就労定着支援は、就労移行支援等を利用し、一般就労に移行した障がい者の就労に伴う生活上の支援ニーズに対応できるよう、事業所と家族との連絡調整等の支援を一定期間にわたり行うサービスです。
事業所は、障がい者との対面による相談を通じて生活面の課題を把握し、雇用した企業への訪問や関係機関との連絡調整や、それに伴う課題解決に向けて必要な支援を行います。
目次
就労定着支援事業の開設の手順
就労定着支援事業を行うためには、就労定着支援の事業所としての指定を受ける必要があります。また、就労移行支援等の一定の実績も必要になります。
1、就労移行支援等の就労実績
就労定着支援は、就労移行支援、就労継続支援、生活介護、自立訓練(就労移行支援等)に係る指定障がい福祉サービス事業者であって、過去3年間において3人以上の障がい者を通常の事業所に新たに雇用させているものでなければなりません。
2、都道府県(市町村)から就労定着支援の「指定」を受ける。
都道府県(市町村)ごとに就労定着支援の指定申請手続きのスケジュールが決められています。その就労定着支援の指定申請スケジュールに合わせて役所担当課で調査や協議を行い、資料収集、書類作成をしていくことになります。就労定着支援の指定日(事業開始日)をいつに希望するかによって指定申請の締切日が変わります。
例えば、
- 大阪市の場合 指定申請・受理(指定日前月10日まで)→ 審査 → 指定
- 京都市の場合 指定申請・受理 → 審査(概ね2ヶ月)→ 指定
- 奈良市の場合 指定申請・受理(指定日2ヶ月前末日まで)→ 審査 → 指定
就労定着支援の指定申請では、主に就労定着支援の人員基準を満たしているか、一般就労の支援実績がどのくらいあるのかの審査がなされます。就労定着支援の指定申請の前提として就労移行支援事業等の指定を受けていますので、就労移行支援事業等と一体的に運営するのであれば事務室や設備・備品等は兼用可能です。
Ⅰ.就労定着支援事業の指定申請が受理されるためには、就労定着支援の人員配置基準(人員基準)を満たしていなければいけません。
就労定着支援事業の指定申請が受理されるためには、サービス管理責任者や就労定着支援員などの人員を配置します。
就労定着支援を就労移行支援等と同一の事業所で一体的に運営する場合には、サービス管理責任者をそれぞれの利用者の合計数に応じて配置する必要があります。
指定就労定着支援事業の人員基準
職 種 | 就労定着支援の人員配置基準 | 常勤要件 | 備考 |
---|---|---|---|
管理者 | 1名以上 | 兼務可 | |
サービス 管理責任者 |
・利用者60人以下…1人以上 ・利用者60人以上…1人に、利用者が60人を超えて40 or その端数を増すごとに+1人以上※就労移行等と同一の事務所で一体的に運営する場合は、それぞれの利用者の合計数に応じて配置。 |
常勤 | ・資格要件 ・実務経験 ・研修要件 |
就労定着支援員 | 常勤換算方法で、利用者の数を40で除した数以上 | 資格不要 |
Ⅱ.就労定着支援事業の指定申請が受理されるためには、物件の間取りが適切であり、都市計画法、建築基準法、バリアフリー条例(京都市)、まちづくり条例(京都府)、消防法に適合していなければなりません。
就労定着支援事業所として使用する建物の使用部分が200㎡を超える場合には、建築基準法上の「用途変更の確認申請」という申請が必要になります。また、消防法の要請から誘導灯や非常警報装置などの消防設備を設置しなければいけませんので、関係各部署と慎重に協議を進めていきます。
ただし、就労移行支援等の指定をうける際にこれらの要件をクリアしているでしょうから就労定着支援の指定申請の際にはそれほど問題になることはないでしょう。
指定就労定着支援事業の設備基準
設 備 | 要 件 |
---|---|
事務室等 |
事務室及び受付等のスペース(相談室)が必要です。 業務に支障がない場合は他事業との兼用も可能。 |
Ⅲ.就労定着支援事業では、「利用者数の取扱い」と「新規指定の際の報酬区分」が就労移行支援等とは異なりますので注意しましょう。
利用者数の取扱い
利用者の数は前年度の平均値(前年度の「全利用者の延べ数」を当該前年度の「開所月数」で除した数)となります。
ただし、新設の場合と前年度において1年未満の実績しかない場合は次のとおりになります。
- 新設の時点から6月未満の間
一体的に運営する就労移行支援等を受けた後に就労し、就労を継続している期間が6月に達した者の数の過去3年間の総数の70% - 新設の時点から6月以上1年未満の間
直近の6月における全利用者の延べ数を6で除して得た数 - 新設の時点から1年以上経過している場合
直近1年間における全利用者の延べ数を12で除して得た数
新規指定の際の報酬区分
就労定着支援については、「就労定着率」に応じて基本報酬を算定する仕組みとなっています。「就労定着率」は、過去3年間に就労定着支援を受けた総利用者数のうち前年度末において就労が継続している者の数の割合から算出します。
ただし、新規指定の場合においては、一体的に運営する就労移行支援等における過去3年間の就職者の総数のうち指定を受ける前月末日において就労が継続している者の数の割合から算出します。
3、指定申請書類が受理されて審査を経た後に、ようやく就労定着支援の「指定」を取得することができます。
事業所としての指定を取得することも大切ですが、就労定着支援の指定を取得した後の「運営」こそが重要といえます。指定を取得することによってようやく事業運営のスタートラインに立てただけなのです。
とくに、就労定着支援事業のような障がい福祉サービス事業では、コンプライアンス(法令遵守)を意識した経営が必要です。当事務所では、法令に適合した運営を行っていただけるように運営コンサルティングサービスも行っております。
また、就労定着支援事業では、就労移行支援等と一体的に運営されますから就労定着支援だけといった考え方よりも就労移行支援等と就労定着支援を一体とした事業運営が大切です。障がいをもつ方の一般就労につながるような支援を目指していきましょう。
就労定着支援事業の開設に詳しい行政書士が支援
就労定着支援事業所をはじめとする障がい福祉サービス事業の指定申請では、行政によって申請スケジュールが決められており、そのスケジュールに合わせた調査、協議、資料収集、書類作成などを行っていかなければなりません。
とくに就労定着支援では、行政の申請スケジュールに事前協議が不要な自治体も多いため、申請予約を入れるタイミングに注意しなけらばなりません。自治体によっては予約期間が設けられている場合もあるため、その予約期間を過ぎてしまうと指定日が1ヶ月遅れてしまう・・・なんてこともおこってしまいかねません。
指定申請手続きをスケジュールどおりに行うには指定申請に詳しい実績のある行政書士でなければ難しいでしょう。就労定着支援事業では、就労移行支援等での就労実績などのデータが必要になりますので、普段から利用者数や就労実績のデータをとるように心掛けておきましょう。
当事務所にご依頼いただく3つのメリット
就労定着支援の指定申請手続きだけではありません!!
当事務所では、単に「就労定着支援の指定申請手続き」といった就労定着支援の手続きのみに対応するだけではなく、就労定着支援の運営面を見据えたコンサルティングも行います。例えば、普段の運営に必要な記録や帳票類などが適切に記録、保管されているかなどをアドバイスしますし、重量事項説明書や契約書などの事業開始に必要な帳票類のひな型も提供しております。
指定後の就労定着支援の運営コンサルティングにも対応!!
障がい福祉サービス事業は、厳しいコンプライアンスが求められる業界です。就労定着支援事業のような就労系の事業でも定期的に行政による実地指導は入りますし、いいかげんな運営をしていては、行政から返金を指導されたり最悪の場合は指定取消となるケースもございます。当事務所では、事業所の収支を意識した戦略的な事業運営とコンプライアンス経営が両立するような運営コンサルティングを行っております。
地域密着型で顔が見えるので安心!!
当事務所は、大阪、京都、奈良のちょうど中心にある枚方を拠点としております。障がい福祉サービス事業は、自治体ごとに細かなルールが決められておりローカルルールの激しい世界です。そのため、オンラインだけで完結するのではなく手続きの過程で何度も対面でのお打合せをさせていただきながら手続きをすすめていきます。
就労定着支援事業の開業ご依頼の際の流れ
① 就労移行支援等での就労実績を確認しましょう。
就労定着支援では、指定申請時に就労移行支援などでの一般就労実績に基づいて報酬区分が決まってきます。就労移行支援等を運営する過程において利用者さんの就労実績を記録しておきましょう。就労定着支援の指定申請時にはそのデータをもとに書類を作成することになります。
② 就労定着支援員を確保しましょう。
就労定着支援では、就労定着支援員という職種の人が必要になります。常勤ではなく非常勤で大丈夫ですが、上記の人員基準を満たす配置が必要です。指定時には雇用できるように一緒に働いてくれる仲間を募集しましょう。
③ 当事務所へ就労定着支援の開設支援を依頼しましょう。
上記1.2の目途がついた段階でご依頼いただくのが一番スムーズでありますが、できるだけはやい段階でご相談いただければ就労定着支援の報酬算定や人員基準の考え方などもアドバイスいたします。
就労定着支援事業の料金
料金 | 250,000円(税別) |
---|
就労定着支援の開設をご依頼いただく際にご準備いただきたい資料
- 就労移行支援等での就労実績のデータ
指定申請時の利用者数や報酬区分を検討するのに利用します。 - 就労移行支援等でのサービス管理責任者や就労定着支援員の情報
就労定着支援員はこの時点ではまだ雇用していなくても大丈夫です。
サービス管理責任者の履歴書、資格証、実務経験証明書、研修修了証の各コピー
就労移行支援等の指定申請関係の書類があればスムーズです。