※本稿は2026年9月時点の法令・通知を基に、障害者グループホーム(共同生活援助)の医療連携体制加算(主にⅠ~Ⅳ)と、訪問看護ステーションが医療保険で請求する訪問看護療養費との関係を整理したものです。
障害者グループホーム(共同生活援助)では、医療機関や訪問看護ステーション等と連携し、看護職員がホームを訪問して利用者に看護を行うことで「医療連携体制加算」を算定できる場合があります。
ここで実務上よく問題になるのが、「医療連携体制加算のために訪問看護ステーションの看護師がホームへ来た場合、その訪問看護ステーションは、同じ利用者について医療保険の訪問看護療養費も請求できるのか」という点です。
この論点は、単に「併用できる・できない」と答えると誤解が生じます。結論を正確にするためには、①同じ利用者が二つの制度を利用できるか、②同じ一回の看護提供を二つの制度の請求根拠にできるか、を分けて考える必要があります。
結論からいえば、医療連携体制加算の看護とは別個の訪問看護として、主治医の指示書等に基づく「指定訪問看護」を実施し、訪問看護療養費の算定要件を満たすのであれば、その別個の訪問について訪問看護療養費を請求できます。問題は「同じ利用者に二つの制度が入ること」ではなく、「同じ一回の看護を両方の請求根拠にすること」です。
1.医療連携体制加算の看護とは別に、主治医の訪問看護指示書等に基づく独立した「指定訪問看護」を実施し、訪問看護療養費の算定要件を満たす場合、その別個の訪問について訪問看護ステーションは訪問看護療養費を請求できます。
2.したがって、共同生活援助の利用者について、グループホームが医療連携体制加算を算定していることと、その利用者が別途、医療保険の訪問看護を利用することは両立し得ます。
3.一方、医療連携体制加算の根拠となる看護は、グループホームが医療機関等と委託契約を結び、必要な費用を負担し、「共同生活援助事業所として行う」障害福祉サービス上の看護です。
4.そのため、同一の時間帯・同一の看護行為を、グループホーム側では医療連携体制加算、訪問看護ステーション側では訪問看護療養費の双方の請求根拠にすることは、これを明確に認める根拠が確認できず、制度趣旨や費用負担の構造とも整合しにくいと考えられます。実務上は避けるべきです。
1 まず、「医療連携体制加算」と「訪問看護療養費」は別の制度です
この問題を理解する第一歩は、二つの報酬の「誰が、何を提供し、誰からお金を受け取るのか」を分けることです。
| 項目 | GHの医療連携体制加算 | 医療保険の訪問看護療養費 |
|---|---|---|
| 報酬の制度 | 障害福祉サービス等報酬 | 医療保険(訪問看護療養費) |
| サービスの位置付け | 共同生活援助事業所として行う看護 | 訪問看護ステーションが行う「指定訪問看護」 |
| 主な支払の流れ | GHが障害福祉報酬として加算を請求し、 委託先に委託費を支払う |
訪問看護ステーションが保険者等に訪問看護療 養費を請求する |
| 指示・計画 | 医療連携体制加算に係る医師の指示、 共同生活援助計画等との整合 |
訪問看護指示書(精神科は精神科訪問看護指示 書)・訪問看護計画書 |
| 記録 | 医療連携体制加算としての看護・連携記録 | 指定訪問看護としての訪問看護記録等 |
2 共同生活援助の医療連携体制加算(Ⅰ~Ⅳ)はどのような加算か
現行の障害福祉サービス等報酬告示(平成18年厚生労働省告示第523号)では、共同生活援助の医療連携体制加算(Ⅰ)~(Ⅳ)について、医療機関等との連携により看護職員を指定共同生活援助事業所等へ訪問させ、利用者に看護を行った場合に算定する仕組みが定められています。[1]
医療連携体制加算(Ⅰ)~(Ⅲ)は看護時間に応じた区分で、(Ⅳ)は厚生労働大臣が定める医療的ケアが必要な利用者に対して看護を行う場合の区分です。この記事では、「訪問看護ステーションの看護師がホームへ来て看護をする」という論点に直結するため、主に(Ⅰ)~(Ⅳ)を扱います。
※共同生活援助には(Ⅴ)~(Ⅶ)もありますが、喀痰吸引等の指導・実施や看護師確保等の体制を評価する区分であり、本稿の中心論点とは性質が異なります。
3 決定的に重要な通知:「この看護はGH事業所として行う」
共同生活援助の留意事項通知は、医療連携体制加算(Ⅰ)~(Ⅳ)の取扱いについて、短期入所の医療連携体制加算の取扱いを「準用する」と定めています。[2]
その準用先では、事業所は、医療連携体制加算の業務について医療機関等とあらかじめ委託契約を締結し、看護の提供等に必要な費用を医療機関に支払うこととされています。さらに、このサービスは「指定短期入所事業所等として行うもの」と明記されています。共同生活援助ではこの規定が準用されるため、医療連携体制加算の看護は、共同生活援助事業所として提供するサービスとして読むのが基本です。[2]
医療連携体制加算の看護は、「訪問看護ステーションが自ら医療保険サービスとして行う訪問看護」をそのままGHが横から評価する仕組みではありません。
GHが障害福祉サービスとして看護を確保し、そのために医療機関等と委託契約を結び、必要な費用を負担するという構造です。
4 一方、訪問看護療養費は「指定訪問看護」を行った場合に請求する
訪問看護ステーションが医療保険から訪問看護療養費を受けるには、訪問看護療養費の告示に基づく「指定訪問看護」を行う必要があります。現行告示では、同一建物居住者についても、主治医から交付された訪問看護指示書と訪問看護計画書に基づき、訪問看護ステーションの看護師等が指定訪問看護を行った場合に算定できる仕組みが置かれています。[3]
精神科訪問看護についても、同一建物居住者に対し、精神科を担当する主治医の精神科訪問看護指示書と精神科訪問看護計画書に基づいて指定訪問看護を行った場合の「精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)」が定められています。[3]
つまり、障害者グループホームに住んでいるという理由だけで、医療保険の訪問看護が当然に排除されるわけではありません。現行告示が訪問看護療養費を算定しない施設として列挙しているのは、病院・診療所等への入院・入所や、介護保険の特定施設入居者生活介護・認知症対応型共同生活介護の提供を受けている場合等であり、障害者総合支援法上の共同生活援助は、この列挙には含まれていません。[3]
5 「同じ利用者が両制度を使う」ことと「同じ訪問を二重請求する」ことは別問題
ここを混同すると結論を誤ります。現行の共同生活援助の医療連携体制加算(Ⅰ)~(Ⅳ)の告示を見ると、「医療保険の訪問看護を利用している者は算定しない」という一律の除外文言はありません。[1]
したがって、利用者Aさんについて、グループホームが医療連携体制加算を算定していることと、Aさんが別途、医療保険の訪問看護を利用していることは、制度上当然に両立しないとはいえません。
しかし、それは「同じ30分の看護行為を、GH側は医療連携体制加算の根拠にし、訪問看護ステーション側も訪問看護療養費として請求してよい」という意味ではありません。
6 同一の訪問・同一の看護を両方の請求根拠にするのはなぜ問題か
理由は、同じ看護行為の法的な位置付けと費用負担が衝突するからです。
・医療連携体制加算として行う看護:GHが委託契約を締結し、必要な費用を委託先へ支払う「共同生活援助事業所として行う」サービス。
・医療保険で請求する訪問看護:訪問看護指示書・訪問看護計画書に基づき、訪問看護ステーションが「指定訪問看護」として提供するサービス。
同一の時間帯・同一の看護行為を、前者では「GHが提供する障害福祉サービス」とし、後者では「訪問看護ステーションが提供する医療保険上の指定訪問看護」として同時に評価することについて、現行の厚生労働省告示・留意事項通知で明確に認める規定は確認できません。しかも、医療連携体制加算は、GHが医療機関等と委託契約を締結し、看護の提供に必要な費用を負担する仕組みです。この制度構造からみれば、同じ看護行為についてGHが障害福祉報酬を算定し、同時に訪問看護ステーションが医療保険を請求することは、制度趣旨と整合しにくいと考えられます。したがって、「同一訪問は明文上絶対に禁止されている」とまで断定するのではなくても、実務上は同一の訪問・同一の看護を二つの公的報酬の請求根拠にすることは避けるべきです。
「医療連携体制加算を取っているGHの入居者には、医療保険の訪問看護は一切入れない」――これは広すぎます。別個の指定訪問看護として算定要件を満たせば、訪問看護療養費を請求できます。
一方、「医療連携体制加算のために来た、その同じ看護訪問を訪問看護療養費でも請求する」という処理は、明確に認める根拠が確認できず、制度趣旨や委託費負担の構造とも整合しにくいため、避けるべきです。
つまり、「同じ利用者について二つの制度が並存することは可能。ただし、医療連携体制加算の看護と医療保険の指定訪問看護は、別のサービスとして実施・記録・請求する」というのが本稿の結論です。
7 結論:医療連携体制加算とは別個の訪問看護なら、訪問看護療養費を請求できる
例えば、午前中に訪問看護ステーションの看護師が、GHとの委託契約に基づく医療連携体制加算の看護を行い、午後に同じ入居者Aさんへ、主治医の訪問看護指示書に基づく個別の指定訪問看護を行うケースです。
午後の訪問が、訪問看護療養費の告示・留意事項に定める算定要件を満たしているのであれば、訪問看護ステーションは、その午後の訪問について訪問看護療養費を請求できます。GHが同じ利用者について医療連携体制加算を算定していること自体を理由に、この別個の指定訪問看護が排除されるわけではありません。[3][4]
ただし、「時間だけ形式的に分ければよい」という意味ではありません。少なくとも、目的、指示、計画、実施時間、看護内容、記録、費用負担が、それぞれの制度に沿って区分できる状態にしておく必要があります。
8 具体例で整理するとこうなる
| 例 | 実施内容 | 整理 | 理由・注意点 |
|---|---|---|---|
| A | 10:00~10:30 GHとの委託契約に基づく 医療連携体制加算の看護。訪看はGHへ 委託料を請求。 |
○ | 医療連携体制加算の典型的な 構造。 |
| B | Aと同じ10:00~10:30の看護を、訪看側 でも医療保険の訪問看護療養費として 請求。 |
× (避ける) |
同一の看護行為を二つの 制度の請求根拠にするこ とを明確に認める根拠は 確認できず、GHが委託費 を負担する制度構造・制度 趣旨とも整合しにくい。 |
| C | 10:00~10:30はGH委託業務。15:00~15:30は 主治医の指示書等に基づくAさん個人の 指定訪問看護。 |
○ | 後者が前者とは別個の指定 訪問看護として実施され、 算定要件を満たせば、訪問 看護療養費を請求できる。 |
| D | 同じ看護師が同じ日に、GH委託業務と 個別の医療保険訪問看護を連続して行う。 |
△ | 制度上の業務区分、勤務時間、 指示、記録、請求を明確に切り分け る必要がある。個別事情によっては 事前に保険者・指定権者等への確認 が望ましい。 |
9 「医薬品等は診療報酬を請求」とあるので、訪問看護も請求できる?
医療連携体制加算の留意事項通知には、衛生材料や医薬品等の費用負担について定めたうえで、「医薬品等が医療保険の算定対象となる場合は、適正な診療報酬を請求する」旨の記載があります。[2]
この一文だけを見ると、「医療連携体制加算の看護についても診療報酬を請求してよい」と読めそうですが、そうではありません。文脈上、ここで述べているのは衛生材料・医薬品等の取扱いです。訪問看護そのものを医療保険の指定訪問看護として重ねて請求できる、という規定ではありません。
むしろ、看護そのものについては、その直前でGHが委託契約を締結し、看護提供に必要な費用を医療機関等へ支払う仕組みが明示されています。条文・通知は、前後の文脈を分けて読むことが重要です。
10 実務で二つのサービスを併用する場合のチェックポイント
同一の入居者について、医療連携体制加算と医療保険の訪問看護を別個に利用する場合は、少なくとも次の点を整理しておくことをおすすめします。
- GHと医療機関・訪問看護ステーションとの医療連携体制加算に係る委託契約の範囲を明確にする。
- 医療連携体制加算として行う看護の対象者・目的・時間・内容・記録を明確にする。
- 医療保険の訪問看護については、適切な訪問看護指示書(精神科は精神科訪問看護指示書)と訪問看護計画書を整備する。
- GH委託業務と医療保険の指定訪問看護について、実施時間と記録を混在させない。
- 訪問看護ステーションからGHへの委託料請求と、医療保険請求の対象を明確に区分する。
- 同じ看護師が両方の業務を担う場合は、勤務時間・業務区分が説明できるようにする。
- 同日実施など判断が微妙な運用を行う場合は、指定権者・地方厚生(支)局・審査支払機関等に事前確認し、回答を記録しておく。
11 よくある質問
Q1 医療連携体制加算を算定している利用者は、医療保険の訪問看護を一切使えませんか?
いいえ。現行の共同生活援助の医療連携体制加算には、医療保険の訪問看護利用者を一律に除外する規定は確認できません。また、訪問看護療養費側でも、障害者総合支援法上の共同生活援助への入居そのものを一律の算定不可事由とはしていません。したがって、別個のサービスとしてそれぞれの算定要件を満たす場合は併存し得ます。[1][3]
Q2 午前は医療連携体制加算、午後は個別の訪問看護という形なら可能ですか?
はい。午後の訪問が、主治医の指示書・訪問看護計画書に基づく独立した「指定訪問看護」として実施され、訪問看護療養費の算定要件を満たしているのであれば、その別個の訪問について訪問看護療養費を請求できます。単に帳簿上だけ時間を分けるのではなく、目的・内容・実施時間・記録・費用負担を実質的に区分することが必要です。
Q3 医療連携体制加算の訪問時に、個別の訪問看護も一緒に済ませれば効率的では?
効率面ではそう考えたくなりますが、同一の看護提供をGHの障害福祉報酬と訪問看護ステーションの医療保険請求の双方の根拠にすることを明確に認める規定は確認できません。また、GHが委託契約に基づき看護提供の費用を負担するという医療連携体制加算の仕組みからみても、同一訪問を二重に評価することは制度趣旨と整合しにくいと考えられます。したがって、同一の訪問・同一の看護を双方の請求根拠にする運用は避けるべきです。
Q4 訪問看護ステーションではなく病院・診療所の看護師が来る場合は?
医療連携体制加算側の基本的な考え方は同じです。ただし、医療機関側で医療保険を請求する場合は、訪問看護ステーションの「訪問看護療養費」ではなく、診療報酬上の在宅患者訪問看護・指導料等が問題になります。個別の算定要件は別途確認が必要です。
12 まとめ
結論として、医療連携体制加算として行う看護とは別個に、主治医の指示書等に基づく指定訪問看護を実施し、訪問看護療養費の算定要件を満たす場合、その別個の訪問について訪問看護療養費を請求できます。
したがって、共同生活援助の入居者について、GHが医療連携体制加算を算定していることと、その利用者が別途、医療保険の訪問看護を利用することは両立し得ます。大切なのは、二つのサービスを実質的に区分することです。
しかし、医療連携体制加算の看護は、GHが委託契約を結び、必要な費用を負担して「共同生活援助事業所として行う」サービスです。一方、訪問看護療養費は、訪問看護ステーションが主治医の指示書等に基づき「指定訪問看護」を行ったことに対する医療保険給付です。
一方、同一の訪問・同一の看護行為を医療連携体制加算と訪問看護療養費の双方の請求根拠にすることは、明確に認める根拠が確認できず、GHが委託費を負担する制度構造・制度趣旨とも整合しにくいと考えられます。したがって、同一訪問の二重評価は避け、医療連携体制加算の看護と医療保険の指定訪問看護を、それぞれ独立したサービスとして実施・記録・請求することが重要です。
注意事項
本稿は一般的な制度解説です。個別事例では、利用者の保険種別、疾病、指示書、訪問内容、同一建物の利用者数、訪問回数等によって医療保険側の算定可否が変わります。
また、障害福祉報酬・診療報酬とも改定や疑義解釈が行われます。実際の請求に当たっては、最新の告示・通知・疑義解釈を確認し、必要に応じて指定権者や地方厚生(支)局、審査支払機関等へ確認してください。
根拠資料
[1] 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号)別表第15・7 医療連携体制加算 厚生労働省サイト
[2] 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(平成18年10月31日障発第1031001号)第二の3(6)⑭、第二の2(7)⑥ 厚生労働省サイト
[3] 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法」(平成20年厚生労働省告示第67号・現行) 厚生労働省サイト
[4] 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」訪問看護ステーション関係(令和8年厚生労働省告示第74号、令和8年3月5日保発0305第19号等) 厚生労働省サイト
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