実地指導での必要書類とポイント解説【大阪・京都・奈良 編】

実地指導では、障がい福祉サービスの事業所で日頃から記録されている書類をチェックされます。書類をチェックされることで法令や基準を遵守した運営がなされているかどうかを確認されるのです。当事務所では、大阪・京都・奈良での実地指導や監査に対応したコンサルティングサービスを提供しております。

以下では、当事務所が今までに実際に大阪・京都・奈良での実地指導や監査に立ち会った際に、行政の担当官から指摘された事項などを必要書類と一緒にまとめています。大阪・京都・奈良で、チェックされる書類には若干の違いがありますし、実地指導の状況によっては以下の書類以外にも求められる書類が出てきます。そのため、以下の必要書類は「概要」ではありますが、日々の事業所運営の参考にしてみてください。

運営に関するもの

1 運営規程

  • 運営規程の内容(営業日時やサービス提供日時、従業員数等)と実態とに相違がないか。
  • 運営規程を変更する場合は、その都度、変更届を提出しているか?
  • 実地指導の際は、最新の運営規程を準備しておく。

2 勤務一覧表(予定・実績)

  • 事業所ごとに、月ごとの勤務一覧表(予定・実績)が作成され、日々の勤務時間、職務の内容、常勤・非常勤の別、兼務関係が明確になっているか。勤務一覧表によって毎月ごとに人員基準をクリアしているかどうか確認しているか。
  • 雇用契約等により、当該事業所(施設)の業務に従事し、管理者の指揮命令下にあることが明確になっているか。
  • 出勤簿と賃金台帳と勤務表(実績)の整合性がとれているか。

3 職員(従業者)の勤務状況等の確認できるもの

  • タイムカード・出勤簿が保管されているか。
  • 雇用契約書・労働条件通知書(勤務する職種の記載があるか。「職業指導員」など)が整備されているか。
  • 就業規則が整備されているか(従業員10人以上は労働基準監督署に提出)
  • 就業規則の週所定労働時間が明確となっているか?常勤時間の根拠となる数字なので明確に記載すること。
  • 労働安全衛生規則に基づき、従業者の健康診断が適切に行われ、健康状態の管理をしているか。健康診断は、雇入れ時と定期の健康診断が必要です。
  • 労働安全衛生規則において健康診断の実施が義務付けられていない従業者(常勤の3/4以上勤務する者)についても健康状態の把握が行われているか。
  • 人事異動によって職種を変更する場合は「辞令」を作成しているか。例えば、職業指導員から生活支援員へ変更する場合に、そのタイミングで辞令が交付されていること。
  • 従業者等について、業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を在職中及び退職後においても漏らさないよう、誓約書等を交わしているか。
  • 利用者及び個人の情報を管理し、使用する可能性のある家族それぞれから個人情報の利用同意をとっているか。

4 職員(従業者)の資格証

  • 職員(従業者)の履歴書が適切に保管されているか。
  • サービス提供責任者・サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者では、経歴書・研修修了証・実務経験証明書が保管されているか。
  • 介護福祉士等もっている職員がいればそのコピーを保管しておくこと(有資格者の割合により加算を取得している場合は必須)

5 業務日誌

  • 管理者が事業所を管理するための業務日誌が記録され保存されていること。事業所の一日の出来事を記録していきます。

6 各種対応マニュアル

  • 苦情対応マニュアル、事故防止マニュアル、緊急時対応マニュアル、感染症対応マニュアルが整備されているか。
  • その他、必要と思われるマニュアルが整備されているか。
  • 利用者、障がい児又は他の利用者、障がい児の生命又は身体を保護するため、緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束その他利用者の行動を制限する行為(身体拘束等)を行っていないか。
  • やむを得ず身体拘束を行う場合には、その必要性や態様及び時間、その際の利用者、障がい児の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を個別支援計画において明確にしているか。

7 苦情対応記録簿、事故・ひやりはっと報告に関する記録

  • 些細な内容(ご意見やご要望を含む)であっても、苦情相談を記録し、苦情相談の内容を踏まえ、サービスの質の向上に向けた取り組みが行われているか。
  • 利用申込等に対して正当な理由がなくサービス提供を拒んでいないか?正当な理由によるサービス提供拒否であっても、そのやり取りや経緯を記録しているか?
  • サービス提供が困難な場合にその代替措置(他事業所の紹介等)をしているか?その経緯等について記録していること。
  • 事故やヒヤリハットを記録し、再発防止に向けた取り組みが行われているか。
  • 事故(骨折、3針以上の縫合が必要な裂傷、個人情報の紛失)について、利用者(給付決定保護者)の支給決定を行った市町村に報告しているか。

8 研修計画(1年間のスケジュール)

  • 人権研修を含んだ研修が計画され、実施されているか?
  • 利用者、利用する障がい児の人権の擁護、虐待の防止等に関する研修を行っていること(少なくとも年1回)
  • 年間の研修計画の作成等により、従業者に対して計画的に研修の機会が設けられているか。
  • 研修の記録が作成され、研修に参加できなかった従業者にも研修内容が共有されているか。

9 車両運行記録、車検証(送迎サービスを実施する場合)

  • 送迎記録が整備され保管されているか。送迎加算を取得している場合には特に注意。

10 市町村・医療機関・他の福祉サービスとの連携の記録

  • 地域住民又はその自発的な活動等との連携及び協力を行う等、地域との交流に努めているか。

11 月毎のサービス提供時間の分かる記録、平均利用者数がわかる記録

  • 定員超過利用減算に係る利用実績記録票が記録されているか。
  • 平均利用者数・人員計算表などの「平均利用者数」を把握するための書類(サービスによる)。その「平均利用者数」に基づいて「勤務形態一覧表」を作成し、人員配置基準をクリアしているかどうかを判断する。
  • 利用者の労働時間や工賃・賃金など報酬区分を算定するための記録がされているか。

サービス提供に関するもの

1 重要事項説明書

  • 最新の重要事項説明書を作成しているか。古い重要事項説明書では必要な記載がなされていない場合があります。
  • 指定を受けているすべての事業について、利用申込者の有無にかかわらず重要事項説明書が作成され整備されていること。
  • 契約前に、あらかじめ重要事項説明書を交付し、事業の内容等について説明していること。説明の順番は、重要事項説明書→利用契約書→個人情報利用同意書です。
  • 重要事項説明書の内容と運営規程の内容が整合していること。
  • 重要事項説明書の内容(営業日時やサービス提供日時、従業員数等)と実態が整合していること。
  • 利用契約書や重要事項説明書について、前もって障がい特性に応じて(ルビ版、拡大文字版、録音版、点字版など)が作成されていること。
  • すべての利用者(給付決定保護者)と利用契約が事業種別ごとに結ばれていること。
  • 重要事項説明書は掲示されているか。掲示が困難な場合は、ファイリングするなどして、随時閲覧可能な状態になっているか。

2 契約書

  • 契約内容報告書を市町村に提出していること(契約時、契約内容の変更時、契約終了時)

3 個人情報使用に関する同意書

  • 個人情報使用に関する同意書には、同居家族の同意欄も設けられているか。

4 サービス提供に関する記録票

基本的取扱

  • サービスの質の評価、改善に向けた取組みを行っているか。例えば、利用者やその家族へのアンケート、職員の自己評価等を行い、その結果等を踏まえた研修等を実施している。

受給者証

  • 事業者及び事業所の名称、契約日、契約内容などの必要事項を受給者証に記載していること(契約時、契約内容の変更時、契約終了時)
  • 受給者証のコピーもしくは支給決定内容等の書き写しを行い、支給決定の有無や有効期間、支給量を把握、管理しているか?

アセスメント

  • 利用者、障がい児の心身の状況、その置かれている環境(住環境を含む)、他の保健医療サービス又は福祉サービスの利用状況を把握(アセスメント)し、アセスメントシートに記録しているか?
  • アセスメントの内容は、都度見直しが行われ、現状と一致しているか?
  • アセスメントにおける課題等と、個別支援計画における支援内容は整合しているか?

個別支援計画

  • サービス提供責任者・サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者が個別支援計画を作成し、その作成者が個別支援計画に明記されているか。
  • 個別支援計画の内容について、利用者又はその家族、給付決定保護者に内容を説明し、同意を得ているか。
  • 個別支援計画を利用者及びその同居の家族、給付決定保護者に交付しているか。作成日や説明・交付日が明記されていること。
  • 個別支援計画には、具体的な支援の内容や所要(目安)時間が明記されているか。
  • サービス提供の一覧の流れに沿って個別支援計画が作成されているか。アセスメント→個別支援計画の原案作成→支援担当者会議→正式な個別支援計画の作成→正式な個別支援計画の説明・同意・交付→毎日の支援記録→モニタリング

支援記録

  • サービス提供日(時間)、サービスの具体的内容、実績時間数、利用者(給付決定保護者)へ伝達すべき必要な事項をサービス提供の都度、記録しているか。

サービス提供実績記録票

  • サービス提供実績記録票に、サービスの都度、利用者(給付決定保護者)から確認(印)をもらっているか。実績をその都度記録し、その都度、利用者(給付決定保護者)より確認をもらうこと。

5 会議記録

  • サービス担当者会議(相談支援事業所が入っている場合)
  • 個別支援担当者会議(個別支援計画の担当者会議)

※サービス担当者会議と個別支援担当者会議は名称が似ていますが別ものですので注意すること。

6 工賃・賃金支払いの記録など

  • 利用者の工賃台帳や賃金台帳。
  • 就労継続支援B型の場合は、工賃規程。
  • 就業規則(就労継続支援A型の事業所では利用者側の就業規則・賃金規定も必要)

介護給付費等の請求に関するもの

1 訓練等給付費

  • 明細書(確認リスト)紙媒体をファイリングしているか。
  • 法定代理受領通知を利用者(給付決定保護者)に送っているか。自己負担額の有無に関わらず、法定代理受領通知を利用者(給付決定保護者)に送付します。
  • 加算に関する書類(処遇改善加算を取得している場合は計画を周知していること)

2 利用者に交付した請求書、領収書の写し

  • 利用料、その他費用の受領の際に、支払い方法に関わらず領収証を交付しているか。
  • 利用料以外の費用を受領するにあたり、あらかじめ文書(重要事項説明書等)で同意を得ているか。

その他必要な書類

1 賠償保険関係書類

  • 事業者賠償責任保険に加入しているか。加入期間が切れていないか。

2 事業者の広告・パンフレット

  • 当該事業所を紹介することの対償として、紹介者に対して金品その他の財産上の利益を供与していないか。また、パンフレットなどの広告物にそのような記載がなされていないか。
  • 利用者又はその家族を紹介することの対償として、金品その他財産上の利益を収受していないか。

3 指定申請書・変更届

  • 変更が生じた際、変更届の手続きは適切に行われているか。
  • 役所に提出した指定申請の書類や変更届などの書類は適切に保管されているか。

4 会計書類

  • 会計を事業ごと(事業所や施設ごとではなく指定事業ごと)に分けているか。
  • 就労系事業の場合は給付費収益と生産活動収益とを分けているか(就労支援会計)。

5 従業者の給与支給簿・給与受領簿

  • 賃金台帳や給料明細書が整備されており保管されていること。

6 従業者の社会保険適用関係書類

  • 労働保険や社会保険の加入などに関する書類が保管されいていること

7 事業所全般

  • 諸記録を5年間保存しているか。
  • 災害や虐待対応その他やむを得ない事情がない限り、定員を遵守しているか。
  • 消火設備その他の非常災害に際して必要な設備を設けているか。
  • 非常災害に関する具体的な計画を立て、非常災害時の関係機関への通報及び連絡体制を整備し、定期的に従業者に周知しているか。
  • 非常災害に備えるため、定期的に避難、救出その他必要な訓練を実施し、その記録を作成しているか(消防法に基づく避難訓練は年2回以上)。

実地指導では、多くの書類が確認されます。実地指導にくる行政の担当者も通常は2人~4人程度が普通ですが、事業所数が多い場合や不正が疑われるような場合はもっと多くの担当官がくる場合もあります。

当事業所では実地指導対策としての書類チェックサービスも行っております。普段から法令や基準を遵守した運営がなされていれば必要以上に恐がることはありませんが、日々の業務も多忙であるのが通常でしょうから、普段から実地指導を意識した帳票類の整備を行い、コンプライアンスを意識した運営を心掛けるようにしましょう。

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