障がい福祉サービスの生活介護は、障がい者支援施設その他施設において、入浴、排せつ及び食事等の介護、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他必要な援助を要する障がい者であって、常時介護を要するものにつき、主として昼間において、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事並びに生活等に関する相談及び助言その他の必要な日常生活上の支援、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他の身体機能又は生活能力の向上のために必要な援助を行います。
具体的には次のような方を対象とします。
① 障害程度区分が区分3(障がい者支援施設に入所する場合は区分4)以上である者
② 年齢が50歳以上の場合は、障害程度区分が区分2(障がい者支援施設に入所する場合は区分3)以上である者
③ 生活介護と施設入所支援との利用の組み合わせを希望する者であって、障害程度区分が区分4(50歳以上の者は区分3)より低い者で、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画を作成する手続きを経た上で、利用の組み合わせが必要な場合に、市町村の判断で認められた者
目次
生活介護事業の開業の手順
障がい福祉サービスの生活介護事業を行うためには、事業所としての「指定」を受ける必要があります。
生活介護事業を運営するための法人を設立する
生活介護事業を開業する場合には、その生活介護事業を運営する主体が法人でなければなりません。生活介護事業の責任の帰属主体として法人格を有するだけの体制がとられていなければならないのです。
ただ、生活介護を運営するための法人とっても、その種類にはいくつかあります。株式会社、合同会社、特定非営利活動法人(NPO法人)、一般社団法人などの種類があります。どの種類の法人で開業するかはケースバイケースといえますが、法人の設立手続きにかかる時間や費用などを比較検討して、どの法人を設立するかを決めましょう。以下は代表的な法人の比較表ですので、参考にしてみてください。
株式会社 | 合同会社 | 一般社団法人 | NPO法人 | 社会福祉法人 | |
根拠法 | 会社法 | 会社法 | 一般社団法人及 一般財団法人に 関する法律 |
特定非営利 活動促進法 |
社会福祉法 |
目的事業 | 定款に 掲げる事業 |
定款に 掲げる事業 |
目的や事業に制約はなく、 公益事業、収益事業、 共益事業等可 |
特定非営利活動 (20分野)を主目的 |
社会福祉事業 |
設立方法 | 定款認証後に 登記して設立 |
登記して設立 (定款認証不要) |
定款認証後に 登記して設立 |
所轄庁の認証後に 登記して設立 |
所轄庁の認可後に 登記して設立 |
設立要件 | 資本の提供 | 1人以上 | 社員2人以上 | 社員10人以上(常時) | 一定規模以上の資産 |
役員 | 取締役1人以上 | 自由に決定 | 理事3人以上 | 理事3人以上 監事1人以上 |
理事6人以上 監事2人以上 (原則として理事の2倍 を超える評議員) |
代表者 | 代表取締役 | 代表社員 | 代表理事 | 代表理事 | 代表理事 |
役員任期 | 最長10年 | なし | 理事2年以内 監事4年以内 |
2年以内 | 選任後2年以内に終了する 会計年度のうち、最終のもの に関する定時評議員会の 終結の時まで |
生活介護事業の「指定」を受ける
生活介護事業所の指定申請は、都道府県(市町村)ごとに指定申請手続きのスケジュールが決められています。その生活介護の指定申請スケジュールに合わせて役所担当課で調査や協議を行い、資料収集、書類作成をしていくことになります。生活介護の指定日(事業開始日)をいつに希望するかによって指定申請書類を提出する締切日が決まります。
例えば、
- 大阪市の場合
事前協議 → 指定申請・受理(指定日前月10日まで)→ 審査 → 指定
- 京都市の場合
事前相談 → 指定申請・受理 → 審査(概ね2ヶ月)→ 指定
- 奈良市の場合
事前相談 → 指定申請・受理(指定日2ヶ月前末日まで)→ 審査 → 指定
生活介護の事前協議(事前相談)の次は、生活介護の指定申請を行います。生活介護の指定申請では、生活介護として使用する物件が法令に適合した状態であることや生活介護の人員基準を満たしていることなどを証明するために各種資料の収集や申請書類を作成していくことになります。
生活介護の指定申請の際には、様々な多くの書類を作成していくことになりますが、大きなポイントとなる部分を挙げるとすれば、Ⅰ:人員基準、Ⅱ:物件の適法性・設備基準、Ⅲ:協力医療機関の同意 がポイントとなります。
Ⅱ 生活介護で使用する物件の間取りが適切で、都市計画法、建築基準法、バリアフリー条例(京都市)、消防法に 適合しているか。設備基準を満たしているか
Ⅲ 協力医療機関の同意(ハンコ)を得られるか
Ⅰ.生活介護事業の指定申請が受理されるためには、生活介護事業の人員配置基準(人員基準)を満たしていなければいけません。
生活介護事業の指定申請が受理されるためには、サービス管理責任者を中心とした人員配置が非常に重要となります。また、生活介護の人員配置は指定を取得した後の運営面でも非常に重要となる基準になります。サービス管理責任者の要件と一緒に正しく理解しておきましょう。
生活介護事業の人員基準
職種名 | 必要員数 | 配置要件 | |
管理者 | 1人 | 原則として管理業務に従事するもの。 (管理業務に支障がない場合は他の職務の兼務可) |
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サービス 管理責任者 |
1人以上 は常勤 |
・利用者が60人以下:1人以上 ・利用者が61人以上:1人+利用者数が60人を超えて 40 or その端数を増やすごとに1人 ※利用者数は「前年度の平均値」 ※新規に指定を受ける場合は推定値(定員×0.9) |
|
従 業 者 |
医師 | 利用者の健康管理・療養上の指導を行うのに必要な数 (嘱託医でも可) |
|
看護職員 | 生活介護の単位ごとに1人以上 (看護師、准看護師、看護補助者) |
||
理学療法士 or 作業療法士 |
訓練を行う場合は、生活介護の単位ごとに1人以上 ・理学療法士 or 作業療法士の確保が困難な場合について、機能訓 練指導員としてリハビリテーションに従事した経験を有する看護 師等を充てることが可能。 ・専ら知的障がい or 精神障がいを有する者を対象とする場合には、 生活支援員or精神保健福祉士をもって代替できる。 |
||
生活支援員 | 生活介護の単位ごとに1人以上 (看護職員および生活支援員のうち1以上は常勤) |
看護職員、理学療法士 or 作業療法士、生活支援員の「総数」は、常勤換算で
- 平均障害支援区分が4未満 6:1(利用者数を6で除した数)以上
- 平均障害支援区分が4以上5未満 5:1(利用者数を5で除した数)以上
- 平均障害支援区分が5以上 3:1(利用者数を3で除した数)以上
Ⅱ.生活介護事業を開業するためには、生活介護として使用する物件が建築基準法、消防法などの各法令に適合していなければなりません。
生活介護事業所として使用する建物の使用部分が200㎡を超える場合には、建築基準法上の「用途変更の確認申請」という申請が必要になります。建築基準法上の「用途変更の確認申請」は、行政書士ではなく建築士の業務になりますが、かなり大掛かりな手続きで費用も高額になるようです。ですので、生活介護で使用する物件を探す場合には、生活介護として使用する部分の面積が200㎡を超えない物件を探すようにしましょう。
また、消防法の要請から誘導灯や非常警報装置などの消防設備を設置しなければいけない場合もありますので、その場合は関係各部署と慎重に協議を進めていきます。
※生活介護の場合、消防法施行令別表第一の6項ハ(5)に該当します。消防法の要請から設置される消防設備は建物面積や入居階数、無窓階か否か、収容人数、他のテナント入居者などによって異なります。賃貸借契約を締結する前に必ず管轄消防署の予防課で事前の相談や協議をするようにしましょう。
また、自治体によっては、いわゆるバリアフリー条例(京都市)やまちづくり条例(京都府)でバリアフリーな建物となっていること求めている自治体もありますが、この場合もこれらの条例に適合した物件となっていることが必要となります。
さらに、以下の設備要件を満たしていることが必要です。
生活介護事業の設備基準
設 備 | 要 件 |
---|---|
訓練作業室 | サービス提供に支障のない広さを備えること。大阪市の場合は、利用者1人当たり約3.0㎡必要。 生活介護事業は、最低定員20名。訓練作業室の最低面積は60㎡(20名×3㎡)が必要。 |
相談室 | プライバシーに配慮していること。 |
多目的室 | 相談室と兼務可能。 |
事務室 | 鍵付き書庫を設置すること。 |
洗面所・トイレ | 洗面所(手指洗浄)はトイレ内手洗いとは別々であること。 |
Ⅲ.協力医療機関の同意(ハンコ)を得られるか
生活介護事業所を運営する場合、サービス提供中に利用者が突然の体調不良になったり異変が起こった場合に備えて、すぐに連絡のとれる協力医療機関を定めておかなければなりません。さらには、生活介護の場合は、人員配置基準で医師の配置(嘱託医でも可)が必要になりますので、医療機関の協力がより必要になります。生活介護の場合、比較的障がいの程度の重い方が利用するサービスですので、医療的なケアが必要な方が利用すると想定されるからです。
この協力医療機関の同意(ハンコ)をもらうのに苦労する方もいらっしゃいます。開業手順のはやい段階で協力してくれそうな医療機関に打診しておきましょう。協力医療機関の同意をもらうお礼として、生活介護で働く職員の年1回の健康診断を当該医療機関で受診するようにしている事業所様もあるようです。
生活介護事業の「指定」を取得した後の運営面が大切です。
生活介護事業の指定を取得することも大切ですが、指定を取得した後の「運営」からが本番といえます。指定を取得することによってようやく事業運営のスタートラインに立てたといっても過言ではありません。
とくに、生活介護事業のような障がい福祉サービス事業では、コンプライアンス(法令遵守)を意識した経営が大切になります。当事務所では、法令に適合した運営を行っていただけるように運営コンサルティングサービスも行っております。
生活介護事業所の「指定」を取得した後の人員配置基準
生活介護の人員配置基準(医師を除く従業者の必要配置職員数)は、原則として「前年度の平均利用者数」と「前年度の平均障がい支援区分」をもとに人員配置基準を考えていくことになります。
- 「前年度の平均利用者数」=「延利用者数」÷「開所日数」
- 「前年度の平均障がい支援区分」={(2×区分2該当者数)+(3×区分3該当者数)+(4×区分4該当者数)+(5×区分5該当者数)+(6×区分6該当者数)}÷総利用者数
看護職員、理学療法士 or 作業療法士、生活支援員の「総数」は、常勤換算で
- 平均障害支援区分が4未満 6:1(利用者数を6で除した数)以上
- 平均障害支援区分が4以上5未満 5:1(利用者数を5で除した数)以上
- 平均障害支援区分が5以上 3:1(利用者数を3で除した数)以上
例えば、「前年度の平均利用者数」=18人、「前年度の平均障がい支援区分」=4.5 だとした場合、
平均障害 支援区分 |
4未満 | 18人÷6:1=3.0人 |
4以上5未満 | 18人÷5:1=3.6人 | |
5以上 | 18人÷3:1=6.0人 |
上の表の真ん中の部分「18人÷5:1=3.6人」が必要配置職員数ということになります。この場合、看護職員、理学療法士 or 作業療法士、生活支援員の「総数」は、常勤換算で3.6人分の配置が必要ということになります(看護職員および生活支援員のうち1以上は常勤であること)。
ただ、新規の場合は、「前年度の平均利用者数」は「定員×0.9」と設定され、「平均障がい支援区分」は「推定値(ほとんどの場合、区分4未満で設定されると思います)」で設定されます。
生活介護事業の開業支援に詳しい行政書士に依頼
生活介護事業をはじめとする障がい福祉サービス事業の指定申請では、行政によって申請スケジュールが決められています。そのスケジュールに合わせた調査、協議、資料収集、書類作成などを行っていかなければ事業開始時点(開業時点)がどんどん後ろにズレてしまうことになります。これでは売上を挙げられないのに物件家賃や従業員給料などの経費だけが出ていくだけになってしまいます。
そうならないためには、生活介護事業の収支予算シミュレーションを考えながら開業時点(指定日)を目標設定することにより、必要となるタスクを逆算で洗い出し、適切なタイミングで調査、協議、資料収集、書類作成などを行わなければなりません。利用物件の賃貸借契約の締結や従業員との雇用契約のタイミングも開業時点(指定日)を明確にすることにより、「いつ締結すればいいのか?」「いつ雇用すればいいのか?」が見えてくるのです。
また、建築基準法の用途変更や消防法の消防設備の設置などが必要になると建築士や消防設備業者との連絡調整もでてきますし、行政の各担当部署ともやりとりが必要になります。指定日を目指して一つ一つ手続きをクリアしていくことになります。
これらの手続きをスケジュールどおりに行うには指定申請に詳しい実績のある行政書士でなければ難しいでしょう。とくに生活介護事業のような施設系の障がい福祉サービス事業では、指定申請手続きの経験の豊富な行政書士に依頼しましょう。ご自身で申請手続きをされたり、経験のない行政書士に依頼して手続きが途中で頓挫してしまったということもよく聞く話です。
当事務所に生活介護の開業支援をご依頼いただく3つのメリット
生活介護の指定申請手続きだけではありません!!
当事務所では、単に「指定申請手続き」といった開業時の手続きのみに対応するだけではなく、指定申請後の運営面を見据えたコンサルティングも行います。例えば、福祉・介護職員処遇改善加算や食事提供体制加算をとるにはどのような要件をそろえればその「加算」がとれて、その加算をとれば幾らぐらいの売上が見込まれるのか・・・などのアドバイスをしながら指定申請の手続きをすすめていきます。
生活介護の開業後の運営コンサルティングにも対応!!
障がい福祉サービス事業は、厳しいコンプライアンスが求められる業界です。生活介護事業のような日中活動系といわれるような事業でも定期的に行政による実地指導は入ります。そのため、いいかげんな運営をしていては、行政から報酬の返金を求められたり、最悪の場合は指定取消となってしまうこともあります。当事務所では、事業所の収支を意識した戦略的な事業運営とコンプライアンス経営が両立するような運営コンサルティングサービスを行っております。
生活介護の開業時の創業融資にも対応しております!!
生活介護事業を含む障がい福祉サービス事業では、サービスを提供した月の翌月10日までに国民健康保険団体連合会(国保連)に報酬請求を行います。ただ、その入金はさらに翌月の中頃になります。つまり、入金サイト(入金期間)が他の業種に比べて比較的長いのが特徴です。ですので、開業時には開業費用の他に最低でも6ヶ月程度の運転資金を準備しておかなければ資金ショートを起こしてしまう可能性があります。
当事務所では、日本政策金融公庫などの金融機関への創業融資の申込みのお手伝いもさせていただいております。事業開始後では良くも悪くも実績ができてしまいますので融資が降りにくくなるといわれています。開業前に余裕のある運営資金の準備をしておきましょう。
生活介護事業の開業支援をご依頼いただく際の流れ
① 生活介護として使用する物件の目途をつけましょう。
この時点では、まだ大家さんと正式に賃貸借契約を締結しません。正式な賃貸借契約は、建築指導課や消防署予防課などで物件調査や協議をし、役所との事前協議(事前相談)を経た後に締結することになります。生活介護事業では、比較的重度の障がいをお持ちの方が利用しますので、トイレなどの設備はバリアフリー仕様にすることも検討してみましょう。
② 生活介護に勤務するサービス管理責任者を確保しましょう。
サービス管理責任者は生活介護事業を運営していくうえで非常に重要なポジションにあります。サービス管理責任者は、資格要件・実務経験・研修要件を満たしていないとなれませんが、労働市場に要件を満たすサービス管理責任者が不足しているのが現状です。これから事業を一緒に盛り上げていく仲間として勤務してくれる人をはやい段階で確保しておきましょう。
③ 当事務所へ生活介護の開業支援を依頼しましょう。
上記1.2の目途がついた段階でご依頼いただくのが一番スムーズでありますが、できるだけはやい段階でご相談いただければ物件選びの注意点や人員基準の考え方などもアドバイスいたします。
生活介護事業の開業支援の料金
料金 | 450,000円(税別) |
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※法人設立業務は提携司法書士が行います。提携司法書士との別途契約となります。
※建築士の用途変更や消防設備業者の工事などの費用は担当業者との別途契約となります。
※福祉・介護職員処遇改善加算の同時申請は別途料金となります。
生活介護の開業支援をご依頼いただく際にご準備いただくとスムーズな資料
- 生活介護で使用する物件の情報
物件の位置(住所地)、間取り(窓の位置がわかれば尚良)、面積がわかるもの - 生活介護のサービス管理責任者の情報
履歴書、資格証、実務経験証明書、研修修了証の各コピー - 生活介護を運営する法人の定款・登記簿
事業の「目的欄」が適切に記載されているかどうかを確認します。
適切でなければ変更手続きをする必要があります。