重度訪問介護は、重度の障がい者が、自宅で日常生活を営むことができるように、入浴、排せつ、食事などの介護・調理・洗濯・掃除などの支援を行います。ヘルパーなどが自宅に訪問する居宅介護と支援内容はほとんど同じですが、支援対象の利用者さんが居宅介護の場合よりも障がい程度の重い方が一般的です。
居宅介護との相違点は、
- 重度訪問介護の支援の中で外出時の移動支援や入院時の支援なども総合的に行います。
- 重度訪問介護を利用する場合は、居宅介護、同行援護、行動援護の支援は併用できません。
また、2018年の法改正で重度訪問介護に入院時の支援が追加されました。重度訪問介護の入院時の支援では、障がい者それぞれの特性に合わせた介護を提供できるヘルパーが入院中の病室を訪問し、見守りなどをすることで、入院中であってもいつもと同じ介護を受けることができます。障がいのある方にとっては、環境の変化が大きい入院は、精神的にも強いストレスがかかるため、重度訪問介護の入院時の介護はメリットが大きいと言えるのではないでしょうか?
重度の障がい者の場合、介護の必要な事態がいつ発生してもおかしくないため、重度訪問介護では、ホームヘルパーが長時間にわたって見守りを行うことを想定しています。
重度の障がい者が、住み慣れた地域、自宅で住み続けていくためには重度訪問介護は必須なサービスとなっています。しかし、重度の障がいで医療との連携も深く、専門的知識を要する人材が不足していたり、支援の特性上、長時間のサービスを提供するため重度訪問介護の報酬単価が低く設定されているなど、重度訪問介護の制度上の課題はまだまだ多いと言えます。
重度訪問介護の支援の対象者
重度訪問介護はより重い症状をもつ障がい者に対するサービスで、重度の肢体不自由などで、常に介護を必要としている人が対象になります。
具体的には、障害支援区分4以上であって、二肢以上にまひなどがあること、もしくは、障害支援区分4以上であって、障害支援区分の認定調査項目のうち「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のいずれも支援が不要以外と認定されていること、が条件とされています。なお、入院時の支援を受ける場合は、障害支援区分が6以上である必要があります。
重度の肢体不自由だけでなく、「知的」障がい者や「精神」障がい者も対象となっています。その場合は、障がい者支援区分4以上であって、障害支援区分の認定調査項目のうち行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上である必要があります。行動関連項目とは、意思表示、説明の理解、異食行動、大声・奇声を出す、多動・行動停止などの12項目を0~2点を評価します。
重度訪問介護サービス費
重度訪問介護サービス費 | ||
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提供時間 | 右以外の 障がい者に 提供した場合 |
病院等に 入院又は入所中の 障がい者に 提供した場合 |
1時間未満 | 185単位 | 185単位 |
1時間以上 1時間30分未満 |
275単位 | 275単位 |
1時間30分以上 2時間未満 |
367単位 | 367単位 |
2時間以上 2時間30分未満 |
458単位 | 458単位 |
2時間30分以上 3時間未満 |
550単位 | 550単位 |
3時間以上 3時間30分未満 |
640単位 | 640単位 |
3時間30分以上 4時間未満 |
732単位 | 732単位 |
4時間以上 8時間未満 |
817単位 30分増すごとに +85単位 |
817単位 30分増すごとに +85単位 |
8時間以上 12時間未満 |
1,497単位 30分増すごとに +85単位 |
1,497単位 30分増すごとに +85単位 |
12時間以上 16時間未満 |
2,172単位 30分増すごとに +80単位 |
2,172単位 30分増すごとに +80単位 |
16時間以上 20時間未満 |
2,818単位 30分増すごとに +86単位 |
2,818単位 30分増すごとに +86単位 |
20時間以上 24時間未満 |
3,500単位 30分増すごとに +80単位 |
3,500単位 30分増すごとに +80単位 |
重度訪問介護については、同一箇所に長時間滞在しサービス提供を行うというサービス形態ですので、8時間を区切りとする報酬単価の設定となっています。また、8時間を超える重度訪問介護のサービス提供を行う場合には、事業所の管理コストも逓減するだろうということで、8時間までの報酬単価の95%相当額(つまりマイナス5%)が算定されます。
そして、同一の事業者が、1日に複数回の重度訪問介護を行う場合には、1日分の所要時間を通算して算定します(例1)。この場合の1日とは、0時から24時までを指し、翌日の0時以降のサービス提供分については、所要時間1時間から改めて通算して算定し、1回のサービスが午前0時をまたいで2日わたり提供される場合は、午前0時が属する30分の範囲内における午前0時を超える端数については、1日目の分に含めて算定します(例2)。
(例1)1日に、所要時間7時間30分、7時間30分の2回行う場合
- 通算時間 7時間30分+7時間30分=15時間
- 算定単位 所要時間12時間以上16時間未満の場合
(例2)22時45分から6時45分までの8時間の連続するサービス
- 22時45分から0時15分までの時間帯…1日目分1時間30分として算定
- 0時15分から6時間45分までの時間帯…2日目分6時間30分として算定
1日の範囲内に複数の事業者が重度訪問介護を行う場合には、それぞれの事業者ごとに1日分の所要時間を通算して算定します。
重度訪問介護の報酬は、事業者が作成した「重度訪問介護計画」に基づいて行われるべき指定重度訪問介護等に要する時間により算定されます。
ただし、当該重度訪問介護計画の作成にあたっては、
- 支給量が30分を単位として決定されること
- 報酬については1日分の所要時間を通算して算定されること
を踏まえ、決定された時間数が有効に活用されるよう利用者の希望等が十分に盛り込まれた重度訪問介護計画であることが大切です。
病院等に入院・入所中の障がい者に対する支援についても、同様の報酬設定となっていますが、利用開始から起算して90日を超える場合には20%の減額となります。
重度訪問介護従業者養成研修の修了者等が、重度障害者等包括支援の対象となる支援の度合にある者に対して支援を行った場合には、15%の加算となります。
同時に2人の重度訪問介護従業者がサービス提供を行った場合には、それぞれに重度訪問介護サービス費が算定されます。ただし、障害支援区分が区分6の利用者に対し、新任ヘルパーに熟練ヘルパーが同行して支援を行った場合には15%の減算となります。
日中時間以外に支援を行った場合には、午前10時から午前6時まで50%の深夜加算を行うとともに、午後6時から午後10時まで及び午前6時から午前8時まで25%の夜間・早朝加算を行います。
重度訪問介護の人員基準
管理者
1人(常勤)
管理業務に支障がない場合は他の職務を兼務することも可能です。
サービス提供責任者
1人以上(常勤・専従)
ただし、次の①②③④により算定された数のいずれか低い方の基準以上の配置が必要です。
①当該事業所の月間のサービス提供時間が概ね450時間またはその端数を増す毎に1人以上
②当該事業所の従業者の数が10人以上又はその端数を増す毎に1人以上(例えば、従業者が11人の場合、サービス提供責任者は2人必要です。従業者が21人の場合、サービス提供責任者は3人必要です。)
③当該事業所の利用者の数が40人又はその端数を増す毎に1人以上(ここでいう「利用者」は延べ人数ではなく、実数計算です。)
※①のサービス提供時間、②の従業者数、③の利用者数の規模は前3ヶ月間の平均値を使用します。新規指定の場合は推定値です。
④③にかかわらず、常勤のサービス提供責任者を3人以上配置し、かつ、サービス提供者のの業務を主業務とする者を1人以上配置している事業所においてサービス提供責任者が行う業務が効率的に行われる場合にあっては、当該事業所に置くべきサービス提供責任者の員数は、利用者の数が50人又はその端数を増すごとに1人以上とすることができます。
従業者
常勤換算で2.5人以上(介護福祉士、居宅介護従業者養成研修課程等の修了者など)
※重度訪問介護も居宅介護と共通の基準ですが、例えば1事業所で居宅介護と重度訪問介護の両方の指定を受けようとする場合は、従業員の兼務が可能ですので、別々に人員を配置する必要はありません。また、介護保険の訪問介護事業及び介護予防訪問介護事業を併せて行う場合も、従業員の兼務が可能ですので、別々に人員を配置する必要はありません。
重度訪問介護の設備基準
- 事務室
机やいす、鍵付き書庫を配置すること。
- 相談室
プライバシーに配慮されていること。例えば、容易に外から相談室の中をのぞき込まれたりされないようにパーテーションなど設置するなど。
- 洗面所、トイレ
洗面所には、布タオルを置かず、ペーパータオル、ポンプ式石鹸、消毒液を備えること。
重度訪問介護の運営基準
重度訪問介護は運営基準に従って適切に運営されなければなりません。
- 重度訪問介護の利用契約書、重要事項説明書、個人情報保護の使用同意書(3点セット)
- 受給者証のコピー
- 心身の状況等の把握
- 他の指定障害福祉サービス事業者等との連携等
- 重度訪問介護計画の作成
- 勤務形態一覧表
- 記録の整備
- 秘密保持の誓約書
など
当事務所は、重度訪問介護の開業支援を行っております。重度訪問介護の指定申請では、居宅介護と指定要件が同じですので、重度訪問介護と居宅介護を同時に指定申請するのが一般的です。大阪・京都・奈良で居宅介護や重度訪問介護の開業をご検討されている方は当事務所へご相談ください。