令和3年度報酬改定等に伴い、一部のサービスについて基本報酬の見直し、加算の新設又は算定要件の見直しがあり、放課後等デイサービスにおいても、医療的ケア児に医療的ケアを行う場合には看護職員の配置が求められるなどの制度改正がありました。ここでは放課後等デイサービスの一般型事業所(主として重症心身障害児を受け入れる場合以外)における看護職員の配置について解説します。
【放課後等デイサービスの基本的な配置基準】
医療的ケア児に医療的ケアを行う場合、一般型の放課後等デイサービスの事業所では、看護職員(保健師、助産師、看護師又は准看護師)を1人以上配置する必要があります。
医療的ケアの内容が喀痰吸引等のみで、喀痰吸引等を実施できる従業者(看護職員以外)がいる場合、利用する医療的ケア児に必要な医療的ケアを行うことができれば足りることから、看護職員を配置する必要はありません。ただし、看護職員を置いて医療的ケアを提供しない場合は、「医療的ケア区分に伴う基本報酬」は算定できません。
これまで訪問看護ステーションの看護職員に訪問してもらい、事業所を利用する医療的ケア児に医療的ケアを提供するような場合、利用する医療的ケア児に必要な医療的ケアを行うことができれば足りることから、自事業所に別に看護職員を置く必要はありません。(このような場合で、医療的ケア児の利用が3人未満の場合は、医療連携体制加算を算定できます)
看護職員の確保が難しく、医療的ケア児の保護者に付き添ってもらうことで事業所に通えているケースのような場合、医療的ケア児に必要な医療的ケアを保護者が行うのでれば、事業所が医療的ケア児を受け入れることはできます(指定基準違反にはなりません)。ただし、保護者の付添がないと当該児童が事業所に通えない状況は望ましくないため、事業所において看護職員の確保に努めなければなりません。
放課後等デイサービスの人員基準の児童指導員等の員数への算入
医療的ケアを行う場合において、サービス提供時間帯を通じて配置した「看護職員」は、人員基準の児童指導員等として計上することが可能です。
(例)定員10人の場合、保育士が1名、看護職員1名で基準の児童指導員等を2名配置したことになります。
ただし、「医療的ケア区分に応じた基本報酬」は、人員基準の児童指導員等の配置とは別に、看護職員の雇用を可能となるように報酬を設定しているため、医療的ケア区分に応じた基本報酬や医療連携体制加算を算定する上で配置した看護職員については、その看護職員を人員基準の児童指導員等として計上することはできません。
また、人員基準の児童指導員等の員数に「看護職員」を加える場合であっても、半数以上は児童指導員又は保育士である必要があります。
(例)定員10人の場合、人員基準の児童指導員等は2名必要。このうち、半数(1人)までは「看護職員」にできるが、もう1人は児童指導員又は保育士であることが必要です。
※言語聴覚士を多数配置する必要がある主として難聴児を通わせる児童発達支援センターについては、この取扱いの対象外となります。
医療的ケア児を多く受け入れる事業所では、複数の看護職員の配置が必要ということになります。定員10名の場合、人員基準の児童指導員等は2人必要となりますが、その半数(1人)を児童指導員又は保育士とすれば足り、10:2の配置外の人員の多くを看護職員とすることも可能です。
【放課後等デイサービスの報酬算定】
放課後等デイサービスの報酬算定では、医療的ケア区分と看護職員の配置がポイントとなります。
放課後等デイサービスの基本報酬算定の前提(医療的ケア区分と必要な看護職員数)
医療的ケア児は、医療的ケアスコア(=医療濃度)に応じて、医療的ケア区分の判定がされ、受給者証に医療的ケア区分が印字されることになります。
医療的ケア区分が高いほど、看護職員の配置を手厚くする必要が生じますので、その分、報酬単価も高く設定されています。
医療的ケア 区分 |
医療的ケア スコア |
医ケア児:看護職員 配置割合 |
報酬 (3時間以上・10人定員) |
---|---|---|---|
3 | 32点以上 | 1:1 | 2,604単位 |
2 | 16点以上 | 2:1 | 1,604単位 |
1 | 3点以上 | 3:1 | 1,271単位 |
なし | ー | ー | 604単位 |
なお、医療的ケア区分3(32点以上)の場合、医療的ケア区分1(3点以上)及び医療的ケア区分2(16点以上)にも該当するため、医療的ケア区分3、2及び1のいずれの報酬も算定できることになります(医療的ケア区分2についても、医療的ケア区分2及び1のいずれの報酬も算定可能)。
放課後等デイサービスにおける基本報酬の算定要件(基本的な考え方)
放課後等デイサービスにおける「医療的ケア区分に応じた基本報酬」を算定するには、当該放課後等デイサービス事業所を利用する医療的ケア児の「医療的ケア区分」に応じて看護職員を配置して支援を行う必要があります。
- 医療的ケア区分3の児童と看護職員の配置=1:1(1:1)
- 医療的ケア区分2の児童と看護職位の配置=2:1(1:0.5)
- 医療的ケア区分1の児童と看護職員の配置=3:1(1:0.33)
放課後等デイサービスに必要な「看護職員」の配置が行われたかどうかの判定は、「一月を通じて配置が足りているかどうか」で考えます。
(例)4月に、
医療的ケア区分3の医療的ケア児Aは5日、
医療的ケア区分2の医療的ケア児Bは8日、
医療的ケア区分1の医療的ケア児Cは15日、医療的ケア児Dは16日利用した。
この場合、
- 医療的ケア区分3 医療的ケア児1人×5日×看護職員1人=看護職員5人
- 医療的ケア区分2 医療的ケア児1人×8日×看護職員0.5人=看護職員4人
- 医療的ケア区分1 医療的ケア児(1人×15日+1人×16日)×看護職員0.33人=看護職員10.23人
- 5人+4人+10.23人=19.23人 ← 一月に必要な看護職員数
放課後等デイサービスの当月実績として、医療的ケア児が利用する日に配置した看護職員の人数(配置看護職員数)の合計人数(配置看護職員合計数)が、上記の方法で算出した一月に必要な看護職員数(必要看護職員合計数)以上になった場合に、「医療的ケア区分に応じた基本報酬」を算定することができます。
「必要看護職員数 ≦ 配置看護職員合計数 」 ←この場合に放課後等デイサービスにおける「医療的ケア区分に応じた基本報酬」を算定することができます。
看護職員の配置を確認するための勤務一覧表のイメージ
※4月1日(月)
- 区分3の医療的ケア児が1人・・・必要看護職員数は1人(1×1)
- 区分2の医療的ケア児が1人・・・必要看護職員数は0.5人(1×0.5)
- 区分1の医療的ケア児が2人・・・必要看護職員数は0.66人(2×0.33)
⇒必要看護職員数は合計2.16人
※4月15日(月)、4月17日(水)
実際に配置した看護職員数(配置看護職員数)が、日ごとに必要看護職員数以上となる必要はありません。
※合計部分(右端部分)
1か月の合計で「必要看護職員合計数≦配置看護職員合計数」となれば「医療的ケア区分に応じた基本報酬」を算定することができます。
放課後等デイサービスにおける看護職員「1人」の考え方
放課後等デイサービスにおいて医療的ケア児へのサービス提供時間帯を通じて看護職員を配置していた場合に「1」として数えます。
医療的ケア児が利用する時間帯を通じて配置されていないと、配置看護職員として計上できません。
医療的ケア児が利用する時間帯を通じて配置する看護職員は、同一の看護職員でなくても、サービス提供時間帯の途中で交代して支援をすることも可能です。
看護職員を配置している日に医療的ケア児が利用したものの、偶然、当該日において医療的ケアを提供する必要がなかった場合(例えば痙攣が発生しなかった等)も、看護職員を「1」として計上することは可能です。
看護職員としての計上を認めない配置例
- 医療的ケア児へのサービス提供時間帯に兼務で、同一敷地内の他の建物や他のフロアで提供しているサービスと行き来し、医療的ケア児へのサービス提供時間帯に不在の場合がある。
- 医療的ケア児へのサービス提供時間帯の半分だけ配置している。
- 訪問看護ステーション等から看護職員の派遣を受けて医療的ケアを提供する場合は、配置した看護職員として計上することはできません。訪問看護ステーション等から看護職員の派遣を受けて医療的ケアを提供する場合は、「医療連携体制加算」を算定することになります。
放課後等デイサービスの基本報酬の算定方法
放課後等デイサービスにおいて、配置看護職員合計数が、必要看護職員合計数「以上」となった場合に、「医療的ケア区分に応じた基本報酬」を算定することができます。その算定は、医療的ケア児に対して、当該医療的ケア児の医療的ケア区分に応じて行います。
(例)放課後等デイサービス(3時間以上)10人定員の場合
- 医療的ケア児(区分3)A ←2,604単位を算定
- 医療的ケア児(区分2)B ←1,604単位を算定
- 医療的ケア児(区分1)C ←1,271単位を算定
- 医療的ケア以外の障がい児 D~J ←604単位
放課後等デイサービスの報酬請求は、当該月の利用日全てにおいてできますが、医療的ケア児へのサービス提供時間帯を通じて全く看護職員が配置されていなかった日については算定できません(一部であっても看護職員が配置されていれば報酬は算定できます)。
※医療的ケア児を受け入れて、医療的ケアを行う上で、看護職員がいないという状況は基本的には想定していませんが、事業者には看護職員の欠勤等の可能性も考慮して事業所の体制を整えることが求められます。しかし、やむを得ない場合に、出勤予定の看護職員が出勤できなかった場合に、例えば、
- 医療的ケア児に短時間でもサービスを提供し、保護者の理解を得て、医療的ケア児へのサービス提供時間が短くなるよう調整する。
- 隣接する同一法人の事業所の看護職員に、定点的に医療的ケアを実施してもらう。
といった事態が生じる可能性も考えられますので、このような場合に医療的ケア児へのサービス提供時間帯を通じて全く看護職員が配置されていなかった日については算定できないという取扱いとなります。
また、「配置看護職員として計上できるか」と「医療的ケア区分に伴う報酬を請求できるか」は取扱いが異なりますので注意する必要があります。
看護職員を医療的ケア児の サービス提供時間帯を通じて 配置したかどうか。 |
配置看護職員として 計上できるか。 |
「必要看護職員合計数≦配置看護職員合計数」のときに、 医療的ケア区部に伴う報酬を請求できるか。 |
---|---|---|
配置した。 | 〇 | 〇 |
一部の時間帯だけ配置した。 | × | 〇 |
配置できなかった。 | × | × |
なお、放課後等デイサービスに配置した配置看護職員合計数が、必要看護職員合計数未満となった場合は、以下の方法で、配置看護職員合計数と必要看護職員数を計算し直します。
① 放課後等デイサービスにおける当該月の医療的ケア児に係る利用日のうち、必要看護職員数に対する配置看護職員数の不足数が大きい日について、必要看護職員合計数と配置看護職員合計数から、それぞれ除外する。
② ①を除外した必要看護職員合計数と配置看護職員合計数を比較し、「必要看護職員合計数≦配置看護職員」となるまで①を行います。
③ ①~②で、除外した日以外において利用した医療的ケア児について、「医療的ケア区分に係る基本報酬」を算定することができます(除外した日については、医療的ケア児であっても、「医ケア以外の障がい児の基本報酬」を算定します)。
※必要看護職員合計数と配置看護職員合計数は四捨五入を行わず、小数点以下も含めて比較します。
(再計算方法の例)
① 必要看護職員合計数(19.23人)>配置看護職員合計数(18人)のため、必要看護職員数に対する配置看護職員数の不足額が大きい日を、必要看護職員合計数及び配置看護職員合計数から除外します。
上記の例では、4/1(月)と4/8(月)が、必要看護職員数(2.16)に対して配置看護職員合計数(1)と、その差が1.16と最も大きくなっているので、4/1(月)の人数を除外します(差が同じなので4/8(月)でも可)。
② 4/1(月)の人数を除外したときの必要看護職員合計数は17.07人(19.23人-2.16人)、配置看護職員合計数は17人(18人-1人)となります。
必要看護職員合計数(17.07人)>配置看護職員合計数(17人)のため、次に、必要看護職員数に対する配置看護職員数の不足数が大きい日である4/8(月)の人数を除外します。
③ 4/8(月)の人数を除外したときの必要看護職員合計数は14.91人(17.07人-2.16人)、配置看護職員合計数は16人(17人-1人)となります。
以上の計算により、必要看護職員合計数(14.91人)≦配置看護職員合計数(16人)となるので、4/1(月)と4/8(月)以外の医療的ケア児の利用について、「医療的ケア区分に応じた基本報酬」を算定します(4/1と4/8の医療的ケア児に係る報酬は、「医ケア以外の障がい児の基本報酬」を算定します)。
医療的 ケア区分 |
必要看護職員合計数≦配置看護職員合計数 となった場合の基本報酬の単位 ※例では4/1と4/8以外の利用日は、 この報酬を算定します。 |
必要看護職員合計数>配置看護職員合計数 となった場合の基本報酬の単位 ※例では4/1と4/8は、 この報酬を算定します。 |
---|---|---|
3 | 2,604単位 | 604単位 |
2 | 1,604単位 | 604単位 |
1 | 1,271単位 | 604単位 |
なし | 604単位 | 604単位 |
放課後等デイサービスにおいて「医療的ケア児に係る基本報酬」を算定する場合の指定権者への届け出
放課後等デイサービスにおいて「医療的ケア児に係る基本報酬」を算定するためには、あらかじめ指定権者に届け出をする必要があります。
放課後等デイサービスの事業所が、この届け出をするにあたっては、上記のような勤務一覧表(シフト表)により、標準的な月における
- 医療的ケア児の利用日数及び人数
- それに伴う必要看護職員数
- 配置看護職員数
を記載し、配置看護職員合計数が必要看護職員合計数以上(配置看護職員合計数≧必要看護職員合計数)になっていることがわかる資料を作成し、指定権者に提出します。
なお、放課後等デイサービスの事業所がこの届け出をすれば必ず「医療的ケア区分に応じた基本報酬」を請求できるというものではなく、あくまで、要件を満たして初めて「医療的ケア区分に応じた基本報酬」を請求できます。
放課後等デイサービスにおける「看護職員」を少なく配置する取扱い
放課後等デイサービスの日々の運営においては、個々の障がい児の状態等によっては看護職員の人数を確保することが困難となる場合も考えられます。例えば、医療的ケア区分3であっても、医療的ケア児の状態等によっては、看護職員を1:1で配置することを事業所が過剰と判断するような場合、このような場合も看護職員1人を必要とすると、看護職員を確保することが困難となり、結果として医療的ケア児を受け入れられなくなる場合も考えられます。
このような場合、
- 保護者に対して、本来の医療的ケア区分における必要看護職員より少ない看護職員数で支援を行うことについて同意を得たうえで、
- 医療的ケア区分3(or 2)の医療的ケア児について、医療的ケア区分2(or 1)の医療的ケア児として計上して、必要看護職員合計数を算出し、これを満たす配置看護職員合計数を確保するものとして、指定権者に届け出る
ことで、本来の医療的ケア区分により必要とされる看護職員の人数より少ない人数で、医療的ケア児の受け入れることも可能です。
なお、本来の医療的ケア区分により低い医療的ケア区分で受け入れた場合には、「低い医療的ケア区分での基本報酬」の算定となります。また、この取扱いをする場合、受給者証の更新手続きは必要とされません。
放課後等デイサービスにおける看護職員の配置に関してのQ&A(厚生労働省資料から抜粋)
Q本来の医療的ケア区分に応じた必要看護職員数より少ない配置にする取扱いは、例えば1ヶ月に限るなど、一時的にしか認められないものか。 A一時的な取り扱いではない。保護者との同意のもとであれば、恒常的に少ない配置にすることも差し支えない。 Q医療的ケア区分3を医療的ケア区分1として扱うことも可能か。 A医療的ケア区分3の場合、人口呼吸器を装着している医療的ケア児が想定される。当該医療的ケア児を、他の医療的ケア児を併せて支援をすることにより、安全性が確保できるのかどうか、事業所において、当該医療的ケア児の保護者や主治医ともよく協議をしたうえで、可能だと判断するのであれば差し支えない。 Q市町村において医療的ケア区分を決定する時点で、あらかじめ低い区分にするような対応は必要か(32点以上でも医療的ケア区分2とするなど)。 A市町村において医療的ケア区分を決定する際には、あくまで医師の判定による新判定スコアの点数に応じて決定されたい。その上で、事業所における安全確保のための取組みや、保護者の個別の同意があって、本来の医療的ケア区分に応じた必要看護職員数より少ない配置にする取扱いは可能なものとします。 Qもともと医療的ケア区分2の医療的ケア児について、状態が安定していたことから医療的ケア区分1としていたが、状態が悪化し、医療的ケアの頻度が増えた。このような場合、月の途中から医療的ケア区分2として扱うことはできるのか。 A可能である。なお、区分1としていた取扱いから区分2とする場合も、保護者に対して同意を得るものとします。【放課後等デイサービスにおける医療連携体制加算】
放課後等デイサービスにおける「医療連携体制加算」は、基本的には、病院等から看護職員の訪問を受け、事業所を利用する障がい児に看護を提供した場合に算定できる加算ですが、放課後等デイサービスの事業所に配置する看護職員が看護を行うことで算定は可能とされています。
そのため、放課後等デイサービスに配置された看護職員が医療的ケア児に医療的ケアを提供した場合は、
① 医療的ケア区分に応じた基本報酬
② 医療的ケア児以外の基本報酬+医療連携体制加算
のどちらかの請求が可能となります。
医療的ケア児については、本来、一定数の看護職員の配置のもとで安全に医療的ケアを提供する必要がありますので、医療的ケア児について、3人以上の利用が見込まれる場合は、①「医療的ケア区分に応じた基本報酬」を算定するものとします(この場合、医療連携体制加算は算定できません)
利用する医療的ケア児の人数が3人未満になるときは、①「医療的ケア区分に応じた基本報酬」又は②「医療的ケア児以外の基本報酬+医療連携体制加算」を算定できるものとし、どちらを算定するかは事業所において決めるものとします。
医療的ケア児が3人以上いる事業所において、配置看護職員合計数が、必要看護職員合計数未満となってしまった場合にも、「医療連携体制加算」は算定できません。医療的ケア児が3人以上利用する場合は、「医療連携体制加算」の算定はできず、「医療的ケア区分に応じた基本報酬」を算定することになりますが、配置看護職員合計数が、必要看護職員合計数未満となった場合は、上記の「必要看護職員数に対する配置看護職員数の不足額が大きい日を、必要看護職員合計数及び配置看護職員合計数から除外する」方法による考え方に基づき報酬を算定することになります。
放課後等デイサービスにおける医療的ケア児の「3人」の考え方
放課後等デイサービスにおいて、医療的ケア児が「3人」以上利用するかどうかについては、日ごとや、契約児童数によるのではなく、「一月の利用実績の平均」に基づいて判断します。
(例1)
- 医療的ケア区分2の医療的ケア児Aは「水曜日」に利用
- 医療的ケア区分1の医療的ケア児B、C、Dは「月曜日」と「金曜日」に利用
- 医療的ケア区分1の医療的ケア児Eは「火曜日」と「水曜日」と「木曜日」に利用
例1のケースでは以下のように計算します。
- 一月で、医療的ケア児が利用した日は22日
- 医療的ケア児の一月の延べ利用数は44人
- 44人÷22日=2人 ←3人以下となります。
放課後等デイサービスの事業所が請求する報酬を選択する際の留意点
放課後等デイサービスにおいて「医療的ケア区分に応じた基本報酬」は、当該月の「必要看護職員合計数」と「配置看護職員合計数」を比較しますので、一月分の請求において、事業所を利用した医療的ケア児の報酬について、
- ある医療的ケア児については医療的ケア区分に応じた基本報酬を算定し、
- 別の医療的ケア児については医療連携体制加算を算定する
といった取扱いはできません。
(引用:厚生労働省資料)
放課後等デイサービスにおける医療連携体制加算算定の考え方
放課後等デイサービスにおける「医療連携体制加算」は、
- 医療的ケア児かどうか
- 算定する人数
- 看護を提供する時間
によって、算定する加算の区分が異なります。
算定要件(対象者数) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
医ケア 以外 |
医ケア | 時間 | 1名 | 2名 | 3~8名 | |
Ⅰ | 〇 | 1時間未満 | 32単位 | |||
Ⅱ | 〇 | 1時間以上2時間未満 | 63単位 | |||
Ⅲ | 〇 | 2時間以上 | 125単位 | |||
Ⅳ | 〇 | 4時間未満 | 800単位 | 500単位 | 400単位 | |
Ⅴ | 〇 | 4時間以上 | 1,600単位 | 960単位 | 800単位 |
① 「医ケア以外の障がい児」の場合は、医ケア以外の障がい児それぞれについて、直接に看護を提供した時間となり、複数の医ケア以外の障がい児に看護を提供するために、長時間看護職員が訪問(配置)されていたとしても、訪問(配置)時間がそのまま加算の区分上の時間にはなりません。また、「医ケア以外の障がい児」と「医ケア児」は別々にカウントします。
② 「医療的ケア児」の場合は、直接に看護を提供した時間以外の見守りの時間も含めた時間(看護職員が事業所に滞在した時間)となります。
「医療的ケア児」の場合は、見守りも含めて滞在している時間とします。この場合、医療連携体制加算の算定は(Ⅴ)1名で1,600単位となります。
③ 「医療的ケア児」が事業所にいない時間帯は含めないこととし、例えば、「医療的ケア児」が2時間利用し、看護職員が当該2時間を含めて計6時間事業所に滞在している場合は、看護職員が2時間事業所に滞在していたものとして取扱います(4時間未満の単位を算定します)。
「医療的ケア児」への医療連携体制加算は、2時間(4時間未満)となる。この場合、医療連携体制加算の算定は(Ⅳ)1名で800単位となります。
「医ケア以外の障がい児」は、それぞれ看護を提供した時間となります。この場合、医療連携体制算定は(Ⅰ~Ⅲのいずれか)を2名で32単位~125単位となります。
④ 「医療的ケア児」が複数利用している場合、1日で医療的ケア児が何人利用し、医療的ケア児が事業所にいた時間が何時間かで判断します。
「医療的ケア児」への医療連携体制加算は、人数は3人(3人~8人)、時間は10時~15時で6時間(4時間以上)となります。この場合、医療連携体加算の算定は(Ⅴ)の3~8名で、3名×800単位=2,400単位となります。
【放課後等デイサービスの事業所を単位分けしている場合】
放課後等デイサービスの事業所を単位分けしている場合であっても、「医療的ケア区分に応じた基本報酬」の算定要件は変わらず、配置看護職員合計数が、必要看護職員合計数以上(配置看護職員合計数≧必要看護職員合計数)になった場合に算定できます。
ただし、「医療的ケア区分に応じた報酬」は、医療的ケアを提供するために一定数の看護職員を配置することを評価しているため、看護職員の配置方法によっては、報酬の取扱いが異なる点があります。
放課後等デイサービスの事業所を単位分けしている場合、
- 「同一時間帯に2つの単位を設けている場合」では、医療的ケア児の数は、各単位における医療的ケア児の数を合計し、看護職員の人数も通算します。
- 「異なる時間帯に複数の単位を設けている場合」では、それぞれの単位に医療的ケア児がいるのであれば、それぞれの単位を通して看護職員を配置する必要があります。
放課後等デイサービスの同一時間帯に2つの単位を設ける場合
この場合、医療的ケア児は2人利用、看護職員は1人配置として計算します。報酬の算定要件としては、看護職員を単位ごとに配置する必要まではないが、この場合、医療的ケア児Bへの医療的ケアに支障がないようにすること。
放課後等デイサービスの時間を分けて2つの単位を設ける場合
この場合、医療的ケア児は2人利用となります。医療的ケア児が利用する時間帯は10時から15時までとなるので、看護職員は1人の配置となります(2人配置したとはみなされません)。
※12時台は利用がないので看護職員が不在でも構いません。
時間を分けて2つの単位を設ける場合において、それぞれの単位に医療的ケア区分3の医療的ケア児が利用している場合、2つの単位でのサービス提供時間を通じて看護職員を2人配置することが必要になります。ただし、「同一日のサービス提供時間が異なる単位」において医療的ケア児が利用する場合、当該医療的ケア児の医療的ケア区分を低く見なし、必要な看護職員数を少なくすることができる。なお、この取扱いをした場合、当該日における報酬区分は、「低く見なした医療的ケア区分」に応じたものとなります。
上段の図の場合、医療的ケア区分3の医療的ケア児が2人利用するので、看護職員は2人必要になります。このような利用が一月続くなら、医療的ケア児が利用する日は全て2人の看護職員を配置する必要があります。
ただし、当該医療的ケア児の医療的ケア区分を低く見なした下段の図の場合は、医療的ケア区分2の医療的ケア児が2人利用することになるので、看護職員は1人必要ということになります。このような利用が一月続くなら、医療的ケア児が利用する日は全て1人の看護職員を配置する必要があります。
(引用:厚生労働省資料)
区分3の医療的ケア児を2人受け入れ、日曜は単位分けして支援している場合に、看護職員を1人だけ配置する場合の、必要な看護職員数と実際に配置した看護職員数の整理の仕方は上記のようになります。上記の表で言えば、日曜日の請求においてのみ、医療的ケア区分2を適用することになります。
放課後等デイサービスの時間を分けて3つの単位を設ける場合
放課後等デイサービスの単位が3つの時間帯に分かれる場合で、それぞれの単位に医療的ケア区分3(又は2)の医療的ケア児が1名ずつ、合計3名いるような場合は、医療的ケア区分1と見なして、必要な看護職員数の計算を行えば、当該日については医療的ケア区分1の基本報酬を請求することができます。
医療的ケア児が3人以上利用しているとき、「医療的ケア児以外の基本報酬+医療連携体制加算」ではなく、「医療的ケア区分に応じた基本報酬」を算定することができるとされていますが、単位分けしている場合でもこの考え方に変わりはありません。
放課後等デイサービスの事業所を単位分けしている場合の「医療連携体制加算」
放課後等デイサービスの「医療連携体制加算」は、看護を提供する「医ケア以外の障がい児」又は「医療的ケア児」の人数や、看護を提供する時間によって算定する単位に違いが生じますが、放課後等デイサービスの単位が分かれている場合、人数は合算しますが、時間は各人に提供した看護に係る時間によることになります。
放課後等デイサービスの同一時間帯に2つの単位を設ける場合
(引用:厚生労働省資料)
この場合、医ケア以外の障がい児A、B、D、Eには、医療連携体制加算(Ⅰ)から(Ⅲ)について、A、B、D、Eのそれぞれに提供した看護時間に応じて算定するものとします。
「医ケア以外の障がい児」A、B、D、Eは4人なので、医療連携体制加算(Ⅰ)から(Ⅲ)の人数の区分は「3人~8人」となり、それぞれに提供した看護時間に応じた単位を算定します。
「医療的ケア児」C、Fについては、見守りも含めて6時間滞在しているので、医療連携体制加算(Ⅴ)の「2人」の960単位/人を算定します。
放課後等デイサービスにおける医療連携体制加算の算定要件
算定要件(対象者数) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
医ケア 以外 |
医ケア | 時間 | 1名 | 2名 | 3~8名 | |
Ⅰ | 〇 | 1時間未満 | 32単位 | |||
Ⅱ | 〇 | 1時間以上2時間未満 | 63単位 | |||
Ⅲ | 〇 | 2時間以上 | 125単位 | |||
Ⅳ | 〇 | 4時間未満 | 800単位 | 500単位 | 400単位 | |
Ⅴ | 〇 | 4時間以上 | 1,600単位 | 960単位 | 800単位 |
放課後等デイサービスの時間を分けて2つの単位を設ける場合
(引用:厚生労働省資料)
この場合、「医ケア以外の障がい児」A、B、D、Eには、医療連携体制(Ⅰ)から(Ⅲ)について、A、B、D、Eのそれぞれに提供した看護時間に応じて算定するものとします。
「医ケア以外の障がい児」はA、B、D、Eの4人なので、医療連携体制加算(Ⅰ)から(Ⅲ)の人数の区分は、「3人~8人」となり、それぞれに提供した看護時間に応じた単位を算定します。
「医療的ケア児」C、Fについては、看護職員が10時~15時のうち5時間滞在しているので、医療連携体制加算(Ⅴ)の「2人」の960単位/人を算定することになります。
※12時台は「医療的ケア児」がいないので、実際に滞在していても、滞在時間としてカウントしません。
放課後等デイサービスにおける医療連携体制加算の算定要件
算定要件(対象者数) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
医ケア 以外 |
医ケア | 時間 | 1名 | 2名 | 3~8名 | |
Ⅰ | 〇 | 1時間未満 | 32単位 | |||
Ⅱ | 〇 | 1時間以上2時間未満 | 63単位 | |||
Ⅲ | 〇 | 2時間以上 | 125単位 | |||
Ⅳ | 〇 | 4時間未満 | 800単位 | 500単位 | 400単位 | |
Ⅴ | 〇 | 4時間以上 | 1,600単位 | 960単位 | 800単位 |
上記の放課後等デイサービスにおける看護職員の配置(一般型の放課後等デイサービス事業所の場合)は、厚生労働省の「医療的ケアを必要とする障害児への支援に係る報酬の取扱いについて」(児童発達支援・放課後等デイサービス)をもとに作成しております。
当事務所では、大阪、京都、奈良の放課後等デイサービスの開業支援、運営支援を行っております。放課後等デイサービスの経営は制度が複雑化していることから非常に舵取りの難しいものとなっています。そのため、当事務所では、放課後等デイサービスのコンプライアンスを守りながらも事業所としての収支も意識したコンサルティングを行っております。放課後等デイサービスでの開業や運営でお困りの方はご連絡ください。