠管理を徹底するようにしましょう。
- 身体拘束等の記録
- 苦情の内容等の記録
- 事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録
事業廃止・休止に関する注意点
事業所を廃止や休止する場合は、十分に配慮・注意しなければなりません。
① やむを得ない事情により、利用者にグループホームを退去していただく場合には、利用者や保護者に状況などを十分に説明することが重要です。また、利用者の転居先の確保が必要となるため、退去者の転居先をきちんと調整する必要があります。
② 補助金を利用して建物を建築や改修している、または備品を購入している場合には、財産処分が制限されていることがあります。これは、補助をした官公庁の長の承諾なしに建物を処分することを禁じているものです。財産処分には、補助金等の交付目的に反しての使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する、取り壊すなどがあてはまります。
事業所を廃止する場合には、廃止日の1ヶ月前までに事業所の廃止届を指定権者に提出する必要があります。事業所を廃止するにあたっては、利用者の行き先の調整、関係機関との調整などが必要になります。
<参考文献>
- 障害者総合支援法事業者ハンドブック(指定基準編)
- 東京都障害者グループホーム運営の指針(令和3年度版)
グループホームの運営は人員配置の複雑さもあって非常に難しいものとなっています。利用者さんが日々の生活をおくる場所になるため、プライバシーへの配慮なども必要になりますし、夜間の対応も必要になってくるでしょう。
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