就労継続支援B型の事業所を開業・運営するには人員配置基準を守った人員の配置をしなければ開業時には指定はとれませんし、開業後にもサービス提供職員欠如減算(人員欠如減算)などの報酬の減算となってしまいます。そして、就労継続支援B型の人員配置基準は就労継続支援B型のどの報酬体系を選択するかによって影響を受けます。
就労継続支援B型の報酬体系
新規指定時に就労継続支援B型の人員配置を考える前提として、就労継続支援B型の「どの報酬体系」を選択するかを考える必要があります。
就労継続支援B型の報酬体系
就労継続支援B型の報酬体系には以下の2パターンの報酬体系があり、各パターンのなかはさらに3種類の報酬体系に分けられています。
- 「平均工賃月額」に応じて評価する報酬体系
- 「利用者の就労や生産活動等への参加等」をもって一律に評価する報酬体系
「平均工賃月額」に応じて評価する報酬体系
- 就労継続支援B型サービス費Ⅰ 従業者配置6:1
- 就労継続支援B型サービス費Ⅱ 従業者配置7.5:1
- 就労継続支援B型サービス費Ⅲ 従業者配置10:1
「利用者の就労や生産活動等への参加等」をもって一律に評価する報酬体系
- 就労継続支援B型サービス費Ⅳ 従業者配置6:1
- 就労継続支援B型サービス費Ⅴ 従業者配置7.5:1
- 就労継続支援B型サービス費Ⅵ 従業者配置10:1
「利用者の就労や生産活動等への参加等」をもって一律に評価する報酬体系は令和3年度の報酬改定時に新設されたものですが、生産活動の平均工賃月額と関係なく報酬単価が決められてしまうため、こちらの報酬体系を選択している事業所の数は多くないようです。そのため以下では「平均工賃月額」に応じて評価する報酬体系を選択した場合を解説していきます。
「平均工賃月額」に応じて評価する報酬体系
「平均工賃月額」に応じて評価する報酬体系を選択した就労継続支援B型の人員配置には3パターンの人員配置基準があります。
- 従業者配置 6:1
- 従業者配置 7.5:1
- 従業者配置 10:1
- 従業者配置6:1の場合は、利用者6人に対して、管理者・サビ管を抜いた従業者(職業指導員、生活支援員)1人の配置が必要です。
- 従業者配置7.5:1の場合は、利用者7.5人に対して、管理者・サビ管を抜いた従業者(職業指導員、生活支援員)1人の配置が必要です。
- 従業者配置10:1の場合は、利用者10人に対して、管理者・サビ管を抜いた従業者(職業指導員、生活支援員)1人の配置が必要です。
「従業者配置6:1」「従業者配置7.5:1」「従業者配置10:1」の違いは、利用者に対する従業者の配置だけでなく、事業所が受けとる報酬(訓練等給付)単位にも違いがあります。※以下の報酬単価は「平均工賃月額」に基づく報酬体系のものです。
従業者配置6:1の場合の報酬単位/就労継続支援B型サービス費Ⅰ
平均工賃月額 利用定員 |
4万5千円 以上 |
3万5千円以上 4万5千円未満 |
3万円以上 3万5千円未満 |
2万5千円以上 3万円未満 |
2万円以上 2万5千円未満 |
1万5千円以上 2万円未満 |
1万円以上 1万5千円未満 |
1万円 未満 |
20人 以下 |
837単位 | 805単位 | 758単位 | 738単位 | 726単位 | 703単位 | 673単位 | 590単位 |
21人以上 40人以下 |
746単位 | 717単位 | 676単位 | 660単位 | 637単位 | 624単位 | 600単位 | 526単位 |
41人以上 60人以下 |
700単位 | 674単位 | 636単位 | 620単位 | 600単位 | 586単位 | 563単位 | 494単位 |
61人以上 80人以下 |
688単位 | 662単位 | 625単位 | 609単位 | 589単位 | 575単位 | 553単位 | 485単位 |
81人 以上 |
666単位 | 640単位 | 605単位 | 590単位 | 570単位 | 557単位 | 535単位 | 468単位 |
従業者配置7.5:1の場合の報酬単位/就労継続支援B型サービス費Ⅱ
平均工賃月額 利用定員 |
4万5千円 以上 |
3万5千円以上 4万5千円未満 |
3万円以上 3万5千円未満 |
2万5千円以上 3万円未満 |
2万円以上 2万5千円未満 |
1万5千円以上 2万円未満 |
1万円以上 1万5千円未満 |
1万円 未満 |
20人 以下 |
748単位 | 716単位 | 669単位 | 649単位 | 637単位 | 614単位 | 584単位 | 537単位 |
21人以上 40人以下 |
666単位 | 637単位 | 596単位 | 580単位 | 557単位 | 544単位 | 520単位 | 478単位 |
41人以上 60人以下 |
625単位 | 599単位 | 561単位 | 545単位 | 525単位 | 511単位 | 488単位 | 449単位 |
61人以上 80人以下 |
614単位 | 588単位 | 551単位 | 535単位 | 515単位 | 501単位 | 479単位 | 440単位 |
81人 以上 |
594単位 | 568単位 | 533単位 | 518単位 | 498単位 | 485単位 | 463単位 | 425単位 |
従業者配置10:1の場合の報酬単位/就労継続支援B型サービス費Ⅲ
平均工賃月額 利用定員 |
4万5千円 以上 |
3万5千円以上 4万5千円未満 |
3万円以上 3万5千円未満 |
2万5千円以上 3万円未満 |
2万円以上 2万5千円未満 |
1万5千円以上 2万円未満 |
1万円以上 1万5千円未満 |
1万円 未満 |
20人 以下 |
682単位 | 653単位 | 611単位 | 594単位 | 572単位 | 557単位 | 532単位 | 490単位 |
21人以上 40人以下 |
609単位 | 584単位 | 547単位 | 532単位 | 511単位 | 497単位 | 475単位 | 438単位 |
41人以上 60人以下 |
564単位 | 541単位 | 508単位 | 493単位 | 474単位 | 461単位 | 441単位 | 405単位 |
61人以上 80人以下 |
554単位 | 530単位 | 498単位 | 483単位 | 465単位 | 452単位 | 432単位 | 397単位 |
81人 以上 |
535単位 | 512単位 | 480単位 | 467単位 | 449単位 | 437単位 | 417単位 | 384単位 |
※令和3年度の障がい福祉報酬改定によって、就労継続支援B型サービス費Ⅲ(従業者配置7.5:1)と就労継続支援B型サービス費Ⅳ(従業者配置10:1)という報酬区分が新設され、令和6年度の障がい福祉報酬改定によって、就労継続支援B型サービス費Ⅰ(従業者配置6:1)、就労継続支援B型サービス費Ⅱ(従業者配置7.5:1)、就労継続支援B型サービス費Ⅲ(従業者配置10:1)となりました。
新規で就労継続支援B型を開設される事業所様も、報酬単価の高い「従業者配置6:1」もしくは「従業者配置7.5:1」で指定申請する場合がほとんどのようです。
就労継続支援B型の人員配置基準
管理者
常勤1人。
事務所の従業者及び業務の管理、その他の管理的業務を一元的に行います。管理業務に支障がない場合は他の職務の兼務が可能です。
サービス管理責任者
個別支援計画の作成、従事者に対する技術指導等のサービス内容の管理、他事業や関係機関との連絡調整等を行います。
- 利用者数60以下:1人以上
- 利用者数61以上:1人に、利用者数が60人を超えて40又はその端数を増すごとに1人を加えて得た数以上
※サービス管理責任者は、1人以上は常勤であること。
職業指導員及び生活支援員
職業指導員は、障害をお持ちの方でも力が発揮できるように実際に一緒に仕事をしながら技術指導などを行います。生活支援員は、身の回りの支援から創作・生産活動まで、生活に密着しながら障がいをお持ちの方の自立をサポートします。
- 常勤換算で、利用者数を 6 or 7.5 or 10 で除した数以上
- 職業指導員 1人以上
- 生活支援員 1人以上
※職業指導員と生活支援員のうち1人以上は常勤であること。
就労継続支援B型の人員配置基準の考え方
就労継続支援B型の人員配置には、「従業者配置6:1」「従業者配置7.5:1」「従業者配置10:1」の3パターンがあることを解説しましたが、これは「利用者数」に対しての「従業者数」が6:1の配置割合になるのか、7.5:1の配置割合になるか、10:1の配置割合になるかどうかの違いです。
そして、ここでいう「利用者数」は、原則として「前年度の平均利用者数」のことをいいます。ただ、新規で指定をとった場合は「前年度(前年4月1日~本年3月末日)」の実績がまだありませんので、「前年度」の実績ができるまでは、以下のような方法で「利用者数」を計算することになります。
- 指定時から6ヶ月未満の実績しかない
利用定員の90%
- 指定時から6ヶ月以上1年未満の実績ができた
直近6ヶ月間の「延利用者数」÷直近6ヶ月間の「開所日数」
- 指定時から1年以上の実績ができた
直近1年間の「延利用者数」÷直近1年間の「開所日数」
- 指定時から1年以上経過し、前年度(前年4月1日~本年3月31日)の実績ができた
前年度(前年4月1日~本年3月31日)の「延利用者数」÷前年度(前年4月1日~本年3月31日)の「開所日数」
以上のように、就労継続支援B型の人員配置では、「利用者数」を計算してから、職業指導員や生活支援員の人員配置を考えることになります。
例えば、令和3年8月1日に就労継続支援B型の指定を取得したとした場合(利用定員20人とする)、各月の「利用者数」は以下の計算で算出します。
年月 | 利用者数 |
令和3年8月 | 定員の90% (利用定員20人×0.9=利用者数18人) |
令和3年9月 | 定員の90% (利用定員20×0.9=利用者数18人) |
令和3年10月 | 定員の90% (利用定員20×0.9=利用者数18人) |
令和3年11月 | 定員の90% (利用定員20×0.9=利用者数18人) |
令和3年12月 | 定員の90% (利用定員20×0.9=利用者数18人) |
令和4年1月 | 定員の90% (利用定員20×0.9=利用者数18人) |
令和4年2月 | 直近6ヶ月間の平均利用者数 8月~1月の「延利用者数」÷8月~1月の「開所日数」 |
令和4年3月 | 直近6ヶ月間の平均利用者数 9月~2月の「延利用者数」÷9月~2月の「開所日数」 |
令和4年4月 | 直近6ヶ月間の平均利用者数 10月~3月の「延利用者数」÷10月~3月の「開所日数」 |
令和4年5月 | 直近6ヶ月間の平均利用者数 11月~4月の「延利用者数」÷11月~4月の「開所日数」 |
令和4年6月 | 直近6ヶ月間の平均利用者数 12月~5月の「延利用者数」÷12月~5月の「開所日数」 |
令和4年7月 | 直近6ヶ月間の平均利用者数 1月~6月の「延利用者数」÷1月~6月の「開所日数」 |
令和4年8月 | 直近1年間の平均利用者数 8月~7月の「延利用者数」÷8月~7月の「開所日数」 |
令和4年9月 | 直近1年間の平均利用者数 9月~8月の「延利用者数」÷9月~8月の「開所日数」 |
令和4年10月 | 直近1年間の平均利用者数 10月~9月の「延利用者数」÷10月~9月の「開所日数」 |
令和4年11月 | 直近1年間の平均利用者数 11月~10月の「延利用者数」÷11月~10月の「開所日数」 |
令和4年12月 | 直近1年間の平均利用者数 12月~11月の「延利用者数」÷12月~11月の「開所日数」 |
令和5年1月 | 直近1年間の平均利用者数 1月~12月の「延利用者数」÷1月~12月の「開所日数」 |
令和5年2月 | 直近1年間の平均利用者数 2月~1月の「延利用者数」÷2月~1月の「開所日数」 |
令和5年3月 | 直近1年間の平均利用者数 3月~2月の「延利用者数」÷3月~2月の「開所日数」 |
令和5年4月 | 前年度の平均利用者数 前年度(令和4年4月~令和5年3月)の「延利用者数」 ÷前年度(令和4年4月~令和5年3月)の「開所日数」 |
令和6年4月 | 前年度の平均利用者数 前年度(令和5年4月~令和6年3月)の「延利用者数」 ÷前年度(令和5年4月~令和6年3月)の「開所日数」 |
例えば、上記のように令和3年8月1日を指定日とした場合(従業員配置6:1とする)
- 令和3年8月1日の利用者数は、20人×0.9=18人
- 利用者数18人÷6=3.0
- 職業指導員と生活支援員の合計で3.0人以上の配置が必要
- 職業指導員と生活支援員のうち1人以上は常勤
という人員配置が必要になります。
就労継続支援B型の人員配置は、指定時からの実績期間によって計算の対象となる期間が異なりますので、「前年度」の実績ができるまでは、月ごとに平均利用者数を計算して、従業者の人員配置基準となる数値を算出しなければなりません。
就労継続支援B型の勤務形態一覧表(シフト表)の作成
「利用者数」から人員配置基準の必要配置数を計算できたら、次に勤務形態一覧表(シフト表)を作成していきます。勤務形態一覧表は人員配置基準をクリアしているかどうかを判断するものですので、必ず毎月の勤務形態一覧表(予定分と実績分)を作成して人員配置を確認し保管するようにしましょう。
上記のモデルケース(令和3年8月1日指定)で、開業時の人員配置基準を作成するとすれば以下のような配置になります(シンプルに考えられるように1週間分の勤務形態一覧表としています)。
職種 | 氏名 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 週の 勤務時間 |
常勤 換算 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | ||||
管理者 サビ管 |
A | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 | 40.00 | 1.0 | ||
職業指導員 | B | 8 | 8 | 8 | 8 | 8 | 40.00 | 1.0 | ||
職業指導員 | C | 4 | 4 | 4 | 4 | 4 | 20.00 | 0.5 | ||
生活支援員 | Ⅾ | 8 | 8 | 8 | 24.00 | 0.6 | ||||
生活支援員 | E | 8 | 8 | 16.00 | 0.4 | |||||
生活支援員 | F | 5 | 5 | 5 | 5 | 5 | 25.00 | 0.6 |
- 利用定員20人
- 利用者数20人×0.9=18人
- 18人÷6(従業者配置6:1)=3.0
- 営業日:月曜日~金曜日
- 職業指導員Bが常勤(所定労働時間 週40時間)
この場合、就労継続支援B型の人員配置基準の必要配置数は「3.0」となります。
上記の勤務形態一覧表では、管理者サビ管を除いた職員の配置は、職業指導員B 1.0+職業指導員C 0.5+生活支援員D 0.6+生活支援員E 0.4+生活支援員F 0.6=3.1となり、必要配置数の3.0をクリアしていることになります。
職種 | 勤務時間 (h) |
常勤 換算 |
職業指導員B | 40.00 | 1.0 |
職業指導員C | 20.00 | 0.5 |
生活支援員D | 24.00 | 0.6 |
生活支援員E | 16.00 | 0.4 |
生活支援員F | 25.00 | 0.6 |
合計 | 125.00 | 3.1 |
※常勤換算を計算する際の小数点第2位以下は切り捨て。
人員配置についてのQ&A
Q.看護師・理学療法士・作業療法士・生活支援員等の職員が、病欠や年休(有給休暇等)・休職等により出勤していない場合、その穴埋めを行わなければならないのか?
A.常勤職員と非常勤職員とで取り扱いが異なります。
- 常勤職員:上記理由により欠勤している場合、その期間が歴月で1月を超えるものでない限り、常勤として勤務したものとして常勤換算に含めることができる。
- 非常勤職員:上記理由により欠勤している場合、常勤換算に含めることはできない。
<平成19年12月19日付け障害福祉サービスに係るQ&A(指定基準・報酬関係)VOL2 問6>
※病欠や休職については常勤職員であったとしても常勤換算に含めることを認めない指定権者もあるようです。人員配置を考える際には必ず指定権者に確認するようにしましょう。
就労継続支援B型の人員配置基準は、開業時(指定時)はもちろん開業後(指定後)も遵守しなければならない基準です。しかも開業後は「前年度」の実績期間ができるまではその必要配置数も毎月変動しますので、毎月の勤務形態一覧表を作成する際には注意するようにしましょう。
当事務所では、大阪・京都・奈良での就労継続支援B型の開業支援や運営支援もおこなっており、実績も豊富です。就労継続支援B型の開業や運営でお困りの方は当事務所までご連絡ください。