※本稿は2026年9月時点の法令・通知等に基づき、障害者グループホーム(共同生活援助)の入居者が、介護保険の訪問介護・訪問看護や医療保険の訪問看護を利用できるのか、また、障害福祉の居宅介護・重度訪問介護とはなぜ取扱いが異なるのかを整理したものです。個別の請求可否は、利用者の保険資格、要介護認定、疾病・状態、サービス内容、共同生活援助の類型等によって異なります。
障害者グループホームの高齢化が進む中、「65歳になったら共同生活援助は利用できないのか」「グループホームの中に介護保険のヘルパーを入れられるのか」「訪問看護は使えるのか」という相談が増えています。
この問題は、「共同生活援助も居宅介護も訪問介護も訪問看護も、結局は居室に人が来て支援するのだから同じではないか」と考えると分かりにくくなります。
重要なのは、サービスの見た目ではなく、
①どの法律に基づく給付か
②その法律・基準に給付調整や利用制限があるか
③同一の支援を二つの制度で重ねて評価していないか
という順序で見ることです。
1.65歳になったからといって、共同生活援助を当然に退居しなければならないわけではありません。必要性が認められれば、65歳以降も共同生活援助を継続できます。[1]
2.共同生活援助は、障害者支援施設のような介護保険の適用除外施設ではありません。要介護認定等を受けた入居者は、介護保険サービスの対象となり得ます。[2]
3.介護保険の訪問介護は、障害者グループホームの居室に入ることができます。厚生労働省は従来から、障害者グループホームを訪問介護を受ける「居宅」として取り扱っています。[3][4]
4.訪問看護も、共同生活援助に入居していることだけを理由に排除されません。ただし、要介護・要支援者の訪問看護は原則として介護保険が優先し、一定の場合に医療保険の訪問看護となります。[5][6]
5.一方、共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)に障害福祉の居宅介護・重度訪問介護を入れることは原則として制限され、一定の重度者に限って明文の特例が設けられています。[7][8]
6.したがって、「同じ障害福祉だから併給できない、別の法律だから何でも併給できる」と単純化するのは正確ではありません。各制度の給付調整・算定要件を個別に確認する必要があります。
1 まず、「65歳になったら障害者グループホームを退居」は誤り
障害者総合支援法には、介護保険の給付と障害福祉の自立支援給付が重なる場合の調整規定があり、サービス内容・機能が相当する介護保険サービスが利用できる場合には、原則として介護保険サービスが優先されます。もっとも、厚生労働省は「一律に介護保険サービスへ移行させる」という運用は適切でないとしており、本人が必要とする支援を介護保険で受けられるかを個別に判断するよう求めています。[9]
共同生活援助についても、令和5年6月30日事務連絡の具体的な運用例として、本人の状況から必要と認められる場合には「65歳以降も引き続き共同生活援助の利用を認める」と明示されています。[1]
つまり、65歳到達=共同生活援助終了、ではありません。要介護度、障害特性、本人の希望、地域で利用できるサービス等を踏まえて判断されます。
2 共同生活援助は「介護保険の適用除外施設」ではない
介護保険法施行法第11条は、一定の障害者支援施設等に入所している者を介護保険の被保険者から除外する仕組みを定めています。しかし、この適用除外の中心は、生活介護と施設入所支援の支給決定を受けて指定障害者支援施設に入所している者等です。共同生活援助(障害者グループホーム)は、この適用除外施設として規定されていません。[2]
したがって、共同生活援助に入居している65歳以上の人は、通常は介護保険の第1号被保険者として扱われ、要介護・要支援認定を受ければ介護保険サービスを利用する余地があります。
3 介護保険の訪問介護は、障害者グループホームに入れる
介護保険法第8条第2項は、訪問介護を「居宅要介護者」の居宅で行う介護等として位置付けています。[4]
そして厚生労働省は、平成15年の支援費制度関係Q&Aで、障害者グループホームについて「居宅に当たる」ため、要介護認定を受けた場合には介護保険の訪問介護員の派遣を受けることができる、との考え方を明示しています。[3]
このQ&A自体は障害者総合支援法施行前の資料ですが、「障害者グループホームは、介護保険の訪問系サービスを受ける生活の場としての居宅である」という行政解釈を端的に示す資料です。現在も、共同生活援助は介護保険の適用除外施設ではなく、厚生労働省は65歳以降の共同生活援助継続と介護保険制度の利用を併存させる運用を示しているため、この基本的な整理と整合します。[1][2]
70歳・知的障害・共同生活援助に入居・要介護2。ケアプラン上、朝の更衣・排泄介助について介護保険の訪問介護が必要と判断された場合、共同生活援助に住み続けながら介護保険の訪問介護を利用することは制度上あり得ます。
ただし、具体的な訪問介護の必要性、ケアプランへの位置付け、GH側の支援内容との役割分担などは個別に整理する必要があります。
4 では、なぜ障害福祉の「居宅介護・重度訪問介護」は扱いが違うのか
ここが今回の論点の核心です。共同生活援助(介護サービス包括型)では、指定基準第211条第3項により、利用者の負担で事業所従業者以外の者による介護・家事等を受けさせることが原則として禁止されています。日中サービス支援型にも同趣旨の規定があります。[7]
そのうえで、指定基準附則第18条の2は、一定の重度者について、共同生活住居内で外部の居宅介護・重度訪問介護を個人単位で利用できる特例を置いています。現行規定では、この特例は令和9年3月31日までとされています。[7]
また、支給決定事務の通知でも、特例対象者について居宅介護・重度訪問介護の利用可否が具体的に整理されています。[8]
つまり、「居宅介護や重度訪問介護は共同生活援助と同じ障害者総合支援法のサービスだから自動的に併給不可」なのではありません。正確には、共同生活援助の指定基準そのものが、GH内の外部介護を原則として制限し、その例外を明文で定めているからです。
5 訪問看護は共同生活援助の入居者にも提供できる
訪問看護についても、共同生活援助に入居していることだけで対象外になるわけではありません。現行の訪問看護療養費の告示は、同一建物に居住する利用者に対する指定訪問看護の算定区分を設けており、主治医の訪問看護指示書・訪問看護計画書等に基づいて算定する仕組みになっています。[5]
ただし、高齢のGH入居者については、「医療保険の訪問看護か、介護保険の訪問看護か」を先に確認する必要があります。要介護・要支援者については、原則として介護保険の訪問看護が医療保険に優先し、特別訪問看護指示書が交付された場合、厚生労働大臣が定める疾病等の場合、認知症以外の精神疾患に対する精神科訪問看護など、一定の場合に医療保険の訪問看護となります。[6]
GHに訪問看護が入ること自体と、「どの保険から給付されるか」は別問題です。
要介護・要支援認定がある場合:原則は介護保険の訪問看護。
一定の疾病・特別訪問看護指示書・精神科訪問看護等:医療保険の訪問看護となる場合があります。[6]
6 「根拠法が違うから併給できる」は半分正しいが、それだけでは足りない
ここまでを見ると、障害福祉の共同生活援助に、介護保険の訪問介護や医療・介護保険の訪問看護が入り得る一方、障害福祉の居宅介護・重度訪問介護には原則的な制限があります。
この違いを「根拠法が違うから」と説明するのは、方向としては理解しやすいのですが、法的には少し粗い整理です。
重要なのは、別法の給付であっても給付調整規定があれば調整される、ということです。実際、障害者総合支援法と介護保険法の間には、障害者総合支援法第7条を基礎とする介護保険優先の調整があります。[9]
また、医療保険と介護保険の訪問看護にも、原則として介護保険を優先する給付調整があります。[6]
したがって、正確には次のように考えるべきです。
① その利用者は、それぞれの制度の被保険者・対象者になっているか。
② その生活場所(共同生活援助の居室)が、そのサービスの提供場所として認められているか。
③ その制度に「他制度を優先する」「この施設では算定しない」などの給付調整・算定除外があるか。
④ それぞれのサービスとして独立した必要性、計画、実施、記録があるか。
⑤ 同一の支援を二つの制度で重ねて評価していないか。
7 「同一行為なら必ず二重請求不可」という一般ルールでもない
もう一つ注意したいのは、「同じような介護をしているから二重請求だ」と外形だけで決めることもできない、という点です。共同生活援助の支援と介護保険の訪問介護は、支援内容が一部重なるように見えても、
それぞれの制度に基づき必要性が認められ、役割分担をして提供されることがあります。
したがって、「別法なら全部OK」「同じ行為なら全部NG」という二択ではなく、各制度が何を給付対象としているのか、給付調整がどう定められているのかを確認する必要があります。
もっとも、ある一回のサービス提供そのものを、二つの公的報酬の双方の請求根拠にする場合は別です。例えば、共同生活援助の医療連携体制加算の委託業務として行った一回の看護を、そのまま同じ時間・同じ看護内容で訪問看護療養費としても請求する、といった運用は、制度上のサービス主体・費用負担の整理と衝突するため慎重に考える必要があります。
一方、医療連携体制加算の看護とは別に、主治医の指示等に基づく独立した訪問看護を別個に提供し、その訪問自体が算定要件を満たすのであれば、訪問看護の給付を受ける余地があります。この点は、医療連携体制加算と訪問看護療養費の関係として別の記事で詳しく整理すべき論点です。
8 サービスごとの整理
| サービス | 主な根拠制度 | GH入居者の利用 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 共同生活援助 | 障害者総合支援法 | ○ | 65歳以降も必要性が認められれば継続可能。 |
| 居宅介護 | 障害者総合支援法 | △ | 介護サービス包括型・日中サービス 支援型では原則制限。一定の重度者に特例。 |
| 重度訪問介護 | 障害者総合支援法 | △ | 同上。特例対象・支給決定要件の確認が必要。 |
| 訪問介護 | 介護保険法 | ○ | 要介護認定等を前提に、GHを居宅として利用可能。 介護保険優先の調整に注意。 |
| 訪問看護(介護保険) | 介護保険法 | ○ | 要介護・要支援者では原則こちらが優先。 ケアプラン等の要件を確認。 |
| 訪問看護(医療保険) | 健康保険法等 | ○ | GH入居だけで排除されない。 要介護者等では医療保険算定の例外要件を確認。 |
9 実務で確認したいポイント
- 共同生活援助の類型(介護サービス包括型・日中サービス支援型・外部サービス利用型)を確認する。
- 利用者の年齢だけでなく、介護保険の被保険者資格、要介護・要支援認定の有無を確認する。
- 介護保険に相当するサービスがある場合は、障害者総合支援法第7条・適用関係通知による給付調整を確認する。
- 訪問介護については、居宅サービス計画上の必要性とGH側の支援との役割分担を明確にする。
- 訪問看護については、介護保険か医療保険かを先に判定し、指示書・計画・記録を制度ごとに整備する。
- 障害福祉の居宅介護・重度訪問介護をGH内で使う場合は、指定基準附則第18条の2の特例対象かを確認する。
- 複数制度を併用する場合は、同一時間帯・同一サービスを重ねて請求していないか、請求単位で検証する。
- 判断が微妙なケースは、市町村の障害福祉担当・介護保険担当、必要に応じて地方厚生(支)局や審査支払機関に事前確認し、回答を記録する。
10 まとめ
共同生活援助は「障害福祉サービスだから、介護保険や医療保険のサービスが一切入れない場所」ではありません。65歳以降も必要性が認められれば共同生活援助を継続でき、要介護認定等を受けた利用者は介護保険の訪問介護や訪問看護を利用し得ます。また、訪問看護は、利用者の年齢・要介護認定・疾病・状態等に応じて、介護保険又は医療保険のいずれかで提供されます。
他方、共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)における障害福祉の居宅介護・重度訪問介護については、GHの指定基準が外部介護を原則制限し、一定の対象者に特例を設けています。ここに、介護保険の訪問介護との大きな制度上の違いがあります。
したがって、この問題は「同じ法律か、別の法律か」だけで決めるのではなく、①対象者、②提供場所、③給付調整、④個別の算定要件、⑤同一サービスの重複評価の有無、という順序で確認することが重要です。
根拠資料
[1] 厚生労働省「障害者総合支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度の適用関係等に係る留意事項及び運用の具体例等について」(令和5年6月30日事務連絡)
https://www.mhlw.go.jp/content/001117896.pdf
共同生活援助について、必要と認められる場合は65歳以降も継続利用を認める具体例を示している。
[2] 介護保険法施行法 第11条(適用除外に関する経過措置)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82998035&dataType=0&pageNo=1
障害者支援施設等の一定の入所者を介護保険の被保険者から除外する規定。共同生活援助は当該規定の適用除外施設として規定されていない。
[3] 厚生労働省「支援費制度Q&A集(平成15年6月)」問5
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/syakai/sienhi/qa0310/index.html
障害者グループホームは「居宅」に当たり、要介護認定を受けた場合に介護保険の訪問介護員の派遣を受けることができると明示した資料。現行法施行前の資料であるため、現在の法令・通知と併せて参照する。
[4] 介護保険法 第8条第2項(訪問介護の定義)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82998034&dataType=0&pageNo=1
訪問介護を、居宅要介護者についてその者の居宅で行う介護等として規定。
[5] 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」(平成20年厚生労働省告示第67号・現行)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9734&dataType=0
同一建物居住者に対する指定訪問看護等の現行の算定方法を規定。
[6] 厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」訪問看護関係
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc4924&dataType=1
要介護被保険者等の訪問看護は原則として介護保険が優先し、一定の場合に医療保険の訪問看護療養費を算定できることを整理。
[7] 指定障害福祉サービスの人員、設備及び運営に関する基準 第211条第3項・第213条の8第4項・附則第18条の2
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=83aa8467
介護サービス包括型・日中サービス支援型における外部介護の原則制限と、個人単位で居宅介護等を利用する特例を規定。
[8] 厚生労働省「介護給付費等の支給決定等について」共同生活援助における個人単位の居宅介護等利用
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4786&dataType=1&pageNo=1
特例対象者に係る居宅介護・重度訪問介護の利用可否等を具体化。
[9] 厚生労働省「障害者総合支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb4788&dataType=1&pageNo=1
介護保険サービスが原則優先となる一方、一律に介護保険を優先させず、個別に必要な支援が受けられるか判断する考え方を示している。
[10] 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」訪問看護ステーション関係
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
令和8年度の訪問看護療養費・留意事項通知等の最新資料掲載ページ。








