相談支援事業は、障がい者の方が障がい福祉サービスについての情報など必要な情報や助言を受けることができる事業をいいます。
障がい者が、障がい福祉サービスを適切に受けるためには、様々な情報を得て適切な判断をする必要があります。しかし、障がい者を対象にした福祉サービスを受けようとしても、どのようなサービスがあるのか?自分に合ったサービスはどのようなサービスなのか?を把握することは容易ではありません。
そのため、障がい者や障がい者の保護者などからの相談に応じて、障がい者支援について必要な情報を提供しているのです。
目次
相談支援事業の種類
相談支援事業には、市町村が地域生活支援事業として実施する基本相談支援と、障がい福祉サービスの個別給付として行われる「一般相談支援(地域相談支援)」「特定相談支援(計画相談支援)」「障害児相談支援(障害児相談支援)」があります。基本相談支援は、自治体によっては、市町村から指定を受けた事業所が委託を受けて実施している場合もあります。
相談支援事業(個別給付)は、「一般相談支援事業(地域相談支援)」「特定相談支援事業(計画相談支援)」「障害児相談支援事業(障害児相談支援)」に分かれます。一般相談支援事業(地域相談支援)はさらに「地域移行支援」と「地域定着支援」に分かれます。
「一般相談支援(地域移行支援)」では、施設に入所中の障がい者などが地域における生活に移行できるように住居の確保などの必要な支援をします。支援の対象者は、施設などに入所している障がい者や障がい児です。
「一般相談支援(地域定着支援)」では、居宅で生活する障がい者に対して常時の連絡体制の確保など、緊急の事態等における相談やその他の支援を行います。支援の対象者は、居宅において障がい者の家族等による緊急時の支援が見込めない状況にある方です。
「特定相談支援事業」と「障害児相談支援事業」では、障がい者・障がい児やその家族などから就学・就労・家族関係といった基本的な相談をはじめ、計画相談支援サービスの利用に関する相談などを受け付けています。相談を受けた事業所は、在籍する相談支援専門員が、面談、アセスメント(現在の状況や問題点を解決するための課題について調査すること)など実施して、サービス等利用計画を作成します。
障がい児に関する相談支援
注意しなければいけないのは、障がい児に関する相談支援です。障がい児に関する相談支援は、「居宅サービスに関する相談」と「通所サービスに関する相談」に分けられます。
居宅サービスに関する相談支援
居宅サービスに関する相談支援については、市町村から指定を受けた特定相談支援事業者が行います。これは障害者総合支援法に基づく支援ですので、「特定相談支援事業所」としての指定を受ける必要があります。
通所サービスに関する相談支援
通所サービスに関する相談支援については、障害児支援利用援助と継続障害児支援利用援助に分けられます。この通所サービス関する相談支援は、児童福祉法に基づく支援ですので、「障害児相談支援事業所」としての指定を受ける必要があります。
障がい児について、自治体によっては、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス及び児童福祉法に基づく障害児通所支援のサービスについて一体的に判断することが望ましいことから、指定特定相談支援事業所及び指定障害児相談支援事業所の両方の指定を受けることを基本としている場合があります。必ず事前に自治体に確認するようにしましょう。
相談支援事業の開業手順
相談支援事業を行うためには、事業所としての指定を受ける必要があります。
相談支援事業所を運営するための法人を設立する
相談支援事業所の指定をとるためには、相談支援事業所を運営する主体が法人格を有していなければなりません。個人事業主では相談支援事業所を運営するための責任の帰属主体として弱いからです。
ただ、法人格といっても法人には、いくつか種類があります。株式会社、合同会社、一般社団法人、特定非営利活動法人(NPO法人)、社会福祉法人などです。最近は、合同会社や一般社団法人といった比較的簡易に設立できる法人形態が増えているようです。また、法改正により特定非営利活動法人(NPO法人)も設立手続きにかかる時間は以前に比べて短縮されましたが、特定非営利活動法人(NPO法人)は民間金融機関からの融資を受けにくく、行政手続きも営利法人よりも頻繁にあります。ですので、法人を設立する際には、設立にかかる諸手続きの時間や費用などを比較検討してどの法人形態にするかを検討するようにしましょう。
【特定非営利活動法人(NPO法人)設立の流れ】
設立総会 → 担当窓口に書類を提出 → 縦覧期間(2週間) → 審査(2ヶ月) → 認証証が届く → 登記申請(1週間~半月) → 登記完了届を担当窓口に提出
※令和2年12月、特定非営利活動促進法が改正され(令和3年6月9日施行)、設立認証時申請書類の縦覧期間が従来の1ヶ月から2週間に短縮されました。
相談支援事業所としての「指定」を受ける
都道府県(市町村)ごとに相談支援事業所の指定申請手続きのスケジュールが決められています。その決められたスケジュールに合わせて役所担当課で調査や協議を行い、資料収集、書類作成をすすめていくことになります。指定日(事業開始日)をいつに希望するかによって指定申請の締切日が決まることになります。
例えば、
- 大阪市の場合 指定申請・受理(指定日前月10日まで)→ 審査 → 指定
- 京都市の場合 指定申請・受理 → 審査(概ね2ヶ月)→ 指定
- 奈良市の場合 指定申請・受理(指定日2ヶ月前末日まで)→ 審査 → 指定
相談支援事業の指定申請の場合、上記の「相談支援事業の種類」でみたように「一般」「特定」「障害児」と種類がありますが、これらを同じ人員で指定申請することは可能です。ただし、種類によって申請先が異なる場合がありますので注意しましょう。
また、相談支援事業の指定申請では、ほとんどの自治体で事前協議(事前相談)を経ないでいきなり指定申請書類を提出することは可能ですが、指定申請の前にできるだけ行政との事前の相談を経ておくことをお勧めいたします。
事前協議(事前相談)の次は、指定申請を行います。指定申請では、使用する物件が適法な状態であることや人員基準を満たしていることなどを証明するために各種資料の収集や申請書類を作成していくことになります。
指定申請の際には、様々な多くの書類を作成していくことになります。大きなポイントとなる部分を挙げるとすれば、Ⅰ:人員基準、Ⅱ:物件の適法性・設備基準 がポイントとなります。
Ⅱ 物件の間取りが適切で、設備基準を満たしているか
Ⅰ.相談支援事業の指定申請が受理されるためには、相談支援事業の人員配置基準(人員基準)を満たしていなければいけません。
相談支援事業の指定申請が受理されるためには、相談支援専門員を中心とした人員配置が非常
に重要となります。また、相談支援専門員になるには相談援助の一定の実績が求められます。
指定相談支援事業の人員基準
職 種 | 人員配置基準 | 常勤要件 | 備考 |
---|---|---|---|
管理者 | 1名以上 | 常勤 | 兼務可 |
相談支援専門員 | 1名以上 | 常勤 | 資格等により一定期間の実務経験(3~10年)+研修修了 |
※ 一般相談支援事業の場合、地域移行支援or地域定着支援の職務に従事する者のうち、1名は相談支援専門員でなければなりません。
Ⅱ.相談支援事業の指定申請が受理されるためには、物件の間取りが適切であり、設備基準を満たしている必要があります。
相談支援事業として使用する物件では、相談室や手指洗浄用の洗面台などの設備が適切に設置されている必要があります。
指定相談支援事業の設備基準
設 備 | 要 件 |
---|---|
事務室 | 鍵付き書庫を設置すること。 |
相談室 | プライバシーに配慮していること。 |
洗面所・トイレ | 洗面所(手指洗浄)はトイレ内手洗いとは別々であること。 |
指定申請書類が受理されて審査を経た後に、ようやく相談支援の「指定」を取得することができます
相談支援事業の指定を取得することももちろん大切ですが、指定を取得した後の「運営面」こそが非常に大切になります。指定を取得するということは言い換えれば、事業運営のスタートラインに立てただけといっても過言ではないでしょう。
とくに、相談支援事業のような障がい福祉サービス事業では、コンプライアンス(法令遵守)を意識した経営が必要になってきます。障がい福祉サービス事業の事業所収益は税金が投入されているからです。当事務所では、法令に適合した運営を行っていただけるように運営コンサルティングサービスも行っております。
相談支援事業の開業支援に詳しい行政書士が支援
相談支援事業の事業所をはじめとする障がい福祉サービス事業の指定申請では、行政によって指定申請スケジュールが決められています。その決められた指定申請スケジュールに合わせて、調査、協議、資料収集、書類作成などを行っていかなければなりません。うまくスケジュールどおりに手続きをすすめられなければ、事業を開始できる日(指定日)がどんどん後ろにズレてしまうことになり、これではいつまで経っても開業できず収益をあげられないのに、物件家賃や従業員給料などの経費が出ていくだけになってしまいます。実際に、事業所としての指定はとれたものの、資金繰りに窮してしまい開業してから2~3ヶ月で廃業してしまう事業所さんも現実にはあるのです。
そうならないためには、相談支援事業の収支予算シミュレーションを考えながら開業時点(指定日)を目標設定することにより、必要となるタスクを逆算で洗い出し、適切なタイミングで調査、協議、資料収集、書類作成などを行っていかなくてはなりません。物件の賃貸借契約の締結や従業員との雇用契約も指定日を明確にすることによって、適切な賃貸契約のタイミング、雇用契約のタイミングが判断できるようになるのです。
これらの指定申請の手続きをスケジュールどおりに行うには指定申請に詳しい実績のある行政書士でなければ難しいでしょう。相談支援事業の指定申請手続きの経験のない行政書士や、コンサルタントが申請手続きを受託して「開業手続きの準備途中で挫折してしまった・・・」「いつまでたっても指定がとれない・・・」という話はこの業界ではよく聞く話です。
当事務所では、相談支援事業の指定申請手続きの実績も豊富でございます。指定申請後の運営面も見据えた指定申請を行っていきましょう。
当事務所にご依頼いただく3つのメリット
手続きだけではありません!!
当事務所では、単に「指定申請手続き」といった開業時の手続きのみに対応するだけではありません。指定申請後の運営面を見据えたコンサルティングも行います。例えば、特定事業所加算をとるにはどのような要件をそろえればその「加算」がとれて、その加算をとれば幾らぐらいの売上が見込まれるのか・・・などのアドバイスをしながら指定申請の手続きをすすめていきます。
指定後の運営コンサルティングにも対応!!
障がい福祉サービス事業は、事業所の収益に税金が投入されるわけですから、厳しいコンプライアンス(法令遵守)が求められる業界です。相談支援事業のような事業所でも定期的に行政による実地指導は入ります。いいかげんな運営をしていては、行政から返金を求められたり、最悪の場合は指定取消となってしまうケースもあります。当事務所では、事業所の収支を意識した戦略的な事業運営とコンプライアンス(法令順守)経営が両立するような運営コンサルティングサービスを行っております。
地域密着型で顔が見えるので安心!!
当事務所は、大阪、京都、奈良のちょうど中心にある枚方を拠点としております。障がい福祉サービス事業は、指定権者(事業所を管轄する行政庁)ごとに細かなルールが決められておりローカルルールの激しい業界です。そのため、オンラインだけで完結するのではなく、指定申請手続きの過程で何度も対面でのお打合せをさせていただきながら、お客様と当事業所が二人三脚となって指定申請手続きをすすめさせていただきます。
相談支援事業の開業ご依頼の際の流れ
① 物件の目途をつけましょう。
この時点では、まだ大家さんと正式に賃貸借契約を締結しません。正式な賃貸借契約は担当役所との事前協議(事前相談)を経た後に締結することになります。
相談支援事業では、指定申請手続きに事前協議もしくは事前相談は無いのが一般的ですが、指定がとれない物件で契約してしまわないように事前に行政との事前の相談を経てから、つまり「その物件で大丈夫だ」という裏を取ってから契約を締結することをお勧めいたします。
② 相談支援専門員を確保しましょう。
相談支援専門員は、相談支援事業所を運営していくうえで非常に重要な職種になります。
ただし、相談支援専門員は誰でもなれるわけではなく、一定の実務経験や研修修了の要件をみたしていなければなりません。相談支援事業を起ち上げたい方は相談支援専門員をはやい段階で仲間になってくれるように打診しておきましょう。
③ 当事務所へ依頼しましょう。
上記1.2の目途がついた段階でご依頼いただくのが一番スムーズでありますが、できるだけはやい段階でご相談いただければ物件選びの注意点や人員基準の考え方などもアドバイスいたします。
相談支援事業の料金(特定相談、一般相談、障害児相談の各単体での申請の場合)
料金 | 250,000円(税別) |
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※法人設立業務は提携司法書士が行います。提携司法書士との別途契約となります。
※特定相談、一般相談、障害児相談を2種類以上同時申請する場合は別途御見積となります。
ご依頼いただく際にご準備いただくとスムーズな資料
- 物件の情報
物件の位置(住所地)、間取り、面積がわかるもの - 相談支援専門員の情報
履歴書、資格証、研修修了証、実務経験証明書(必要な場合)の各コピー - 法人の定款・登記簿
事業の「目的欄」が適切に記載されているかどうかを確認します。
適切に記載されていなければ変更の手続きをする必要があります。