厚生労働省は、令和3年10月13日、障がい児通所支援の放課後等デイサービスについて、「総合型」と「特定プログラム特化型」の2類型に分ける方針を固めたそうです。このことにより次回の報酬改定時には、学習塾やピアノ教室のような放課後等デイサービスは、障がい特性を踏まえた支援になっていないと判断された場合、給付の対象外とされてしまう可能性があります。
当事務所は、障がい児通所支援の次期報酬改定に向けた改正情報として、令和3年10月20日付の「障害児通所支援の在り方に関する検討会報告書」(障害児通所支援の在り方に関する検討会)をまとめました。
※詳細については、厚労省の「障害児通所支援の在り方に関する検討会報告書」~すべての子どもの豊かな未来を目指して~(令和3年10月20日)をご欄ください。検討会報告書の内容についてのお問い合わせは当事務所では対応できかねますのでご了承ください。
また、当記事は検討報告書のすべての内容を網羅しているわけではございません。令和3年度10月時点での情報ですので後に変更される可能性もありますのでご注意ください。
目次
障がい児通所支援の利用の現状
- 平成26年度比で、児童発達支援は2.2倍・放課後等デイサービスは3.2番(令和元年)と、他の社会保障給付費(医療・介護は1.1倍)と比べて大きく伸びている。
- 年齢別利用率の超過結果では、まだ顕在化していない支援ニーズの可能性はある。
- 障がいのある子どもにとって、児童期から適切な発達支援を受けて成長していくことは、安心感や自尊心等を育むことで能力の発揮に貢献し、成人後の生きづらさの軽減や予防に繋がるものである。
これらの現状より、障がい児通所支援が提供する発達支援の質を上げていくことが重要とされています。
障がい児通所支援の基本的な考え方
- 障がい児本人の最善の利益の保障、家族支援の重視、インクルージョンの推進等の、これまでの障がい児支援に係る検討の基本理念を引き続き基本とする。
- 障がいのある子ども達の自己肯定感を高め、多様性が尊重される中でその子らしさが発揮されるような支援が重要。
- 障がい児支援と子育て施策を、連続線上のものとして考えていく必要がある。
- 保護者支援も障がい児通所支援の大切な役割。
児童発達支援センターの在り方
児童発達支援センターが果たす役割・機能が明確でない現状を踏まえ、地域の中核的な支援機関として、
- 幅広い高度な専門性に基づく発達支援・家族支援機能
- 地域の事業所へのスーパーバイズ・コンサルテーション機能
- 地域のインクルージョン推進の中核機能
- 発達支援の入口としての相談機能
を制度上明確化し、これらの発揮が促される報酬体系等としていく。
障がい種別に関わらず身近な地域で必要な発達支援が受けられるように、「福祉型」「医療型」を一元化する方向で必要な制度等を手当。
(必要な専門性は、センターとして共通的に多様な専門職の配置等を進めることにより確保)
児童発達支援・放課後等デイサービスの役割・機能のあり方(概要)
- 児童発達支援・放課後等デイサービスには、総合的な発達支援、特定プログラムに特化した支援等、支援内容・提供時間も様々となっており、なかには学習塾や習い事に類似した支援もみられる。
- 次期報酬改定(令和6年)に向け、発達支援の類型に応じた人員基準・報酬の在り方を検討し、支援時期の長短(親の就労対応も含む)が適切に評価されるように検討する。
- 専修学校・各種学校に通学する障がい児も発達支援が必要と市町村が特に認める場合は対象とする方向で検討する。
児童発達支援事業の役割・機能について
児童発達支援の具体的な役割や支援内容は、「児童発達支援ガイドライン」で以下のように記載されています。
①本人支援
障がいのある子どもの発達の側面から、5領域(「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」)において、将来、日常生活や社会生活を円滑に営めるようにすることを大きな目標として支援します。
②移行支援
障がいの有無にかかわらず、すべての子どもが共に成長できるよう、可能な限り、地域の保育、教育等の支援を受けられるようにし、かつ同年代の子どもとの仲間作りを図っていくことを支援します。
③家族支援
家族が安心して子育てを行うことができるよう、さまざま家族の負担を軽減していくための物理的及び心理的支援等
④地域支援
支援を利用する子どもが地域で適切な支援を受けられるよう、関係機関等と連携すること。また、地域の子育て支援力を高めるためのネットワークを構築すること。
児童発達支援での支援での現状を見ると、必ずしも児童発達支援の在り方や報酬の対象となる点から相応しくないとされる支援等がなされている指摘があります。
例えば、
- 見守りだけで個々の障がい児に応じた発達支援がなされていない
- 学習塾のような学習支援のみとなっている
- ピアノや絵画のみの指導となっている
などの指摘です。
また、現在の報酬体系が
- 支援内容等による差異がなく、一律の単価となっている。
- 質の高い発達支援(本人支援)や、支援時間の長短による手間が適切に評価されていない。
などの指摘もあります。
現状のサービス提供の実態をみると、5領域を必ずしもカバーせず一部のプログラムに特化した事業所も存在しており、個々の子どもの状態等に対するアセスメントが十分でないなかで、利用する児童発達支援事業所の得意とする支援に偏ってしまう懸念があります。
そのため、児童発達支援の在り方としては、
- 総合支援型(基本型)
- 特定プログラム特化型
の2類型とされる方向で検討すべきとされています。
※令和3年10月の時点で「総合支援型」「特定プログラム特化型」というのは仮称です。
「総合支援型」とは、特定領域の支援のみを提供するのではなく、アセスメント及び個別支援計画の策定プロセスから個々の障がい児の状態・発達過程・特性等に応じた日々の支援の中で、5領域(①健康・生活 ②運動・感覚 ③認知・行動 ④言語・コミュニケーション ⑤人間関係・社会性)全体をカバーしたうえで、特に重点を置くべき支援内容を決めていく支援類型です。
「特定プログラム特化型」とは、特定領域のプログラムに特化した支援のみを行う事業所で、専門性の高い有効な発達支援(理学療法、作業療法、言語療法など)を行う支援類型をいいます。
上記のことを総合的に踏まえれば、以下のような方向性で児童発達支援の指定基準や報酬体系を見直すよう検討すべきとされました。
- 提供される発達支援の類型「総合支援型」「特定プログラム型」に応じて、必要な人員基準と報酬単価の在り方を検討する。
- 支援時間の長短(親の就労に対応するための時間も含む)を適切に評価するよう検討する。
- 見守りだけで個々の障がい児に応じた発達支援がなされていない場合に加え、学習塾のような学習支援のみとなっている、ピアノや絵画のみの指導となっている等、必ずしも障がい特性に応じた専門性の高い有効は発達支援と判断できない場合などについては、給付費の支給対象としない方向で、児童発達支援の運営基準等を検討する。
- 「特定プログラム特化型」の支援については、5領域(①健康・生活 ②運動・感覚 ③認知・行動 ④言語・コミュニケーション ⑤人間関係・社会性)の一部領域に偏ることがないよう、児童発達支援センターまたは障害児相談支援事業所により、個々の障がい児に合わせた支援の全体像のコーディネートが行われる仕組みについて検討する。
- ガイドラインで示している児童発達支援の役割・支援内容など支援の根幹にかかわる重要部分については、運営基準などに位置付けるとともに、それらが適切に果たされる報酬体系となるように検討する。
放課後等デイサービスの役割・機能について
放課後等デイサービスガイドラインでは、
- 総則
- 設置者・管理者向けガイドライン
- 児童発達支援管理責任者向けガイドライン
- 従業者向けガイドライン
の4つで構成されています。
放課後等デイサービスガイドライン
放課後等デイサービスガイドラインでは、学齢期の障がい児の発達支援(本人支援)の内容について、児童発達支援ガイドラインのような5領域(①健康・生活 ②運動・感覚 ③認知・行動 ④言語・コミュニケーション ⑤人間関係・社会性)において、将来、日常生活や社会生活を円滑に営めるように支援することのような詳細は示されていません。
放課後等デイサービスの指定基準や報酬は、これまで以下のような見直しが行われてきました。
従業者を児童指導員等にするなど指定基準が見直された(平成29年4月)
利潤を追求し支援の質が低い事業所や適切でない支援(例えば、テレビを見ているだけ、ゲーム等を渡して遊ばせているだけ)を行う事業所が増えてきたため。
障がい児の状態及びサービス提供時間に応じて基本報酬を分類(平成30年度報酬改定)
「支援内容については、現在指標がないこともあり、評価に差が設けられていない。」との現状を踏まえての見直し。
※ただし、障がい児の状態に応じた基本報酬の分類は令和3年度報酬改定で廃止。
極端に短時間(30分以下)の支援を報酬の対象外とする。児童指導員等加配加算の見直し(令和3年度報酬改定)
児童指導員等加配加算を算定している事業所の収支差率が、算定していない事業所の収支差率と比べて高い傾向にあるという実態が示されたため。
放課後等デイサービスガイドラインでは、
- 自立支援と日常生活の充実のための活動
- 創作活動
- 地域交流の機会の提供
- 余韻の提供
を複数組み合わせた放課後等デイサービスを提供することとしています。
そして、放課後等デイサービスの対象が学童期・思春期であることを踏まえ、この時期の発達支援(本人支援)に重要な要素である「自己肯定感」「達成感」「仲間形成」「孤立の防止」などを盛り込んでいく必要があります。
また、放課後等デイサービスは小学校から高校生まで幅広い年代の障がい児が利用するところ、支援の目的や支援内容については、小学生(低学年)・小学生(高学年)・中学校・高校生の「4段階」に分けて検討していくことが適当と考えられます。
さらに、思春期等のそれぞれの発達段階でのかかわりの難しさなどを踏まえて、放課後等デイサービスでも家族への支援をしっかりと位置付けることが必要です。
こうしたことを踏まえて、放課後等デイサービスにおいても、ガイドラインの基本活動に挙げる4つの活動(①自立支援と日常生活の充実のための活動 ②創作活動 ③地域交流の機会の提供 ④余韻の提供)を組み合わせた総合的な支援を本来の支援の在り方として想定されてきました。
一方で、サービス提供の実態では、一部のプログラムに特化した事業所が存在し、個々の子どもの状態等に対するアセスメントが十分でないなか、利用する放課後等デイサービスの得意とする支援に偏ってしまう点が懸念されます。
そこで、放課後等デイサービスにおいても、
- 総合支援型(基本型)
- 特定プログラム特化型
の2類型の支援類型を検討すべきとされました。
「総合支援型」というのは、特定領域の支援のみを提供するのではなく、多領域の支援をカバーしたうえで、アセスメント及び個別支援計画の策定のプロセスの中で、個々の障がい児の状態・発達過程・特性等に応じて、日々の支援の中で特に重点を置くべき支援内容を決めていく支援類型をいいます。この総合支援型を基本型として検討されます。
「特定プログラム特化型」というのは、特定領域のプログラムに特化した支援のみを行う事業所であって、専門性の高い有効な発達支援(理学療法、作業療法、言語療法等)を行う支援類型をいいます。
※「総合支援型」「特定プログラム特化型」というのは、令和3年10月現在においての仮称ですので変更される可能性があります。
一方で、
- 見守りだけで個々の障がい児に応じた発達支援がなされていない
- 学習塾のような学習支援のみとなっている
- ピアノや絵画のみの指導となっている
など、必ずしも障がい特性に応じた専門性の高い有効な発達支援と判断できない。
- 障がいのない子どもであれば私費で負担しているようなサービス内容については、公費により負担する障がい児通所支援の内容として相応しいとは言えない。
といった指摘もあります。
また、放課後等デイサービスは、あくまで障がいのある子どもに対し、必要な発達支援を行うためのサービスであるが、同時に、子どもの障がいの有無にかかわらず、親の就労を支えられる社会としていく観点からは、親の就労により支援時間が長くならざるを得ない障がい児が適切に発達支援を受けられるようにする必要があります。
そのため、専修学校・各種学校へ進学している障がい児であっても、障がいの状態・発達段階や家族環境等の状況から、放課後等デイサービスによる発達支援を特に必要とするものとして、市町村長が認める場合については、放課後等デイサービスの給付決定を行うことを可能とする方向で検討されます。
上記のことを総合的に踏まえて、以下のような方向性で放課後等デイサービスの指定基準や報酬体系を見直すよう検討すべきとされました。
- 放課後等デイサービスのガイドラインについて、発達支援(本人支援)を総合的に示し、小学生から高校生までの幅広い年代について各段階に応じた内容となるよう、全体的な見直しを検討する。
- 提供される発達支援の類型(「総合支援型」「特定プログラム特化型」等)に応じて、必要な人員基準と報酬単価の在り方を検討する(児童発達支援と共通)。
- 支援時間の長短(親の就労に対応するための時間を含む)が適切に評価されるように検討する(児童発達支援と共通)。
- 見守りだけで個々の障がい児に応じた発達支援がなされていない場合に加え、学習塾のような学習支援のみとなっている、ピアノや絵画のみの指導となっている等、必ずしも障がい特性に応じた専門性の高い有効な発達支援と判断できない場合等については、給付費の支給対象としない方向で、放課後等デイサービスの運営基準等を検討する(児童発達支援と共通)
- 「特定プログラム特化型」の支援については、一部領域の支援に偏ることがないよう、児童発達支援センターまたは障害児相談支援事業所により、個々の障害児の状態像・発達過程・特性などに応じた支援の全体像のコーディネートが行われる仕組みについて検討する(児童発達支援と共通)
- ガイドラインで示す放課後等デイサービスの役割・支援内容など支援の根幹にかかわる重要部分については、運営基準等に位置付けるとともに、それらが適切に果たされる報酬体系となるよう検討する(児童発達支援と共通)
- 放課後等デイサービスの対象については、高校ではなく専修学校・各種学校へ通学している障がい児であって、障害の状態・発達段階や家庭環境等により発達支援を必要とすると市町村長が特に認める場合については、放課後等デイサービスの給付決定を行うことを可能とする方向で、制度の詳細の検討を行う。
インクルージョンの推進
児童発達支援事業所・放課後等デイサービスにおいて、保育所等への移行支援が進むよう、効果的な標準的手法を提示していくとともに、適切な報酬上の評価を検討。
児童発達支援等と保育所等で、障がいの有無に関わらず、一体的な子どもの支援を可能とする方向で検討。
保育所等訪問支援について
保育所等訪問支援は、保育所等を訪問し、障がい児に対して、障がい児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援その他必要な支援を行うサービスです。
保育所等訪問支援の人員基準は、訪問支援員を必要な員数を配置するほか、児童発達支援管理責任者1人以上、管理者1人以上(兼務可)とされている。また、児童発達支援や放課後等デイサービス等との「多機能型」として一体的に事業を実施することも可能である。
保育所等訪問支援については、障害者総合福祉推進事業により「手引書」が作成されているが、その位置づけが必ずしも明確でなく、個々の現場で浸透・準拠されているとは言えない。また、保育所等訪問支援の報酬については、個々の支援対象、時期、具体的な支援方法等の違いにより支援に要する時間や労力に相当な差異が生じているが、一律の報酬単価となっている。
そのため、保育所等訪問支援の手引書について「通知」に引き上げるとともに、保育所等訪問支援の支援内容など支援の根幹にかかわる重要部分については運営基準等に位置付けるとともに、それらが適切に実施される報酬体系となるように検討する。
障がい児通所支援の給付決定
給付決定で勘案する障がい児の状態の調査指標(いわゆる「5領域11項目」。日常生活動作の介助の必要度が中心)では、障がい児に必要な発達支援のコーディネートが困難であることから、当該調査指標や、給付決定プロセスを見直す。
障がい児通所支援の事業所の指定(総量規制の判断)
事業所の指定(総量規制の判断)に当たって、管内における偏在の解消、重症心身障害・医療的ケア等に対応した事業所の不足等を解消するため、障害児福祉計画における給付量の見込みに当たり、より狭い圏域や支援が行き届きにくいニーズに着眼した見込み方を検討。
障がい児通所支援の支援の質の向上
地域の障がい児通所支援全体の質の底上げに向け、センターが地域の中核となって、
- 地域の事業所に対する研修や支援困難事例の共有・検討
- 市町村や自立支援協議会との連携
- 各事業所の自己評価・保護者評価の結果の集約を通じた事業所の強み・弱みの分析・改善(地域の関係者等も参画)
- 事業所の互いの効果的な取り組みの学び合い
などの取り組みを進める方向で検討。
このページは、令和3年10月20日付の「障害児通所支援の在り方に関する検討会報告書」をまとめたものです。
厚生労働省:障害児通所支援の在り方に関する検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19218.html
これらの検討事項は変更される可能性はありますが、次期改正に向けて事業所として取り組むべき方向性を探るうえでも重要な報告書といえるのではないでしょうか?
当事務所では、児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援といった障がい児通所支援事業の開業支援、運営支援を行っております。児童発達支援や放課後等デイサービスの開業や運営でお困りの方はご連絡ください。