就労継続支援B型の開業時の物件選びのポイント

就労継続支援B型の指定申請を経て、就労継続支援B型を開業するためには、まず就労継続支援B型として使用する物件が決まらなければ開業手続きを始めることができません。

ただ、就労継続支援B型として使用できる物件は、ある程度の広さがあれば良いというものではなく、就労継続支援B型としての設備要件を備えていなければなりませんし、就労継続支援B型は障がいをお持ちの方が集う場所にもなるわけですから消防法を中心とした様々な規制がかけられています。

そして、就労継続支援B型の指定を取るためには、これらの設備要件や消防法等の規制に適合した物件でなければいけません。指定申請時にこれらの設備要件や規制に適合しているかどうかを審査されることになります。

就労継続支援B型の開業に適した物件

就労継続支援B型は、想定している生産活動の内容にもよりますが、どちらかといえば郊外の比較的家賃の低い物件で開業されているケースが多いようです。やはり毎月の家賃は低く抑えたいですので、駅近くの物件というよりは郊外であっても家賃が低い物件を選び、利用者さんの通所には送迎で対応している事業所さんが多いように思います。

市街化調整区域での就労継続支援B型の開業

就労継続支援B型は、原則として「市街化調整区域」では開業することはできません。市街化調整区域というのは、計画的に市街化させないようにしている地域で、無秩序な市街地拡大を防ぐこととされた地域です。そのため、市街化調整区域では、建物の建て方や建てられる規模など多くの制限がかけられていて、就労継続支援B型も開業することはできないことになっています。

そのため、候補物件が決まった場合に一番最初にすることは、当該候補物件がある自治体の都市計画課などの担当部署で市街化調整区域かどうかを調査するようにしましょう。

就労継続支援B型で使用する物件はビルテナントか戸建てか

就労継続支援B型の場合は、駅近くの物件よりも比較的家賃の安い郊外物件が選ばれるケースが多いようです。就労継続支援B型が想定している生産活動の内容にもよりますが、一般的にビルテナントの1階店舗は家賃が比較的高い物件が多く、開業後の就労継続支援B型の運営収支を考えると物件選びの対象からは外して考えた方が無難かと思います。

就労継続支援B型の周辺の環境

就労継続支援B型では利用者さんの工賃を支払うために生産活動が行われるわけですが、その生産活動は様々であり、その生産活動の内容によって当該就労継続支援B型に適した周辺の環境も異なってくるでしょう。

例えば、就労継続支援B型の生産活動として喫茶店を考えているなら就労継続支援B型の事業所の周辺は住宅街が好ましいかもしれませんし、製造業の下請けを請け負うような生産活動を考えているなら工場が集まる準工業地域のようなエリアがいいのかもしれません。

そのため、就労継続支援B型の物件を選ぶ際には事前にどのような生産活動を考えているかを十分考えてから物件選びをはじめると具体的にどのような物件を選べばいいのかイメージがつき易いかもしれません。

就労継続支援B型で使用する物件の床面積(建築基準法)

建築基準法が改正され(令和元年6月27日施行)、就労継続支援B型として使用する部分の床面積が200㎡を超える場合は、建築基準法上の「用途変更」という確認申請の手続きが必要になります。

この建築基準法の改正前は、就労継続支援B型として使用する部分の床面積が100㎡を超える場合に用途変更の確認申請手続きが必要でしたが、この時の改正により面積要件が緩和されて就労継続支援B型として使用する部分の床面積が200㎡を超える場合には用途変更の確認申請手続きが必要となりました。

そのため、就労継続支援B型として使用する物件を選ぶ際には、200㎡以下の物件を選ぶべきでしょう。用途変更の確認申請手続きには、原則として「確認済証」と「検査済証」が必要となりますし、用途変更のような確認申請手続きはかなり手間のかかる手続きですので建築士への報酬も高額になるのが一般的のようです。

他方、就労継続支援B型として使用する物件の床面積が200㎡以下の場合は、用途変更の確認申請手続きは不要です。

ただし、就労継続支援B型として使用する部分の床面積が200㎡以下であって用途変更の確認申請手続きが不要であったとしても、建築基準法に適合した物件であることは必要です。

そのため、建築基準法に適合した物件であることを確認するために、ここでもやはり「確認済証」と「検査済証」の写しを求められる自治体がほとんどです。自治体によっては「確認済証」だけを求められたり、代替資料として「建築計画概要書」や「建築基準法に基づく確認済証等の証明書」などで代替できる場合があります。

さらに、戸建て住宅を改修して就労継続支援B型の事業所として使用するような場合、都市計画区域外の木造住宅である場合は、そもそも新築時に確認申請手続きが不要である場合もあるので、「確認済証」や「検査済証」が残っていないからといって諦めるではなく、そういった物件でも就労継続支援B型の事業所として使用することができるのかどうかを自治体に確認をとるようにしましょう。

また、「確認済証」や「検査済証」がない場合代替資料によっても建築確認申請を経たことを証明できない場合には、自治体にもよりますが、建築士等による「適合証明書」を提出しなければなりません。この場合も建築士等への報酬を支払うのが一般的のようです。

以上より、就労継続支援B型として使用する物件を選ぶ際には、用途変更手続きが必要でない物件、つまり就労継続支援B型として使用する部分の床面積(使用面積)が200㎡以下のものを選ぶようにしましょう。

就労継続支援B型の防火対象物使用開始届(消防法)

就労継続支援B型の指定申請時には、消防法に適合した設備が備え付けられていることを証明する「防火対象物使用開始届」が必要になります。自治体によっては就労継続支援B型の指定申請時に「防火対象物使用開始届」の提出までは求められない自治体もあるようですが、火災等が起こった場合に責任を問われるのは事業所ですので、消防法に適合した設備を備え付けるようにしましょう。

ただ、消防法は非常に複雑で、消防設備の設置工事もただ単に設備の備え付け工事をすればいいというものではありません。消防設備の工事前には事前相談を経て「設計届(事前の届出)」を提出し、工事完了後は設備が正常に作動する検査を実施した「設置届(事後の届出)」が必要になります。この届出を経た後に消防署による現地調査が行われ、そこで消防設備が正しく設置されていると確認されて、ようやく「防火対象物使用開始届」に消防署による合格印が押されます。そして、この合格印が押された「防火対象物使用開始届」を添付書類として指定申請をすることになります。

就労継続支援B型の検討されている方の中には、消防設備業者に工事を依頼せずにご自身で工事をしようとされる方もいらっしゃいますが、消防設備の工事には電気系統の工事も絡みますし、そのための配線の配置図の作成も必要になります。また、工事後は備え付けた消防設備が正常に作動することを検査した着工届を提出することになりますが、検査機器も持たない素人では動作確認をすることは現実的に難しい作業となります。

ですので、消防設備業者に依頼するとどうしても費用がかかってしまいますが、消防設備の工事には消防設備士の資格をもった消防設備業者へ依頼するようにしましょう。

就労継続支援B型の事業所は障がいをお持ちの方が働く場所ですので、火災などがあった際には一般的に逃げ遅れてしまいがちな方達が働いています。そのため、利用者さんの命を守るためにも厳しい規制がかけられているわけですし、いい加減な工事をしていては何かあった際には事業所が責任を問われてしまいます。

就労継続支援B型の開業の際の消防法のポイント

  • 就労継続支援B型・・・消防法施行令別表第一の6項ハ(5)に該当
6項 ⑴ 老人デイサービスセンター、軽費老人ホーム(ロ⑴に掲げるものを除く。)、
老人福祉センター、老人介護支援センター、有料老人ホーム(ロ⑴に掲げるものを
除く。)、老人福祉法第5条の2第3項に規定する老人デイサービス事業を行う施設、
同条第5項に規定する小規模多機能型居宅介護事業を行う施設(ロ⑴に掲げるものを
除く。)その他これらに類するものとして消防法施行規則第5条第8項で定めるもの
⑵ 更生施設
⑶ 助産施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童養護施設、児童自立支援施設、
児童家庭支援センター、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第6条の3第7項に規定する
一時預かり事業又は同条第9項に規定する家庭的保育事業を行う施設その他これらに
類するものとして消防法施行規則第5条第9項で定めるもの
⑷ 児童発達支援センター、情緒障害児短期治療施設又は児童福祉法第6条の2第2項に
規定する児童発達支援若しくは同条第4項に規定する放課後等デイサービスを行う施設
(児童発達支援センターを除く。)
⑸ 身体障害者福祉センター、障害者支援施設(ロ⑸に掲げるものを除く。)、地域活動
支援センター、福祉ホーム又は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための
法律第5条第7項に規定する生活介護、同条第8項に規定する短期入所、同条第12項に規定
する自立訓練、同条第13項に規定する就労移行支援、同条第14項に規定する就労継続支援
若しくは同条第15項に規定する共同生活援助を行う施設(短期入所等施設を除く。)
  • 就労継続支援B型の事業所として戸建て物件を使用する場合、物件の構造によっては2階部分からの避難器具の設置が必要になる場合があります。

当事務所では、就労継続支援B型の開業の際に消防設備工事が必要な場合は、消防設備士と一緒に消防署と協議を行います。ここで消防署と丁寧に協議をしておかないと工事後の現地調査の際に否認され、工事をし直さなければならなかったり、防火対象物使用開始届が取れない・・・ということになってしまいます。

そのため、就労継続支援B型の開業支援を依頼する場合は、開業支援の実績のある行政書士に依頼するようにしましょう。

就労継続支援B型の近隣住民への説明

就労継続支援B型の開業の際には近隣住民への説明が必要です。

就労継続支援B型の開業時に近隣住民への説明会を開催することは法律的に求められているわけではありません。しかし、これから長くその場所で就労継続支援B型を行っていくわけですから、近隣住民の方とは良い関係を築いておくようにしましょう。

就労継続支援B型の送迎用駐車場

就労継続支援B型では送迎を行うのが一般的です。就労継続支援B型では、比較的障がいの程度が重い利用者さんもいらっしゃいますので、送迎だけでなく何かあった際にも車両は準備しておいた方が良いでしょう。そのため、就労継続支援B型の物件を探す際には駐車場のことも念頭に入れて探すようにしましょう。

就労継続支援B型の設備基準

就労継続支援B型を開業するには、就労継続支援B型として使用する物件が就労継続支援B型の設備基準をクリアしていることが必要です。

就労継続支援B型の事前協議の際に、各部屋の面積が記載された間取り図面をもって自治体の担当部署と協議を行い、間取りを確定させます。

設 備     要  件
訓練作業室 サービス提供に支障のない広さを備えること。大阪市の場合は、
利用者1人当たり約3.0㎡必要。
就労継続支援B型事業は、最低定員20名。
訓練指導室の最低面積は60㎡(20名×3㎡)が必要。
相談室 プライバシーに配慮していること。
多目的室 相談室と兼務可能。
事務室 鍵付き書庫を設置すること。
洗面所・トイレ 洗面所(手指洗浄)はトイレ内手洗いとは別々であること。

就労継続支援B型の賃貸借契約を締結する際の注意点

就労継続支援B型の物件の賃貸借契約を締結する際には、賃貸の目的を記載する箇所に「障がい福祉事業」や「就労継続支援事業」として使用する旨を記載します。また、定期賃貸借ではなく自動更新する旨の賃貸借契約とします。この点でも就労継続支援B型の物件として正式に賃貸借契約を締結する前に、賃貸借契約の(案)でかまいませんので、事前に自治体に確認をとっておくようにしましょう。

さらに、就労継続支援B型として使用する物件は、居抜き物件でない限り、何かしらの消防設備工事を施工しなければいけないケースがほとんどですので、賃貸借契約を締結する前に消防設備工事を施工することの大家さんの承諾を得ておくようにしましょう。

消防設備によっては建物全体の工事になってしまう場合もあるため、その場合は大家さんと借主のどちらが費用負担するかを事前に話をしておく必要があります。

就労継続支援B型で使用する物件に対する条例の規制(福祉のまちづくり条例、バリアフリー条例など)

都市計画法や建築基準法、消防法以外にも自治体によっては条例で規制がかけられている場合があります。例えば、京都府の「福祉のまちづくり条例」や京都市の「バリアフリー条例」などです。就労継続支援B型を開業する際には、これらの条例にも適合している必要があります。

以上のように、就労継続支援B型の物件探しは様々な点に注意しながら就労継続支援B型として使用できる物件を探していくことになりますが、おおまかな注意点としては以下のような点になるでしょう。

不動産仲介業者さんへ就労継続支援B型の物件探しを依頼する際の注意点
  • 就労継続支援B型を開業するという賃貸の「目的」を伝える
  • 就労継続支援B型として使用する部分の面積が「200㎡以下」のものを探す
  • 就労継続支援B型として使用する物件に「確認済証」と「検査済証」があるかどうかを確認してもらう。無い場合には代替資料でいけるか自治体に確認します。
  • 就労継続支援B型として使用する物件の賃貸借契約を締結するのは自治体との「事前協議(事前相談)」が終わってからにします。事前協議前に締結してしまうと就労継続支援B型として使用できない物件であった場合、仲介手数料や家賃が無駄になります。
  • 内装工事の費用などが高額となるため、できればスケルトンではなく居抜き物件を探す。また、自動火災報知機などの大掛かりな消防設備工事が必要な物件は避ける。

上記の注意点を満たしていても指定が取れるというわけではありません。就労継続支援B型の物件選びは事案によりケースバイケースといえますので、必ず事前に自治体の担当部署に確認をとるようにしましょう。


就労継続支援B型の開業で物件探しは非常に重要です。就労継続支援B型の候補物件の目途がついていなければ話が前に進みません。また、すでに開業している就労継続支援B型の事業所は新しい事業所開設を見据えて常日頃から就労継続支援B型として使用できる物件を探しています。就労継続支援B型として使用できる良い物件に出会えるように物件探しは常にアンテナを張っておくようにしましょう。

当事務所では、正式に就労継続支援B型の指定申請のご依頼をいただける場合に限りますが、就労継続支援B型として使用する候補物件が消防法に適合したものかどうか、就労継続支援B型の設備要件を満たしているかどうか等の物件調査も行っております。就労継続支援B型として使用する物件を確定してしまう前に当事務所へお問い合わせください。

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