自立訓練や就労移行支援などの「有期限サービス」には、あらかじめ利用期間の目安となる「標準利用期間」が定められています。この期間を超えて利用が長引くと、事業所の報酬が減額される「標準利用期間超過減算」が適用されることがあります。
この記事では、対象となるサービスや減算が生じる仕組み、実務で気をつけたいポイントを、具体的な数値例を交えながら、わかりやすく解説します。
1.標準利用期間超過減算とは
自立訓練や就労移行支援などのサービスは、「一定の期間内に、目標としている状態(たとえば一般就労や地域生活への移行など)を目指す」という考え方にもとづいて設計されています。この「一定の期間」の目安として定められているのが「標準利用期間」です。
標準利用期間超過減算とは、事業所全体でみたときに利用者の平均的な利用期間が、標準利用期間を大きく超えて長期化している場合に、その月の報酬(所定単位数)が減額される仕組みです。
この減算は「利用者ひとりが長く利用している」ことではなく、「事業所ごとの利用者全体の平均利用期間」が基準を超えているかどうかで判定されます。個々の利用者の支給決定の状況とは別の仕組みとして理解しておくことが大切です。
2.対象となる4つのサービス
標準利用期間超過減算の対象となるのは、次の4つのサービスです。いずれも、利用期間があらかじめ区切られている「有期限サービス」です。
- 自立訓練(機能訓練):身体機能の維持・向上のためのリハビリテーションなどを行うサービス
- 自立訓練(生活訓練):食事や家事など、日常生活能力の維持・向上を支援するサービス(宿泊型自立訓練は対象外です)
- 就労移行支援:一般企業などへの就労を目指し、就労に必要な知識・能力の向上のための訓練を行うサービス
- 自立生活援助:グループホームや入所施設等から一人暮らしに移行した方等を対象に、定期的な巡回訪問等により必要な支援を行うサービス
3.各サービスの標準利用期間と減算対象となる期間
各サービスの標準利用期間と、減算の対象となる期間(=標準利用期間に6か月を加えた期間)は、以下のとおりです。
- 自立訓練(機能訓練):標準利用期間18か月 → 平均利用期間が24か月を超えると減算対象
- 自立訓練(生活訓練):標準利用期間24か月(長期入院・入所していた方は36か月)→ 平均利用期間が30か月(同42か月)を超えると減算対象
- 就労移行支援:標準利用期間24か月(あん摩マッサージ指圧師等養成施設利用の場合は36か月 or 60か月)→ 平均利用期間が30か月(同42か月or66か月)を超えると減算
- 自立生活援助:標準利用期間12か月 → 平均利用期間が18を超えると減算対象
表1.サービス別 標準利用期間と減算対象となる期間(令和6年度時点)
| サービスの種類 | 標準利用期間 | 減算対象となる期間 (標準利用期間+6か月を超える場合) |
備考 | |
|---|---|---|---|---|
| 自立訓練 (機能訓練) |
18か月 | 24か月を超える場合 | ― | |
| 自立訓練 (生活訓練) |
24か月 (長期間、病院に入院又は施設に 入所していた方は36か月) |
30か月を超える場合 (上記の方は42か月を超える場合) |
宿泊型自立訓練は 対象外 |
|
| 就労移行支援 | 24か月 (あん摩マッサージ指圧師等の 資格取得を目的とする養成施設を 利用する場合は36か月又は60か月) |
30か月を超える場合 (上記の場合は42か月又は 66か月を超える場合) |
― | |
| 自立生活援助 | 12か月 | 18か月を超える場合 |
※減算率:いずれのサービスも、対象となる月について所定単位数の100分の95(5%減算)を算定します。
※「減算対象となる期間」は、利用者ごとの利用期間(サービス利用開始から1年を超えていない方を除く)の平均値が、この期間を超えた場合に生じます。
出典:平成18年厚生労働省告示第523号(障害福祉サービス等報酬告示)、平成18年10月31日障発第1031001号「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(最終改正:令和5年3月31日障発0331第16号)
では、このうち就労移行支援(標準利用期間24か月・減算対象となる期間30か月)を例に、具体的な計算の流れはどのようになるのでしょうか?
4.減算の判定方法(計算の流れ)と具体例
減算の対象になるかどうかは、次の1~5の流れで、毎月、あらためて判定します。
1. 利用者ごとの「利用期間」を数えます。サービス利用開始日が月の初日であればその月を含み、2日目以降であれば翌月から数え、当月末日までの月数を計算します。
2. 利用者のうち、サービス利用開始から1年を超えていない方は、平均を計算する対象から除きます。
3. 残った利用者(判定対象者)の利用期間を合計し、人数で割って「平均利用期間」を算出します。
4. その月の平均利用期間が、サービスごとの「標準利用期間+6か月」を超えているかどうかを判定します。
5. 超えている場合は、その月について、利用者全員(1で除いた、利用開始から1年以内の方も含みます)を対象に、所定単位数の100分の95(5%減算)を算定します。
具体例:ある就労移行支援事業所の場合(令和6年9月末時点)
標準利用期間24か月・減算対象となる期間が30か月(24か月+6か月)の就労移行支援を例に、実際の数字で確認してみましょう。
まず、利用者ごとの利用期間の数え方です。サービス利用開始日が月の初日か、2日目以降かによって、数え始める月が変わります。
- Aさん(利用開始日:令和3年10月1日):利用開始日が月の初日のため、令和3年10月を1か月目として数えます。令和6年9月末までで36か月になります。
- Bさん(利用開始日:令和4年6月15日):利用開始日が月の2日目以降のため、翌月の令和4年7月を1か月目として数えます。令和6年9月末までで27か月になります。
この事業所には、利用開始から1年を超えている(=平均の計算対象になる)利用者が6名おり、令和6年9月末時点の利用期間は、それぞれ次のとおりです。
- Aさん:36か月
- Bさん:27か月
- Cさん:31か月
- Dさん:29か月
- Eさん:24か月
- Fさん:33か月
6名の利用期間を合計すると180か月です。180か月を6名で割ると、平均利用期間は30.0か月になります。就労移行支援の減算対象となる期間は「30か月を超える場合」ですので、令和6年9月時点ではちょうど30か月であり、30か月を超えてはいないため、この事業所は令和6年9月分については減算の対象になりません。
なぜ「毎月」の判定が必要なのか
ここで、利用者の顔ぶれがまったく変わらなかった場合の、翌月(令和6年10月末)を考えてみます。入退所がなくても、暦が1か月進めば、6名全員の利用期間はそれぞれ自動的に1か月ずつ増えます。
Aさん37か月、Bさん28か月、Cさん32か月、Dさん30か月、Eさん25か月、Fさん34か月となり、合計は186か月、平均利用期間は186か月÷6名=31.0か月です。31.0か月は「30か月を超える場合」に該当するため、令和6年10月分については、この事業所の就労移行支援の利用者全員について、所定単位数の100分の95(5%減算)を算定することになります。
このように、利用者の顔ぶれや支援内容がまったく変わらなくても、月が変わって利用期間が積み上がるだけで、平均利用期間が基準を超えてしまうことがあります。そのため、標準利用期間超過減算に該当するかどうかは、前月や年度当初の状況をもとに判断するのではなく、毎月末時点の実績にもとづいて、月ごとに計算し直す必要があります。実際には利用者の終了(一般就労等)や新規利用者の受け入れによっても平均は変動しますので、月次でのモニタリングが欠かせません。なお、ある月に減算対象になっても、翌月以降に平均利用期間が基準内に戻れば、その月からは減算されません。
5.支給決定の更新(利用期間の延長)があった場合の取り扱い
就労移行支援や自立訓練では、標準利用期間内の利用だけでは十分な成果が得られない場合に、市町村の支給決定の更新によって利用期間を延長できる仕組みがあります。標準利用期間を超えた後の更新については、原則として市町村審査会の個別審査を経たうえで、最大1年間(原則1回)の更新が認められます。
ここで実務上よく問題になるのが、「支給決定が更新され、延長された期間は、標準利用期間超過減算の計算で使う『標準利用期間に6か月を加えて得た期間』に含まれるのか」という点です。
結論から言うと、含まれます。支給決定が適正に更新されているかどうかにかかわらず、延長後の期間もそのまま利用者の「利用期間」としてカウントされ続けます。
これは、根拠となる留意事項通知(平成18年10月31日障発第1031001号、最終改正:令和5年3月31日障発0331第16号)が、「利用者ごとの利用期間」を次のように定めているためです。
「指定障害福祉サービス事業所等が提供する各サービスの利用者(サービスの利用開始から1年を超過していない者を除く。)ごとの利用期間の平均値が標準利用期間に6月間を加えて得た期間を超えている1月間について、指定障害福祉サービス事業所等における当該サービスの利用者全員につき、減算するものとする。」
「利用者ごとの利用期間」は、当該利用者のサービス利用開始日から各月の末日までの間の月数を算出するものとする。この場合において、サービス利用開始日が月の初日の場合にあってはサービス利用開始日の属する月を含み、月の2日目以降の場合にあっては当該月を含まず、翌月以降から起算するものとする。
上記のとおり、この定義には「支給決定の有効期間」や「支給決定の更新」という言葉は一切出てきません。あくまで「サービス利用開始日」を起点とした通算の経過月数だけで、機械的に利用期間を計算する決まりになっています。つまり、支給決定の更新によって適法に利用を継続している期間であっても、その分だけ利用期間が計算から除外されたり、リセットされたりすることはありません。
具体例:支給決定が更新されたCさんのケース
就労移行支援を利用しているCさんを例に、具体的に確認してみましょう。
- サービス利用開始日:令和4年4月1日(月の初日)
- 標準利用期間:24か月(令和4年4月1日~令和6年3月31日が当初の支給決定期間)
- 令和6年3月、市町村審査会の個別審査を経て支給決定が12か月更新され、令和6年4月1日~令和7年3月31日まで利用を継続することが認められた
この場合でも、標準利用期間超過減算の判定で使う「利用期間」は、支給決定が更新されているかどうかにかかわらず、令和4年4月を1か月目として、そのまま数え続けます。
令和6年9月末時点でのCさんの利用期間は30か月です。標準利用期間(24か月)に6か月を加えた期間もちょうど30か月ですので、この時点ではまだ「30か月を超える」状態ではありません。しかし、令和6年10月末時点になると、Cさんの利用期間は31か月となり、「30か月を超える」状態になります。支給決定の更新(延長)は令和7年3月31日まで有効ですが、それとは関係なく、令和6年10月分からは、Cさんの利用期間は減算判定の基準を超えていることになります。
このように、Cさんのように適正な手続きを経て支給決定を更新している利用者であっても、その利用期間は他の利用者と同じように、事業所全体の平均利用期間の計算にそのまま組み込まれます。延長を受けている利用者が多い事業所ほど、平均利用期間が押し上げられやすくなる点に注意が必要です。
支給決定の更新(延長)は、あくまで利用者が適法にサービスを利用し続けるための手続きです。標準利用期間超過減算の計算上の「標準利用期間」や「利用期間」の考え方そのものを変えるものではありません。支給決定を更新したからといって、その利用者を平均利用期間の計算から除外したり、利用期間をリセットしたりすることはできない、という点を押さえておきましょう。
なお、この整理は留意事項通知に定められている「利用期間」の定義そのものにもとづくものです。個別のケースで判断に迷う場合は、算定根拠となる告示・通知の該当条文をあらためてご確認いただくか、国民健康保険団体連合会(国保連)や指定権者(都道府県・市町村)の障害福祉担当窓口にご確認いただくことをおすすめします。
6.減算を防ぐために事業所でできること
標準利用期間超過減算は、日頃のモニタリングと支援の進め方の工夫によって、ある程度リスクを抑えることができます。
- 毎月、利用者ごとの利用期間と事業所全体の平均利用期間を集計し、基準に近づいていないかを確認する(自事業所で簡単な集計表を用意して管理するのがおすすめです)
- 個別支援計画の見直しのタイミングで、一般就労や次のステップへ移行する時期の見通しを具体的に確認し、必要な支援を前倒しで行う
- 利用が長期化しそうな利用者や、支給決定の更新を受けている利用者がいる場合は、早めに相談支援専門員と情報共有し、今後の方針を検討する
- 新規利用者の受け入れ状況によっても平均利用期間は変動するため、利用者構成全体を定期的に見直す
7.まとめ
標準利用期間超過減算は、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、自立生活援助の4サービスに設けられている仕組みで、事業所全体の平均利用期間が標準利用期間+6か月を超えると、その月の報酬が5%減算されます。個々の利用者の支給決定手続きとは別の基準で判定される点に注意し、日頃から利用状況を把握しておくことが、安定した事業所運営につながります。
制度は改正されることがあるため、実際の算定にあたっては、最新の告示・通知や自治体の指定基準等でご確認ください。
参考・根拠資料
- 平成18年厚生労働省告示第523号「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(厚生労働省)
- 平成18年10月31日障発第1031001号「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(最終改正:令和5年3月31日障発0331第16号)(厚生労働省/厚生労働省法令等データベースサービス)
- 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に関する資料(厚生労働省)
※支給決定の更新(延長)の取り扱いに関する整理は、上記留意事項通知における「利用者ごとの利用期間」の定義にもとづくものです。個別の算定に不明点がある場合は、指定権者(都道府県・市町村)や国保連へ別途ご確認ください。
※本記事は令和6年度時点の制度にもとづいて作成しています。個別のケースについては、必ず最新の告示・通知および管轄自治体への確認をお願いいたします。
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