就労継続支援B型では、「訓練等給付費(利用者負担分含む)」による収益と「生産活動」による収益と2つの売上があるのが特徴です。そのため、就労継続支援B型の実地指導では、「訓練等給付費」の収支と「生産活動」の収支の両方の収支が明確に区分されているかどうかをチェックされることになります。
ただ、就労継続支援B型の実地指導といっても、基本的には「指導」を目的に入ってくるわけですから、普段から就労継続支援B型の制度や人員基準、設備基準、運営基準を正しく理解して、必要な帳票類や記録類を普段から整備しておけば慌てる必要はありません。
また、就労継続支援B型の実地指導での必要書類を理解することは、就労継続支援B型の人員基準、運営基準、設備基準を中心とした関係法令を正しく理解することにも繋がるでしょう。
そのため、普段からコンプライアンスを意識した適正な就労継続支援B型の事業所運営を心掛けるようにしてください。
以下は、就労継続支援B型の実地指導当日に準備しておく書類一覧です。自治体によって若干の違いはありますが、概ね同じです。普段から必要書類を把握し、実地指導の通知が届いてから慌てるのではなく、普段から整備しておくようにしましょう。
就労継続支援B型の実地指導当日に用意しておく準備書類一覧
就労継続支援B型の実地指導当日に準備しておく書類は上記のようになります。自治体によって若干の違いはありますが、上記の一覧表を参考にして普段から帳票類を整備しておくようにしましょう。
※上記以外の書類も実地指導当日は確認されることがあります。
【運営に関するもの】就労継続支援B型の実地指導で必要となる書類
就労継続支援B型の実地指導で準備しておかなければいけない必要書類一覧は上記のようになります。就労継続支援B型の運営に関する帳票類には、労務関係の書類や人員配置に関する書類も含まれます。
1.就労継続支援B型事業所の運営規程
就労継続支援B型の運営規程です。指定申請時から内容を変更している場合には、最新の運営規程を準備するようにします。運営規程を変更するには指定権者への変更届が必要になりますので、必ず変更の手続きを経て、変更届の副本(控え)を保管するようにしましょう
2.就労継続支援B型事業所の勤務予定実績表(勤務形態一覧表)
就労継続支援B型の勤務予定実績表は人員配置基準をクリアしているかどうかを判断するために非常に重要な書類です。この勤務予定実績表(勤務形態一覧表)を整備していない事業所もたまに見受けられますが、人員配置を管理できてないということですので、人員配置基準をクリアしているかどうか疑われてしまいます。
勤務予定実績表(勤務形態一覧表)は就労継続支援B型を運営する上で必須の書類になりますので、毎月の「予定」と「実績」を必ず作成し、ファイリングして保管するようにしましょう。
<就労継続支援B型の勤務予定実績表(勤務形態一覧表)のサンプル>
就労継続支援B型の勤務予定実績表(勤務形態一覧表)は、「予定」と「実績」を必ず「毎月」作成し、ファイリングして保管するようにしましょう。
勤務予定実績表(勤務形態一覧表)の「予定」については出勤予定のシフト表をもとに作成し、「実績」については出勤簿やタイムカードなどのスタッフの実際の勤務状況がわかる資料をもとに作成するようにしましょう。
「毎月」の勤務の「予定」と「実績」を作成し、人員配置が就労継続支援B型で求められる人員配置基準をクリアしているかどうかを確認し保管します。
そのため、就労継続支援B型の人員配置基準を正しく理解することが大切です。就労継続支援B型の人員配置基準をクリアしていない場合には、「サービス管理責任者欠如減算」や「サービス提供職員欠如減算」に該当し、減算適用となってしまう可能性があります。
<就労継続支援B型の人員配置基準>
指定基準に定める人員配置基準を満たしていない場合、「その翌々月」から「人員欠如が解消されるに至った月」までの間、サービス管理責任者欠如減算が適用されます。
- 減算適用1月目から4月目は、所定単位数の70%を算定(30%の減算)
- 減算適用5月目以降は、所定単位数の50%を算定(50%の減算)
指定基準に定める人員配置基準を満たしていない場合、1割を超えて欠如した場合には「その翌月から」「人員欠如が解消されるに至った月まで」の間、1割の範囲内で欠如した場合には「その翌々月から」「人員欠如が解消されるに至った月まで」の間、サービス提供職員欠如減算が適用されます。
- 減算適用1月目から2月目は、所定単位数の70%を算定(30%の減算)
- 減算適用3月目以降は、所定単位数の50%を算定(50%の減算)
3.就労継続支援B型事業所に勤務する従業者の勤務状況等の確認ができる書類(タイムカード・出勤簿など)
就労継続支援B型の事業所で勤務する従業者(スタッフ)の勤務状況がわかる資料(タイムカードや出勤簿など)を準備します。
タイムカードや出勤簿などの実際の勤務状況がわかる書類と上記の勤務予定実績表(勤務形態一覧表)の「実績」記録との整合性をチェックすることによって本当に勤務していたかどうかを確認されます。勤務形態一覧表(とくに勤務「実績」表)は出勤簿などのスタッフの勤務状況がわかる書類をもとに正しく記録するようにしましょう。
4.就労継続支援B型事業所の従業者の雇用状況等の確認ができる書類(雇用契約書・労働条件通知書など、就業規則)
就労継続支援B型の実地指導では、労務や社会保険関係の帳票類もチェックされます。雇用契約書や労働条件通知書などを確認することで、会社と雇用関係にあるスタッフを配置しているかどうかを確認するためです。
就業規則については、常勤か非常勤かの根拠規定が就業規則になります。例えば、就業規則で週所定労働時間が40時間と記載されていれば、常勤か非常勤かの基準は「週40時間」を勤務するかどうかになります。そのため、1週間の所定労働時間の記載を確認するようにしましょう。
事業所の所定労働時間が「週35時間」なのに就業規則では「週40時間未満」と記載されている事業所も見受けられますが、「週40時間未満」という記載では週35時間か週39時間か不明なので、明確に「週35時間」と記載する方が無難でしょう。
また、福祉・介護職員処遇改善加算を算定しているのであれば就業規則の賃金規定部分や就業規則とは別の賃金規程も必須の書類になりますので、キャリアパスプランやキャリアパス規程と一緒に保管するようにしましょう。
5.就労継続支援B型に勤務する従業者の資格証
就労継続支援B型に勤務するスタッフ(管理者、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員など)で、研修の終了証や国家資格などを有するスタッフがいる場合は、それらの資格証の写しを保管するようにしましょう。
とくにサービス管理責任者の実務経験証明書や研修修了証の「原本」は、必ずサービス管理責任者自身が大切に保持し、就労継続支援B型の事業所では、その写し(コピー)を保管するようにします。
スタッフの履歴書や労務関係の帳票類をまとめた「従業者台帳」と一緒に保管しておくとわかりやすいと思います。
6.就労継続支援B型に勤務する従業者の守秘義務が確認できる書類(誓約書・就業規則・雇用契約書など)
就労継続支援B型の事業所で働くスタッフには、利用者さんの情報や事業所の情報を外部に漏らさないようにする守秘義務があります。そのため、スタッフを雇用する際には「機密保持の誓約書」を提出してもらいます。
誓約書には就労継続支援B型の事業所で働いている期間だけでなく、退職後も秘密情報を第三者に漏らさないような一文を入れておくようにしましょう。
また、誓約書だけでなく、就業規則や雇用契約書にも機密情報や個人情報の取扱い方法を明記しておきましょう。
よくある指摘事項
- 事業所の従業者や管理者が退職した後においても、業務上知り得た利用者またはその家族の秘密を漏らすことがないよう必要な措置をとっていない。
- 法人代表者が管理者の場合など、管理者の秘密保持に係る措置がとられていない。
7.就労継続支援B型に勤務する従業者の健康状態の把握が確認できる書類(健康診断結果の写しなど)
就労継続支援B型の従業者は、労働安全衛生法に基づいて「雇用時」と雇用後は「年1回」の健康診断を受診する必要があります。常勤者はもちろんですが、所定労働時間の3/4以上の時間を勤務する非常勤者も事業所の費用で受診する必要があります。
健康診断については、受診したことを記録しておくとともに、事業所の費用で受診したことを証明するために、病院からもらった領収書を保管するようにしましょう。
8.就労継続支援B型に勤務する従業者の給与の支払いが確認できる書類(賃金規程、賃金台帳、給与明細等)
就労継続支援B型に勤務するスタッフの賃金台帳や給与明細書を保管しておきましょう。
とくに福祉・介護職員処遇改善加算を算定している場合は、どの項目で賃金改善を行っているかを確認される場合があります。指定権者に提出した福祉・介護職員処遇改善加算の「計画書」と「実績報告書」は必ず保管しておくようにしましょう。当事務所の就労継続支援B型の事業所様には、福祉・介護職員処遇改善加算については専用のファイルに保管していただいています。
9.就労継続支援B型の業務日誌
就労継続支援B型の業務日誌については決められた書式はありませんが、当事務所の顧問先様には、以下のような就労継続支援B型の業務日誌の雛型をお渡しして毎日記録してもらっています。
<就労継続支援B型の業務日誌サンプル>
就労継続支援B型の事業所の1日の動きがわかるように記録を残します。後追いができるように記録を残すことによって業務の効率化にもつながるでしょう。
当事務所の顧問先事業所様には、役所に確認した事項がある場合には、業務日誌の余白に①確認した日時、②確認した内容、③対応してくれた役所の担当者、④確認したスタッフの名前、を記録してもらうようにしています。就労継続支援B型の実地指導で疑義が出た場合に、この記録が事業所を守ってくれることもあるからです。
10.就労継続支援B型の各種マニュアル
就労継続支援B型の事業所では各種マニュアルを整備しておく必要があります。ネットで落ちているマニュアルをコピーしてファイリングしているだけでは緊急時に使えませんので、必ず事業所実態に即したマニュアルを整備しておく必要があります。
- 事故対応マニュアル
- 緊急(急病)時対応マニュアル
- 感染症対策マニュアル
- 苦情相談対応マニュアル
- 虐待防止マニュアル
当事務所では、就労継続支援B型の顧問先様には、上記の各マニュアルを事業所に合うようにカスタマイズして作成し提供しております。マニュアルを上手に活用して、事故が起きないように、起きたとしても迅速に冷静に対応できるように準備しておくようにしましょう。
11.就労継続支援B型の苦情(要望・相談)解決に関する記録
就労継続支援B型のサービス提供により苦情が発生した時のために、苦情相談対応マニュアルを整備し、苦情(要望や相談も含む)があった場合は、その記録を残し、改善に向けた取り組みに活かせるようにしましょう。
12.就労継続支援B型の事故・ひやりはっと報告に関する記録
事故・ひやりはっと事例が発生した際は、適切に記録し、その原因を解明し、再発を防ぐための対策を講じるようにしましょう。ひやりはっとの事例は定期的に会議で検討するなどして大きな事故にならないように対策を取るようにします。
よくある指摘事項
- 障がい福祉サービスの提供にあたり事故が発生した際に、都道府県・市町村・当該利用者の家族などへの連絡を忘れてしまっていた。
13.就労継続支援B型の研修に関する記録(人権研修、内部研修、外部研修)
利用者の人権擁護、虐待防止の観点から、従業者に対し1年に1回以上、人権に関する研修を実施し記録を残すようにしましょう。
14.就労継続支援B型の車両運行記録、車検証の写し(送迎サービスを実施の場合)
就労継続支援B型の事業所で送迎サービスを実施している場合は、車両運行記録と車検証の写しが必要です。また、事故が起こったときのために損害保険には加入するようにしましょう。
15.就労継続支援B型事業所と協力医療機関等との契約書、連携記録書など
「協力医療機関との契約書(誓約書、協定書)の写し」は就労継続支援B型の指定申請の添付書類ですが、原本を保管しているかどうかを確認されます。指定時にお医者さんに押印していただいた協力医療機関との契約書(誓約書、協定書)は必ず大切に保険しておくようにしましょう。
16.就労継続支援B型の平均利用者数調書(平均利用者数計算シート)
就労継続支援B型の人員配置基準は、「平均利用者数」をもとに計算します。そのため、毎月の利用者数の記録が大切になりますが、その記録が「平均利用者数調書」です。
当事務所では、大阪府が提供している平均利用者数・人員計算表を顧問先事業所様用にカスタマイズし、毎月記録できるように月ごとの「平均利用者数計算シート」として提供いたしております。この「平均利用者数計算シート」で毎月の平均利用者数を管理することで適切な人員配置も可能になります。
<就労継続支援B型の平均利用者数計算シートのサンプル>
上記のように就労継続支援B型の「平均利用者数」は、就労継続支援B型の人員配置基準の計算のもとになるものです。そのため、就労継続支援B型の人員配置基準の正しい理解が必要です。
<就労継続支援B型の人員配置基準>
就労継続支援B型の人員配置には、「従業者配置7.5:1」と「従業者配置10:1」の2パターンがあります。これは「利用者数」に対しての「従業者数」が7.5:1の配置割合になるか10:1の配置割合になるかどうかの違いです。
そして、ここでいう「利用者数」は、原則として「前年度の平均利用者数」のことをいいます。ただ、新規で指定をとった場合は「前年度(前年4月1日~今年3月末日)」の実績がまだありませんので、「前年度」の実績ができるまでは、以下のような方法で「利用者数」を計算することになります。
指定時から6ヶ月未満の実績しかない
利用定員の90%
指定時から6ヶ月以上1年未満の実績ができた
直近6ヶ月間の「延利用者数」÷直近6ヶ月間の「開所日数」
指定時から1年以上の実績ができた
直近1年間の「延利用者数」÷直近1年間の「開所日数」
指定時から1年以上経過し、前年度(前年4月1日~今年3月31日)の実績ができた
前年度(前年4月1日~今年3月31日)の「延利用者数」÷前年度(前年4月1日~今年3月31日)の「開所日数」
以上のように、就労継続支援B型の人員配置では、「平均利用者数」を計算し、それをもとに職業指導員や生活支援員の「必要職員数」を計算することになります。
17.就労継続支援B型の非常災害対策に関する書類
- 避難訓練実施記録
- 消防計画(消防避難マニュアル)
- 水害時の避難確保計画
就労継続支援B型に限ったことではありまんが、事業所は非常災害に備えるため、少なくとも年2回以上定期的に避難、救出その他必要な訓練を行うようにしましょう。また、風水害等自然災害に備えるため、適切に避難訓練等を行うことが必要です。
消防(避難)訓練を実施した際には、その記録を作成・保管するようにしましょう。当事務所では消防訓練(避難訓練)を実施した際は、その実施の様子を撮影した写真をとっておき、実施記録と一緒に保管しておくことをお勧めしています。
18.生産活動に係る「工賃」の支払い根拠が確認できる書類(賃金規程、工賃規程、請負先との契約書など)
就労継続支援B型の事業所では、生産活動を行い、その生産活動の売上から利用者さんへ工賃を支払うことになります。そのため、利用者さんに工賃を支払うルールとして、工賃規程などを整備することが必要です。
また、就労継続支援B型では、原則として「前年度の平均工賃」で「当該年度(今年)の報酬単価」が決まります。毎年4月に「前年度実績に伴う報酬単価及び加算の届出」といった書類を提出することにより指定権者に前年度の実績を報告するのです。そのため、就労継続支援B型の生産活動の記録は「就労継続支援会計」に基づいた正しい記録を行いましょう。
【サービス提供に関するもの】就労継続支援B型の実地指導で必要となる書類
就労継続支援B型で、サービスを提供する際に整備しておく必要がある書類としては上記のようになります。就労継続支援B型のサービス提供に関する記録は支援の根幹をなすものです。サービス提供の一覧の流れを理解し正しく記録を残すようにしましょう。
19.就労継続支援B型の重要事項説明書、利用契約書、個人情報の使用に関する同意書(3点セット)
就労継続支援B型を運営する際には個人情報の保護が大切になります。個人情報の使用同意書について、サービス担当者会議等で使用することや、他の障がい福祉サービス事業所に情報提供する場合があるなど、個人情報を使用することについて、利用者の他その家族(個人情報利用する可能性がある家族全員)からあらかじめ文書による同意を得ておくようにしましょう。
20.就労継続支援B型を利用する利用者さんの受給者証の写し
就労継続支援B型を利用する利用者さんの受給者証をコピーし、そのコピーを当該就労継続支援B型の事業所で保管するようにします。
受給者証には、受給者証番号や支給決定などの情報が記載されています。この情報は国保連へ訓練等給付を請求する際にも必要な情報になります。また、支給期間の更新の管理も大切な仕事になります。
21.市町村へ提出した就労継続支援B型の契約内容報告書の写し
就労継続支援B型の事業所は、利用者さんと就労移行支援の利用契約を締結した場合には、以下のような契約内容報告書を市町村へ提出します。この書類も市町村へ提出する際には「控え」をとるようにして、保管するようにしましょう。
<就労継続支援B型の契約内容報告書のサンプル>
22.就労継続支援B型のサービス提供に関する計画書(個別支援計画など)及び計画の作成に関する書類(アセスメント、モニタリング記録など)
就労継続支援B型のサービスを提供する際には、一連の流れに沿った就労継続支援B型のサービスを提供する必要があります。そのため、一連の流れに沿ったサービスを提供していることを証明できるように個別支援計画などの帳票類を整備する必要があります。
<個別支援計画の作成プロセス>
就労継続支援B型の個別支援計画の作成プロセスは、アセスメント→個別支援計画の「原案」の作成→支援担当者会議→正式な個別支援計画の説明・同意・交付→モニタリング(就労継続支援B型の場合は6ヶ月以内に1回以上)という流れになります。
この就労継続支援B型のサービス提供の一覧の流れで、「支援担当者会議」の記録が抜けているケースがあります。記録が残ってないため一連の流れに沿った就労継続支援B型のサービスを提供しているとは認められず、「個別支援計画の未作成」と判断されてしまう可能性があります。
とすると、「個別支援計画未作成減算」が適用されてしまって訓練等給付の減算となってしまう可能性がありますので注意しましょう。
- 減算適用1月目から4月目 所定単位数の70%を算定(30%の減算)
- 減算適用3月目以降 所定単位数の50%を算定(50%の減算)
23.就労継続支援B型のサービス提供の記録(サービス提供実績記録票以外のもの)
就労継続支援B型の事業者は、日々のサービス提供記録を作成して保管する必要があります。就労継続支援B型の事業所さんによっては「支援記録」や「ケース記録」と呼んでいます。毎日の利用者さんの活動記録や体調の様子などを記録して、後の支援のために役立たせます。
サービスの提供の記録は、個別支援計画に記載された目標に沿ったサービスの提供内容及び利用者の達成状況等を記録したものであり、報酬を請求する上での根拠となるものです。そのため、利用者のサービスの利用状況等を把握するため、事業者はサービスを提供した際には、その都度、提供日、提供したサービスの具体的内容、実績時間数、利用者負担額等の利用者へ伝達すべき必要な事項を記録し、利用者の確認を受ける必要があります。
また、在宅支援を利用している利用者さんについては、毎日の「日報」も必要になります。在宅支援は対面での支援ではないので支援方法も難しい部分もあるかと思いますが、毎日の記録は必ず残すようにしましょう。
よくある指摘事項
- サービス提供の都度記載されていなかった。
- 利用者の確認を得ていなかった。または、1ヶ月まとめて確認を得ていた。
- 記録が「特に変更なし」のように具体的でなかった。
- 送迎や食事提供を実施しているにもかかわらず記録していなかった。
24.相談支援事業所との「サービス担当者会議」に係る記録など
相談支援事業所が就労継続支援B型の利用者さんの相談支援を行っている場合、相談支援事業所の相談支援員と就労継続支援B型事業所のサービス管理責任者とでサービス担当者会議が行われます。そのサービス担当者会議の議事録を保管しておく必要があります。
【介護給付費等(訓練等給付費)の請求に関するもの】就労継続支援B型の実地指導で必要となる書類
就労継続支援B型の実地指導で、訓練等給付費などに関して必要となる書類は以上のようなものになります。就労継続支援B型の介護給付費等(訓練等給付費)の請求に関するものは、事業所に入る給付金(売上)に関する記録が主なものになります。
25.就労継続支援B型の訓練等給付費等明細書の写し(国保連請求分)
就労継続支援B型の事業所は、サービス提供の報酬を国保連に請求した際の「介護給付費・訓練等給付費等明細書」の写しを保管しておく必要があります。
就労継続支援B型の事業所の各月の売上や利用者さんごとの明細がわかる重要な書類ですので、プリントアウトしてファイリングし、大切に保管するようにしましょう。
26.就労継続支援B型のサービス提供実績記録票
就労継続支援B型の場合、サービス提供実績記録票は「就労移行支援提供実績記録票」を用います。厚生労働省が改正に合わせて書式も変更して提供していますので、最新の書式を利用するようにしましょう。
<就労継続支援提供実績記録票サンプル>
※厚生労働省のサイトより引用
このサービス提供実績記録票の「利用者確認欄」については、原則としてサービス提供の都度、利用者さんに対して実績記録票の記載内容を提示し、確認を求めなければなりません(参照:事務処理要領)
そのため、1ヶ月分をまとめて確認を求めている場合には、自治体によっては指摘されますので注意しましょう。
27.就労継続支援B型の法定代理受領の通知の写し
就労継続支援B型の事業所に支払われるサービスの利用料(訓練等給付費)は、本来は国から利用者に一度支払われてその後に利用者から就労継続支援B型事業所に支払われるという流れになるのですが、実務的には、就労継続支援B型の事業所が利用者の代わりに国保連に請求し、直接、就労継続支援B型事業所にサービス利用料(訓練等給付費)が支払われるとう流れになります。この制度を「法定代理受領」といいます。
そして、就労継続支援B型の事業所は、サービスの利用料(訓練等給付費)の支払いを受けた場合は、利用者さんごとに以下のような「法定代理受領の通知」を利用者さんに交付しなければなりません。
<法定代理受領の通知のサンプル>
この法定代理受領の通知を利用者さんに交付する場合には、国保連にサービス利用料を請求した際の「訓練等給付費明細書」の写しも一緒に交付して、利用者さんがその内訳も理解できるようにしましょう。
よくある指摘事項
- 法定代理受領により市町より訓練等給付費を受領した際、利用者に対し、その額を通知していなかった。
- 額の通知は行っていたものの、給付費の請求時など、訓練等給付費を市町から受領する前に通知していた。この通知は、市町から訓練等給付費を実際に受領してから行うものであるため、その月の請求時期にその月分の受領通知を行うことはできません。また、通知は毎月利用者一人一人に対して行う必要があります。
28.就労継続支援B型の利用者等に交付した請求書・領収書の写し
利用者さんから徴収できる費用については、訓練等給付費の対象サービスの提供に必要なものではないことが必要です。つまり、支援に使用する消耗品などは事業所負担となります。費用の徴収にあたっては、重要事項説明書などで明記し同意を得ておく必要があり、費用を受領した際は領収証の交付が必要です。
そして、就労継続支援B型の利用者さんに、サービス利用料の一部を請求する場合や食費などを請求する場合には、請求書や領収書の写しを保管するようにしましょう。領収書の写しについては、利用者さんに交付するのみで、写しや控えを保管していない事業所様もありますが、後のトラブルを防止するためにも、領収書の控えや写しを保管するようにしましょう。
よくある指摘事項
- 利用者負担額(利用料)を徴収すべき利用者から徴収していなかった。
- 利用者から徴収する費用(日常生活費用など)が実費でなかったり、一律に徴収されていた。
- 利用者の同意を得ないまま費用を徴収していた。
- 利用者から費用を徴収した際に領収証を交付していなかった。
29.就労継続支援B型の各種加算に係る算定要件を満たしていることが確認できる書類
就労継続支援B型の事業所として、各種の加算を算定している場合には、その加算の算定要件を満たしていることを証明できる記録や帳票類を整備しておかなければなりません。
必要な記録や帳票類は加算の種類によって異なりますので、その加算の算定要件を正しく理解して記録や帳票類を保管するようにしましょう。
福祉・介護職員処遇改善加算
毎年、指定権者に提出している「福祉・介護職員処遇改善加算計画書」と「福祉・介護職員処遇改善加算実績報告書」を保管していることが必要です。
また、処遇改善加算の「計画書」や「キャリアパスプラン」はスタッフに「周知」している必要がありますので、周知した際の議事録などを残すなどして「どのような方法で周知しているのか」を証明できるようにしておきましょう。
就労移行支援体制加算
就労移行支援体制加算は、前年度に利用者さんが一般就労をした場合、その就労が6ヶ月間継続した場合に評価される加算です。
毎年4月に「前年度実績に伴う加算届」で指定権者に提出する必要があります。事業所としては、指定権者に提出した加算届や介給別紙と一緒に、一般就労が6ヶ月間継続したことを証明する「在籍証明書」や「給料明細の写し」などの書類を保管するようにしましょう。
欠席時対応加算
欠席時対応加算は、利用者が急病等により利用を中止した際に、連絡調整や相談援助を行った場合に、月4回まで算定できます。
欠席時対応加算については、相談援助の内容を記録しておく必要がありますが、その記録には、①欠席の連絡を受けた日付、②欠席する日、③連絡を受けたスタッフの名前、④利用者の状況・欠席の理由、⑤引き続き就労移行支援の利用を促すような相談援助の内容(次回通所予定日など)などの記録を残しておくようにしましょう。
よくある指摘事項
- 欠席時対応の記録に不備(日付のズレ等)があった。
- 定期通院など事前に把握できる理由により欠席した場合にも加算を算定していた。
- 相談援助の内容まで記録していなかった。
- 1回の相談援助で2回算定していた(連続して欠席しているようなケース)。
目標工賃達成指導員配置加算
目標工賃達成指導員配置加算を算定している場合、目標工賃達成指導員を常勤換算で1以上配置している必要があります。また、職業指導員、生活支援員、目標工賃達成指導員の合計が平均利用者数に対して6:1以上の割合で従業者配置されている必要があります。工賃向上計画の作成も必須です。
そのため、毎月の勤務形態一覧表の「予定」と「実績」の記録はもちろんですが、「介給別紙」などを使って目標工賃達成指導員配置加算の人員配置がクリアしているかどうかの記録を毎月ごとに残しおくようにしましょう。
30.就労継続支援B型の定員超過利用減算に係る利用実績記録票
就労継続支援B型の定員超過減算に該当するかどうか確認するために、定員超過利用減算に係る利用実績記録票(定員超過利用減算確認表など)を整備しておく必要があります。
定員超過利用減算については、「1日あたりの超過」と「直近3ヶ月間の平均利用者数の超過」との2パターンがありますので注意しましょう。
以下のいずれかに該当する場合には定員超過利用減算が適用され、所定単位数の70%を算定(30%の減算)することになります。
- 1日あたりの利用者数が、定員が50人以下の場合は当該定員の150%を、定員が51人以上の場合は、当該定員から50を差し引いた員数の125%に75を加えた数を、それぞれ超過している場合
- 過去3ヶ月間の平均利用者数が、定員の125%を超過している場合(ただし、定員が11人以下の場合は当該定員に3を加えた数を超過している場合)
就労継続支援B型の利用定員を超えた利用者の受け入れについては、適正なサービス提供が確保されることを前提に地域の社会資源の状況等から新規の利用者を当該事業所において受け入れる場合等「やむを得ない事情が存在する場合」に限り認められます。
就労継続支援B型の利用定員が恒常的に超過している状態が続いている状況は、「やむを得ない事情が存在する場合」とは言えませんので、利用定員を増員するなどの適切な対応をとることが必要です。
その他~就労継続支援B型の実地指導での必要書類
就労継続支援B型を運営していくうえで、運営に関する帳票類やサービス提供に関する帳票類以外にも整備しておかなければならない帳票類があります。
31.就労継続支援B型の会計の区分(就労継続支援会計、部門別会計)
会計を事業ごと(事業所や施設ごとではなく指定事業ごと)に区分する必要があります。
就労継続支援B型の場合は、「生産活動収益」と「訓練等給付費等」との会計区分を明確にわける「就労継続支援会計」という管理会計で管理する必要があります。
また、就労継続支援B型とは別に事業を行っているようでしたら、就労継続支援B型の収支とその事業所の収支を区別するために「部門別会計」を行う必要があります。
32.就労継続支援B型の賠償保険の証書等(保険証券)
事業者賠償責任保険に加入していることを証明するために保険証券を保管しておきましょう。就労継続支援B型の指定申請の際にも事業者賠償保険の加入は必須ですが、実地指導の際には、保険の期限が切れていないかを確認されます。期限が途切れることなく事業者賠償保険に加入し、保険証券を大切に保管するようにしましょう。
33.就労継続支援B型の事業所の広告、パンフレット
就労継続支援B型の事業所に、広告やパンフレットがある場合には、それらの広告物も準備しておきます。利益を提供して利用者さんを集めるような表記となっていないかなど、適切な表現となっているかどうかを確認されます。
34.就労継続支援B型の事業者指定申請書・変更届出書などの写し
就労継続支援B型を開業する際に提出した「指定申請書類」の副本(控え)や、申請事項を変更した場合の「変更届」の副本(控え)は適切に保管するようにしましょう。
指定申請書類の控えや変更届の控えをWordやExcelのデータファイルのままPC内で保管している事業所さんもおられますが、あまりお勧めしていません。WordやExcelのデータファイルのままの保管では、知らないうちにデータが書き換わっていたり、PC内のどこに保管したのか書類の作成者しかわからなくなってしまったりして、申請した際の情報がわからなくなってしまっているケースが非常に多いからです。申請した際の情報や毎日の記録がわからないようでは、適切な運営はできません。
そのため、当事務所の顧問先様には、指定申請書類や変更届の副本(控え)は紙ベースでファイリングして(もしくはPDF化して)保管するようにしていただいています。
35.集団指導資料
就労継続支援B型の集団指導を受けた際の資料を保管するようにしましょう。就労継続支援B型に限らず集団指導の資料が事業所を運営する際にも非常に勉強になる資料です。集団資料のすべてに目を通すのは難しいと思いますが、最低限、就労継続支援B型に関わる部分については目を通して就労継続支援B型の制度を正しく理解するようにしましょう。
就労継続支援B型の実地指導については、就労継続支援B型の人員基準、設備基準、運営基準を正しく理解して、普段から記録を残すようにしておけば実地指導の通知がきたからといって慌てる必要はありません。むしろ実地指導の通知がきてから慌てているようでは適切な運営がされているとは言えません。
当事務所では、就労継続支援B型の事業所様が実地指導の通知がきたからといって慌てることなく適切に事業所運営ができるように、月額顧問料という形でコンサルティングサービスを提供しております。
就労継続支援B型の事業所運営について不安がある事業所様は、当事務所のコンサルティングサービスをご検討ください。