放課後等デイサービスの基本報酬については、令和3年度障害福祉サービス等報酬改定において大きく見直されました。今後も制度改正によって見直しが繰り返されるかと思われますが、令和3年度の改定によって放課後等デイサービスの基本報酬の算定構造は以下のようになりました。放課後等デイサービスの基本報酬を考える際には次の視点から考えていくようにしましょう。
①授業終了後(放課後)or 学校の休校日(学校休業日)
例えば、利用定員10人(医療的ケア児以外)の放課後等デイサービス(一般型・サービス提供時間3時間以上)の事業所では、
- 授業終了後(放課後)では、 604単位
- 学校の休校日(学校休業日)では 721単位
となり、学校休業日の方が単位も高く設定されています。
②サービス提供時間が3時間以上か3時間未満か
- 放課後等デイサービスのサービス提供時間が3時間以上・・・区分1
- 放課後等デイサービスのサービス提供時間が3時間未満・・・区分2
※ここでいう「提供時間」は、運営規程等に定める標準的なサービス提供時間に1日に設置される単位の数を乗じた数とします。
(例1) |
---|
A 標準的なサービス提供時間:4時間 B 1日に設置される単位の数:1単位 →提供時間:A×B=4時間 |
(例2) |
---|
A 標準的なサービス提供時間:2時間 B 1日に設置される単位の数:2単位 →提供時間:A×B=4時間 |
③医療的ケア児の新スコアによる判定
医療的ケア児の新スコアによる判定によって報酬算定上は以下のように分類されます。
(1)医療的ケア児の新スコアが32点以上の場合
(2)医療的ケア児の新スコアが16点以上の場合
(3)医療的ケア児の新スコアが3点以上の場合
(4)医療的ケア児以外の場合
新基準 | 基本 スコア |
見守りスコア | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
高 | 中 | 低 | ||||
1 | 人口呼吸器 (NPPV、ネイザルハイフロー、 パーカッションベンチレーター、 排痰補助装置、高頻度胸壁 振動装置を含む) |
※1 | 10 | 2 | 1 | 0 |
2 | 気管切開 | ※2 | 8 | 2 | 0 | |
3 | 鼻咽頭エアウェイ | 5 | 1 | 0 | ||
4 | 酸素療法 | 8 | 1 | 0 | ||
5 | 吸引 | 口鼻腔・気管内吸引 | 8 | 1 | 0 | |
6 | 利用時間中のネブライザー使用・ 薬液吸入 |
3 | 0 | |||
7 | 経管栄養 | 経鼻胃管、胃瘻 | 8 | 2 | 0 | |
経鼻腸管、経胃瘻腸管、腸瘻、 食堂瘻 |
8 | 2 | 0 | |||
持続経管注入ポンプ使用 | 3 | 1 | 0 | |||
8 | 中心静脈カテーテル | 中心静脈栄養、肺高血圧症 治療薬、麻薬など |
8 | 2 | 0 | |
9 | その他の注射管理 | 皮下注射 (インスリン、麻薬など) |
5 | 1 | 0 | |
持続皮下注射ポンプ使用 | 3 | 1 | 0 | |||
10 | 血糖測定 ※3 |
利用時間中の観血的 血糖測定器 |
3 | 0 | ||
埋め込み式血糖測定器による 血糖測定 |
3 | 1 | 0 | |||
11 | 継続する透析 (血液透析、腹膜透析を含む) |
8 | 2 | 0 | ||
12 | 排尿管理 ※3 |
利用期間中の間欠的導尿 | 5 | 0 | ||
持続的導尿 (尿道留置カテーテル、 膀胱瘻、腎瘻、尿道ストーマ) |
3 | 1 | 0 | |||
13 | 排便管理 ※3 |
消化管ストーマ | 5 | 1 | 0 | |
利用時間中の摘便、浣腸 | 5 | 0 | ||||
利用時間中の浣腸 | 3 | 0 | ||||
14 | 痙攣時の管理 | 座薬挿入、吸引、酸素投与、 迷走神経刺激装置の作動など |
3 | 2 | 0 |
※ 見守りスコアは医師が判定します。
※1 人口呼吸器の見守りスコアについては、人口呼吸器回路が外れた場合、自発呼吸がないために直ちに対応する必要がある場合は「高」2点、ただちにではないが概ね15分以内に対応する必要がある場合は「中」1点、それ以外の場合は「低」0点と分類します。
※2 人工呼吸器と気管切開の両方を持つ場合は、気管切開の見守りスコアは加点しません。
※3 ⑩血糖測定、⑫排尿管理、⑬排便管理については、複数項目のいずれか一つを選択する。
※4 インスリン持続皮下注射ポンプと埋め込み式血糖測定器とか連動している場合は、血糖測定の項目は加点しません。
令和3年4月以降は、基本報酬算定における「指標該当児」の割合による区分は廃止されました。
わかりやすい放課後等デイサービスの基本報酬の算定構造
放課後等デイサービスの基本報酬部分の算定構造は、令和3年4月以降、以下のようになります。
一般型事業所(重症心身障がい児以外が通所する事業所)
授業終了後(放課後)
授業終了後(一般型) | |||||
---|---|---|---|---|---|
区分1(3時間以上) | 区分2(3時間未満) | ||||
医療的ケア児 (判定スコア32点以上) |
医療的ケア児 (判定スコア32点以上) |
||||
(a) | 定員10人以下 | 2,604単位 | (a) | 定員10人以下 | 2,591単位 |
(b) | 定員11人以上20人以下 | 2,402単位 | (b) | 定員11人以上20人以下 | 2,393単位 |
(c) | 定員21人以上 | 2,302単位 | (c) | 定員21人以上 | 2,295単位 |
医療的ケア児 (判定スコア16点以上) |
医療的ケア児 (判定スコア16点以上) |
||||
(a) | 定員10人以下 | 1,604単位 | (a) | 定員10人以下 | 1,591単位 |
(b) | 定員11人以上20人以下 | 1,402単位 | (b) | 定員11人以上20人以下 | 1,393単位 |
(c) | 定員21人以上 | 1,302単位 | (c) | 定員21人以上 | 1,295単位 |
医療的ケア児 (判定スコア3点以上) |
医療的ケア児 (判定スコア3点以上) |
||||
(a) | 定員10人以下 | 1,271単位 | (a) | 定員10人以下 | 1,258単位 |
(b) | 定員11人以上20人以下 | 1,069単位 | (b) | 定員11人以上20人以下 | 1,060単位 |
(c) | 定員21人以上 | 969単位 | (c) | 定員21人以上 | 962単位 |
医療的ケア児以外 | 医療的ケア児以外 | ||||
(a) | 定員10人以下 | 604単位 | (a) | 定員10人以下 | 591単位 |
(b) | 定員11人以上20人以下 | 402単位 | (b) | 定員11人以上20人以下 | 393単位 |
(c) | 定員21人以上 | 302単位 | (c) | 定員21人以上 | 295単位 |
学校休業日
学校休業日(一般型) | ||
---|---|---|
医療的ケア児(判定スコア32点以上) | ||
(a) | 利用定員10人以下 | 2,721単位 |
(b) | 利用定員11人以上20人以下 | 2,480単位 |
(c) | 利用定員21人以上 | 2,372単位 |
医療的ケア児(判定スコア16点以上) | ||
(a) | 利用定員10人以下 | 1,721単位 |
(b) | 利用定員11人以上20人以下 | 1,480単位 |
(c) | 利用定員21人以上 | 1,372単位 |
医療的ケア児(判定スコア3点以上) | ||
(a) | 利用定員10人以下 | 1,388単位 |
(b) | 利用定員11人以上20人以下 | 1,147単位 |
(c) | 利用定員21人以上 | 1,039単位 |
医療的ケア児以外 | ||
(a) | 利用定員10人以下 | 721単位 |
(b) | 利用定員11人以上20人以下 | 480単位 |
(c) | 利用定員21人以上 | 372単位 |
重心型事業所(主に重症心身障がい児が通所する事業所)
授業終了後(放課後)
授業終了後(重心型) | ||
---|---|---|
(一) | 利用定員5人 | 1,756単位 |
(二) | 利用定員6人 | 1,467単位 |
(三) | 利用定員7人 | 1,263単位 |
(四) | 利用定員8人 | 1,108単位 |
(五) | 利用定員9人 | 989単位 |
(六) | 利用定員10人 | 893単位 |
(七) | 利用定員11人以上 | 686単位 |
学校休業日
学校休業日(重心型) | ||
---|---|---|
(一) | 利用定員5人 | 2,038単位 |
(二) | 利用定員6人 | 1,706単位 |
(三) | 利用定員7人 | 1,466単位 |
(四) | 利用定員8人 | 1,288単位 |
(五) | 利用定員9人 | 1,150単位 |
(六) | 利用定員10人 | 1,039単位 |
(七) | 利用定員11人以上 | 810単位 |
わかりやすい放課後等デイサービスの地域区分
地域区分というのは、地域間における人件費の差を勘案して、地域間の支援費の配分方法を調整するために設けられた区分です。障がい福祉の分野においても、類似制度である介護報酬のおける地域区分との均衡を考慮して、原則、公務員の地域手当の設定に準拠している介護報酬の地域区分の考え方に合わせることとされています。
放課後等デイサービスの報酬単位がわかれば、次に事業所が所在する地域の地域区分を把握しましょう。
奈良県の放課後等デイサービスの地域区分
地域 区分 |
1単位あたり | 奈良県 | |
---|---|---|---|
一般型 | 重心型 | ||
6級地 | 10.36円 | 10.46円 | 奈良市、大和高田市、大和郡山市、生駒市 |
7級地 | 10.18円 | 10.23円 | 天理市、橿原市、桜井市、御所市、香芝市、葛城市、宇陀市、 山添村、平群町、三郷町、斑鳩町、安堵町、川西町、三宅町、 田原本町、曽爾村、明日香村、上牧町、王寺町、広陵町、河合町 |
その他 | 10円 | 10円 | 五條市、吉野町、その他 |
例えば、奈良市(6級地)で放課後等デイサービス(一般型)を運営する場合(定員10人・サービス提供時間3時間以上)
- 授業終了後(放課後) 604単位 × 10.36 = 6,257円/日
- 学校休業日 721単位 × 10.36 = 7,470円/日
となり、放課後では、1人あたり6,257円/日、学校休業日では、1人あたり7,470円/日の報酬が算定されることになります。
京都府の放課後等デイサービスの地域区分
地域 区分 |
1単位あたり | 京都府 | |
---|---|---|---|
一般型 | 重心型 | ||
5級地 | 10.60円 | 10.76円 | 京都市 |
6級地 | 10.36円 | 10.46円 | 宇治市、亀岡市、向日市、長岡京市、八幡市、京田辺市、 木津川市、精華町 |
7級地 | 10.18円 | 10.23円 | 城陽市、大山崎町、久御山町 |
その他 | 10円 | 10円 | 南丹市、井手町、その他の市町村 |
例えば、京都市(5級地)で放課後等デイサービス(一般型)を運営する場合(定員10人・サービス提供時間3時間以上)
- 授業終了後(放課後) 604単位 × 10.60 = 6,402円/日
- 学校休業日 721単位 × 10.60 = 7,643円/日
となり、放課後では、1人あたり6,402円/日、学校休業日では、1人あたり7,643円/日の報酬が算定されることになります。
大阪府の放課後等デイサービスの地域区分
地域 区分 |
1単位あたり | 大阪府 | |
---|---|---|---|
一般型 | 重心型 | ||
2級地 | 10.96円 | 11.22円 | 大阪市 |
3級地 | 10.90円 | 11.14円 | 守口市、大東市、門真市 |
4級地 | 10.72円 | 10.91円 | 豊中市、池田市、吹田市、高槻市、寝屋川市、箕面市 |
5級地 | 10.60円 | 10.76円 | 堺市、枚方市、茨木市、八尾市、松原市、羽曳野市、摂津市、 高石市、東大阪市、交野市 |
6級地 | 10.36円 | 10.46円 | 岸和田市、泉大津市、貝塚市、泉佐野市、富田林市、 河内長野市、和泉市、柏原市、藤井寺市、泉南市、四條畷市、 大阪狭山市、阪南市、島本町、能勢町、忠岡町、熊取町、 田尻町、岬町、太子町、河南町、千早赤坂村 |
7級地 | 10.18円 | 10.23円 | 能勢町 |
その他 | 10円 | 10円 | その他の地域 |
例えば、大阪市(2級地)で放課後等デイサービス(一般型)を運営する場合(定員10人・サービス提供時間3時間以上)
- 授業終了後(放課後) 604単位 × 10.96 = 6,620円/日
- 学校休業日 721単位 × 10.96 = 7,902円/日
となり、放課後では、1人あたり6,620円/日、学校休業日では1人あたり7,902円/日の報酬が算定されることになります。
当事務所では、大阪・京都・奈良での放課後等デイサービスの開業支援や運営支援を行っております。放課後等デイサービス事業では、事業所としての収支を考えながら、他方では人員基準や運営基準といった法令等を遵守しながら事業所運営をしていかなければならず、非常に舵取りの難しい事業となっています。放課後等デイサービスの開業や運営でお困りの方は、お電話またはメールにてご相談ください。