生活介護事業は、開業時においても運営時においてもサービス管理責任者を中心とした人員配置が非常に重要となります。事業所運営においては人員基準を正しく理解して運営することが大切です。
生活介護事業の人員基準
生活介護の人員基準は令和6年度の改定により、「前年度の平均値」の計算方法が変わりました。
考え方の手順としては、「前年度の平均利用者数」を算出してから「平均障害支援区分」を算出し、必要な職員数を計算することになります。ただ、このページでは「平均障害支援区分」を解説してから「前年度の平均利用者数」を解説します。この順番での解説の方が理解しやすくなるからです。
職種名 | 必要員数 | 配置要件 | |
---|---|---|---|
管理者 | 1人 | 原則として管理業務に従事するもの。 (管理業務に支障がない場合は他の職務の兼務可) |
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サービス 管理責任者 |
1人以上 は常勤 |
・利用者が60人以下:1人以上 ・利用者が61人以上:1人+利用者数が60人を超えて 40 またはその端数を増やすごとに1人を加えて得た数以上 |
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従 業 者 (★) |
医師 | 利用者の健康管理・療養上の指導を行うのに必要な数 (嘱託医でも可) |
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看護職員 | 生活介護の単位ごとに1人以上 (保健師、看護師または准看護師) |
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理学療法士 or 作業療法士 or 言語聴覚士 |
訓練を行う場合は、生活介護の単位ごとに、 当該訓練を行うために必要な数 |
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生活支援員 | 生活介護の単位ごとに1人以上 (看護職員および生活支援員のうち1以上は常勤) |
従業者(看護職員、理学療法士or作業療法士or言語聴覚士、生活支援員)の配置基準
上記の(★)部分、「看護職員、理学療法士or作業療法士or言語聴覚士、生活支援員」の配置基準は、平均障害支援区分に応じて以下のようになっています。
① 「平均障害支援区分」が4未満 常勤換算で、利用者の数を6で除した数以上
② 「平均障害支援区分」が4以上5未満 常勤換算で、利用者の数を5で除した数以上
③ 「平均障害支援区分」が5以上 常勤換算で、利用者の数を3で除した数以上
この「平均障害支援区分」は次の計算式で算出します。
平均障害支援区分
={(2×支援区分2該当利用者数)+(3×支援区分3該当利用者数)+(4×支援区分4該当利用者数)+(5×支援区分5該当利用者数)+(6×支援区分6該当利用者数)}÷総利用者数
<モデル>
- 前年度の総利用者数人 5,400人(平均利用者数を18人とする)
- 前年度の障害支援区分2 600人
- 前年度の障害支援区分3 600人
- 前年度の障害支援区分4 1,800人
- 前年度の障害支援区分5 1,800人
- 前年度の障害支援区分6 600人
この場合、「平均障害支援区分」は、
{(2×600人)+(3×600人)+(4×1,800人)+(5×1,800人)+(6×600人)}÷5,400人=4.22
となり、上記の②「平均障害支援区分が4以上5未満」に該当する。
そして、「平均障害支援区分が4以上5未満」の場合は、利用者数を5で除した数以上、常勤換算で必要となる。
とすると、利用者数18人÷5=3.6となり、「看護職員、理学療法士or作業療法士or言語聴覚士、生活支援員」の総数は「3.6」(常勤換算)必要ということになります。
生活介護における従業員の員数を算定する場合の前年度の平均利用者数
生活介護に係る従業者の員数を算定する場合の前年度の「平均利用者数」は、当該年度の前年度の「延利用者数(※)」を「開所日数」で除して得た数とされています(小数点第2以下切り上げ)。
※「延利用者数」については、
- 所要時間3時間未満
- 所要時間3時間以上4時間未満
- 所要時間4時間以上5時間未満
の報酬を算定している利用者については、当該区分の「延利用者数」に「2分の1」を乗じて得た数とし、
- 所要時間5時間以上6時間未満
- 所要時間6時間以上7時間未満
の報酬を算定している利用者については、当該区分の「延利用者数」に「4分の3」を乗じて得た数とし、
- 所要時間7時間以上8時間未満
- 所要時間8時間以上9時間未満
の報酬を算定している利用者については、当該区分の「延利用者数」に「1」を乗じて得た数として計算します。
所要時間(区分) | 「延利用者数」に乗じる数 |
---|---|
5時間未満 | 1/2 |
5時間以上7時間未満 | 3/4 |
7時間以上 | 1 |
<モデル>
前年度(4月1日~翌年3月末)の「延利用者数」と「開所日数」が以下のとおりだとします。
- 所要時間5時間未満の延利用者数…1,800人
- 所要時間5時間以上7時間未満の延利用者数…1,800人
- 所要時間7時間以上の延利用者数…1,800人
- 開所日数…300日
この場合、
- 1,800人×1/2=900人(所要時間による修正)
- 1,800人×3/4=1,350人(所要時間による修正)
- 1,800人×1=1,800人(所要時間による修正)
- 900人+1,350人+1,800人=4,050人(修正後の全体延利用者数)
- 4,050人(修正後の全体延利用者数)÷300日(開所日数)=13.5人
となり、「前年度の平均利用者数」は14人(小数点以下切上げ)となります。
生活介護の開業後の人員配置基準
生活介護の場合、職員の必要配置数を「平均利用者」や「平均障害支援区分」を計算して算出していくことになります。この場合、「平均利用数」や「平均障害者支援区分」は原則として、「前年度の平均値」を算出しますが、新規で指定をとった場合は「前年度(前年4月~当年3月)」の実績がまだありませんので、「前年度」の実績ができるまでは、以下のような方法で「平均値」を計算することになります。
※具体的な計算方法は指定権者によって違いがあるようです。必ず指定権者に確認してください。
指定時から6ヶ月未満の実績しかない(指定時から6ヶ月間)
- 平均利用者数:利用定員(見込数に基づく所要時間による修正後の人数)の90%
※所要時間区分については見込数(1日あたりで計算)
例えば、利用定員20人の生活介護の「所要時間区分」の見込数が以下のとおりだとすると、
- 利用定員 20人
- 所要時間5時間未満・・・6人
- 所要時間5時間以上7時間未満・・・4人
- 所要時間7時間以以上・・・10人
- (6人×1/2+4人×3/4+10人×1/1)×90%=16人×90%=15人(小数点以下切上げ)
この場合は、利用者数15人でスタート。
- 平均障害支援区分:受入れ見込みによる(1日あたりで計算)
例えば、利用者数15人の生活介護の「障害支援区分」の見込数が以下のとおりだとすると、
- 利用者数 15人
- 障害支援区分2 1人
- 障害支援区分3 2人
- 障害支援区分4 5人
- 障害支援区分5 5人
- 障害支援区分6 2人
この場合、「平均障害支援区分」は、
{(2×1人)+(3×2人)+(4×5人)+(5×5人)+(6×2人)}÷15人=4.33
となり、「平均障害支援区分が4以上5未満」に該当する。
そして、「平均障害支援区分が4以上5未満」の場合は、利用者数を5で除した数以上、常勤換算で必要となる。
とすると、利用者数15人÷5=3.0となり、
「看護職員、理学療法士or作業療法士or言語聴覚士、生活支援員」の総数は「3.0」(常勤換算)必要ということになります。
指定時から6ヶ月以上1年未満の実績ができた(指定時から7ヶ月目~12ヶ月目)
- 平均利用者数:直近6ヶ月間の「延利用者数(所要時間による修正後)」÷直近6ヶ月間の「開所日数」
- 平均障害支援区分:直近6ヶ月間の「平均障害支援区分」
指定時から1年以上の実績ができた
- 平均利用者数:直近1年間の「延利用者数(所要時間による修正後)」÷直近1年間の「開所日数」
- 平均障害支援区分:直近1年間の「平均障害支援区分」
指定時から1年以上経過し、前年度(前年4月1日~当年3月31日)の実績ができた
- 平均利用者数:前年度(前年4月1日~当年3月31日)の「延利用者数(所要時間による修正後)」÷前年度(前年4月1日~当年3月31日)の「開所日数」
- 平均障害支援区分:前年度の「平均障害支援区分」
例えば、令和7年1月1日を指定日とした場合、計算の対象期間は以下のようになります。
年 | 月 | 開所からの期間 | 計算期間 | 平均利用者数 | 平均障害支援区分 |
---|---|---|---|---|---|
令和7年 | 1月 | 開所から 6ヶ月間 |
推定値 | 利用定員 (見込数に基づく 所要時間による 修正後の人数) の90% |
見込数 |
2月 | |||||
3月 | |||||
4月 | |||||
5月 | |||||
6月 | |||||
7月 | 開所から 7ヶ月~12ヶ月 |
直近6ヶ月間の 平均値 |
令和7年1月~令和7年6月の平均 | ||
8月 | 令和7年2月~令和7年7月の平均 | ||||
9月 | 令和7年3月~令和7年8月の平均 | ||||
10月 | 令和7年4月~令和7年9月の平均 | ||||
11月 | 令和7年5月~令和7年10月の平均 | ||||
12月 | 令和7年6月~令和7年11月の平均 | ||||
令和8年 | 1月 | 1年以上の 実績ができた |
直近1年間の 平均値 |
令和7年1月~令和7年12月の平均 | |
2月 | 令和7年2月~令和8年1月の平均 | ||||
3月 | 令和7年3月~令和8年2月の平均 | ||||
4月 | 前年度 (前4月~当3月) の実績ができた |
前年度の 平均値 |
令和7年4月~令和8年3月の平均 | ||
5月 | |||||
6月 | |||||
7月 | |||||
8月 | |||||
9月 | |||||
10月 | |||||
11月 | |||||
12月 |
生活介護の設備基準
生活介護事業所として使用する建物の使用部分が200㎡を超える場合には、建築基準法上の「用途変更の確認申請」という申請が必要になります。また、消防法の要請から誘導灯や非常警報装置などの消防設備を設置しなければいけませんので、関係各部署と慎重に協議を進めていきます。さらに、以下の設備要件を満たしていることが必要です。
生活介護の設備基準
設備 | 要件 |
---|---|
訓練作業室 | サービス提供に支障のない広さを備えること。 大阪市の場合は、利用者1あたり3.0㎡必要。 最低定員20名(多機能型は6名)。 そのため、訓練作業室の最低面積は20名×3㎡=60㎡が必要。 (多機能型の場合は、6名×3㎡=18㎡必要) |
相談室 | プライバシーに配慮していること。 |
多目的室 | 相談室と兼務可能。 |
事務室 | 鍵付き書庫を設置すること。 |
洗面所・トイレ | 洗面所(手指洗浄)はトイレ内手洗いとは別々であること。 |
生活介護事業は、所要時間や支援区分によっては報酬単価も高いサービスです。ただ、人員配置で看護職員の配置が必要になりますし、基本的には医師の配置も必要になります。そのため、就労系のサービスよりも参入障壁が高いサービスといえます。
当事務所では、生活介護事業の開設支援や運営支援の実績も豊富です。生活介護の開設支援や運営支援のご依頼は問合せフォームよりお願いいたします。
※無料相談は行っておりません。