前年度の実績等による基本報酬・加算の届出をわかりやすく解説

一部の障がい福祉サービス等においては、年度ごとに基本報酬および加算の算定要件の見直しが必要になる場合があります。

通常、介護給付費等の算定に係る届出が必要な基本報酬及び加算については、加算を算定する前月の15日までに届出が必要になります。

しかし、前年度の実績等に応じて届出を行う基本報酬および加算については、毎年4月中に(提出期限は自治体によります)届出を行う必要があります。

前年度の実績等により「基本報酬」の届出が必要なサービス

以下に該当するサービスの指定を受けている事業所については、毎年4月に基本報酬の届出が必要になります。

就労移行支援

就労移行支援サービス費(Ⅰ)は、「利用定員」及び「利用定員に対する就労定着者の割合」(当該年度の「前年度」または「前々年度」において、就労移行支援を受けた後就労し、就労を継続している期間が6月に達した者の合計数を当該前年度及び前々年度の利用定員の合計数で除して得た割合をいう。)に応じ、基本報酬を算定します。

就労継続支援A型

基本報酬の算定に係る前年度の実績について、「1日の平均労働時間」「生産活動」「多様な働き方」「支援力向上」「地域連携活動」の5つの観点から成る各評価項目の総合評価をもって実績とする方式(スコア方式)に応じ、基本報酬を算定します。

就労継続支援B型

「平均工賃月額」に応じた基本報酬の評価(就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅱ))を選択する場合は、前年度の実績による見直しが必要です。

  • 「平均工賃月額」に応じた基本報酬の評価(Ⅰ)(Ⅱ)
  • 「利用者の就労や生産活動等への参加等」を持って一律に評価(Ⅲ)(Ⅳ)

※年度当初に、上記のどちらかを選択できますが、年度途中での変更を行うことはできません。

就労定着支援

前年度の実績に応じた「就労定着率」による基本報酬が算定されます。

地域移行支援

地域移行支援サービス費(Ⅰ)を算定する場合、前年度に3人以上の地域移行の実績を有することが必要です。

児童発達支援(主として重症心身障がい児以外、児童発達支援センター以外)

前年度の未就学児の割合によって今年度の「未就学児等支援区分」が決まります。

未就学児等支援区分

「小学校就学前の障害児の当該年度の前年度の延べ利用人数」÷「全障害児の延べ利用人数」が70%以上であれば「支援区分Ⅰ」、70%未満であれば「支援区分Ⅱ」

前年度の実績等により見直しが必要な「加算」の届出

各種加算等において年度ごとに算定要件を満たしているかどうか確認が必要な加算を算定している事業所は、毎年4月に自己点検を行い、届出を行う必要があります。加算区分などに変更がなければ、届出は不要とする自治体もありますので、必ず自治体から発出する通知などを確認するようにしましょう。

前年度の平均利用者数などが算定に関わる加算

人員配置体制加算

療養介護、生活介護

視覚・聴覚言語障害者支援加算

生活介護、共同生活援助(グループホーム)、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型

就労移行支援体制加算

生活介護、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労継続支援A型、就労継続支援B型

移行準備支援体制加算

就労移行支援

重度者支援体制加算

就労継続支援A型、就労継続支援B型

目標工賃達成指導員配置加算

就労継続支援B型

就労定着実績体制加算

就労定着支援

夜間支援等体制加算

共同生活援助(グループホーム)

看護職員加配加算

児童発達支援、放課後等デイサービス(主として重症心身障がい児を通わせる事業所に限る)

届出に必要な書類(必ず事前に自治体に確認すること)

前年度実績等による基本報酬および加算の届出について一般的に必要となる書類は以下の書類となります。届出に必要な書類は提出先である自治体によって異なりますので、必ず自治体からの通知やHPなどで確認するようにしましょう。

  • 加算届連絡票
  • 変更届(様式第3号)
  • 介護給付費等算定に係る体制等に関する届出書
  • 介護給付費等の算定に係る体制等状況一覧表
  • 介給別紙
  • 誓約書

人員配置体制加算

人員配置体制加算の対象となるサービス

  • 療養介護
  • 生活介護

療養介護における人員配置体制加算

療養介護における人員配置体制加算は、利用者全員につき算定されます。

人員配置体制加算(Ⅰ)従業者配置1.7:1以上

旧重症心身障害児施設or指定医療機関(旧重症心身障害児施設など)から転換する指定療養介護事業所の中で、経過的療養介護サービス費(Ⅰ)を算定している場合であって、常勤換算方法により、従業者の員数が「利用者の数」を1.7で除して得た数以上であること。

人員配置体制加算(Ⅱ)従業者配置2.5:1以上

旧重症心身障害児施設などから転換する指定療養介護事業所の中で、療養介護サービス費(Ⅱ)を算定している場合であって、常勤換算方法により、従業者の員数が「利用者の数」を2.5で除して得た数以上であること。

上記の「利用者数の数」は「前年度の平均利用者数」のことをいいます。毎年4月に前年度の平均利用者数を計算して、届出を行う必要があります。

生活介護における人員配置体制加算

生活介護における人員配置体制加算は、当該生活介護の利用者全員につき算定されます。

生活介護事業所において生活介護を行う場合

人員配置体制加算(Ⅰ)

①以下の利用者の総数が全体の利用者の100分の60以上であること

  • 区分5若しくは区分6に該当する者
  • 区分4以下であって行動関連項目の合計が10点以上である者

②直接処遇職員(常勤換算)を、前年度の利用者数の平均値を1.7で除して得た数以上配置していること

人員配置体制加算(Ⅱ)

①以下の利用者の総数が全体の利用者の100分の50以上であること

  • 区分5若しくは区分6に該当する者
  • 区分4以下であって行動関連項目の合計が10点以上である者

②直接処遇職員(常勤換算)を、前年度の利用者数の平均値を2で除して得た数以上配置していること

人員配置体制加算(Ⅲ)

直接処遇職員(常勤換算)を、前年度の利用者数の平均値を2.5で除して得た数以上配置していること

障害者支援施設等において生活介護を行う場合

人員配置体制加算(Ⅰ)

直接処遇職員(常勤換算)を、前年度の利用者数の平均値を1.7で除して得た数以上配置していること

人員配置体制加算(Ⅱ)

直接処遇職員(常勤換算)を、前年度の利用者数の平均値を2で除して得た数以上配置していること

人員配置体制加算(Ⅲ)

直接処遇職員(常勤換算)を、前年度の利用者数の平均値を2.5で除して得た数以上配置していること

※「利用者数」は共生型障害福祉サービス事業所の場合においては、障害児者および要介護者の合計数をいいます。

視覚・聴覚言語障害者支援加算

視覚・聴覚言語障害者支援加算の対象となるサービス

  • 生活介護
  • 共同生活援助(グループホーム)
  • 自立訓練(機能訓練)
  • 自立訓練(生活訓練)
  • 就労移行支援
  • 就労継続支援A型
  • 就労継続支援B型

視覚または聴覚もしくは言語機能に重度の障がいのある者(視覚障害者等)が、事業所の利用者数(前年度の平均利用者数)に30/100を乗じて得た数以上であって、専門性を有する従業者(点字指導・点訳・歩行支援などができる者、手話通訳などができる者)を指定基準である人員配置に加え、常勤換算方法で、利用者数(前年度の平均利用者数)を50で除して得た数以上配置している場合に算定することができます。

視覚・聴覚言語障害者支援加算のポイント

  • 視覚障害者等が「利用者数の30%以上」であること。
  • 専門性を有する従業者が「常勤加算方法で利用者数を50で除して得た数以上」配置されていること。

就労移行支援体制加算

就労移行支援体制加算の対象となるサービス

  • 生活介護
  • 自立訓練(機能訓練)
  • 自立訓練(生活訓練)
  • 就労継続支援A型
  • 就労継続支援B型

就労移行支援体制加算の対象となるサービスを受けた後に就労し、6ヶ月以上就労継続している者がいる場合、定員規模などに応じた「所定単位数」に「前年度に6ヶ月以上就労継続できた者(就労定着者)の数」を乗じて単位数を加算として算定できます。

就労移行支援体制加算のポイント

  • 前年度に企業等での雇用継続期間が6ヶ月に達していること。
  • 加算の算定期間は前年度実績に応じて1年間。

移行準備支援体制加算

移行準備支援体制加算の対象となるサービス

  • 就労移行支援

前年度に施設外支援(職場実習等・求職活動等)を実施した利用者数が利用定員の50%を超えた就労移行支援事業所において、算定対象となる利用者が利用定員の50%以下である場合、前年度の施設外支援利用者数に応じて所定単位数を加算できます。

就労準備支援体制加算のポイント

  • 前年度の施設外支援の利用者が定員の50%を超えていること。
  • 算定対象の利用者が定員の50%以下であること。

重度者支援体制加算

重度者支援体制加算の対象となるサービス

  • 就労継続支援A型
  • 就労継続支援B型

前年度の障害基礎年金1級受給者数が、前年度の利用者数の50%以上の場合(重度者支援体制加算Ⅰ)or前年度の利用者数の25%以上50%未満の場合(重度者支援体制加算Ⅱ)に算定される加算です。

重度者支援体制加算のポイント

前年度の利用者数のうち障害基礎年金1級受給者が25%以上(重度者支援体制加算Ⅱ)もしくは50%以上(重度者支援体制加算Ⅰ)であること。

目標工賃達成指導員配置加算

目標工賃達成指導員配置加算の対象となるサービス

  • 就労継続支援B型

目標工賃達成指導員を常勤換算方法で1人以上配置し、手厚い人員体制をもって目標工賃の達成に向けた取り組みを行う場合に算定できます。

目標工賃達成指導員配置加算のポイント

  • 目標工賃達成指導員を常勤換算方法で1人以上配置すること。
  • 職業指導員および生活支援員の総数が前年度の平均利用者数に対して常勤換算方法で7.5:1以上であること。
  • 目標工賃達成指導員、職業指導員、生活支援員の総数が前年度の平均利用者数に対して常勤換算方法で6:1以上であること。
  • 工賃向上計画を作成していること。

就労定着実績体制加算

就労定着実績体制加算の対象となるサービス

  • 就労定着支援

前年度末日から起算して過去6年間に就労定着支援の利用を終了した者のうち、前年度において障害者が雇用された通常の事業所に42月以上78月未満の期間継続して就労している者または就労していた者の割合が前年度において100分の70以上の場合に、就労定着支援の利用者全員について加算できます。

就労定着実績体制加算のポイント

  • 過去6年間に就労定着支援の利用を終了した者のうち、前年度において一般就労を3年6月以上6年6月未満の期間継続している者の割合が前年度において70%以上であること。
  • 就労定着実績体制加算は、指定日から1年間は算定できません。

夜間支援等体制加算

夜間支援等体制加算の対象となるサービス

  • 共同生活援助(グループホーム)

共同生活援助(グループホーム)において、夜間の連絡・支援体制が確保されている場合に加算を算定することができます。

夜間支援等体制加算のポイント

1人の夜間支援従事者が支援を行う対象利用者の数は、「前年度の平均利用者数」であること。

看護職員加配加算

看護職員加配加算の対象となるサービス

  • 児童発達支援
  • 放課後等デイサービス(主として重症心身障がい児を通わせる事業所に限る)

一定の基準を満たす医療的ケア児を受け入れるための体制を確保し、医療的ケア児やその家族の状況およびニーズに応じて、地域において必要な支援を受けることができるように看護職員の加配を行っている場合に算定できる加算です。

看護職員加配加算のポイント

  • 指定通所基準に定める員数に加え、看護職員を1名以上配置(常勤換算方法)し、医療的ケア児のそれぞれの医療的ケアスコアの合計が40点以上であること(看護職員加配加算Ⅰ)
  • 指定通所基準に定める員数に加え、看護職員を2名以上配置(常勤加算方法)し、医療的ケア児のそれぞれの医療的ケアスコアの合計が72点以上であること(看護職員加配加算Ⅱ)
  • 医療的ケアが必要な障がい児に対して支援可能であることを公表していること。
  • 医療的ケアスコアの合計点数は、前年度の医療的ケア児の利用日数と医療的ケアスコアを用います。

就労継続支援などの障がい福祉サービスでは、前年度(就労移行は前々年度の場合もあり)の実績によって一年間の報酬単価が決まるという制度になっています。そのため、普段から利用人数を記録することが大切になります。

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